
「すべてを破壊する」おもしろさーDL
2021シーズンの戦いを占うユニットインタビュー第7弾は、守備の最前線、ディフェンスライン(DL)。小島健吾キッキングコーディネーター兼DLコーチと、副将・ディフェンスリーダーを務める♯35佐藤将貴選手に聞きました。
―新人選手が多く入りましたね。
小島 三井さん(三井勇洋)、中田さん(中田善博)が引退し、新人が6人入ってきました。BJ(♯23バイロン・ビーティー・ジュニア)がいちばんのベテランになりましたね。
佐藤 これまでオービックシーガルズのDLに挑戦するのは難しいというイメージがあって、なかなか新人が入ってこなかったので、ありがたいですね。リーグを代表するDLになる、という気持ちで来てくれたと思います。
―新人選手それぞれの印象を教えてください。
小島 インサイドは4人です。小山健太(慶應大)はサイズは大きくないのですが、手足を動かし続けて前に割っていける。体を大きくして、強豪相手に通用する選手になってほしいですね。利根川公紀(法政大→エレコム神戸)はフィニッシュの意識が高い。ファンダメンタルを強化して、低く突き刺さる選手になってほしいです。山田鈴星(近畿大)はムードメーカーなところがいいですね。成長意欲も高い。手の使い方を鍛えてレベルを上げていってほしいです。山岸達矢(法政大)はパシュートが素晴らしい。最後までやり切るだけではなく、リターンのレーンやコースにも長けています。DLの中では体が小さいですが、大きい選手がたくさんいるリーグでどう戦っていけるか、とても興味深いです。
アウトサイドは樋口尚行(中央大)です。ヒットの仕方といったテクニックに長けていて、フィジカルアップすれば戦える選手になると思います。
―ロスター争いがかなり熾烈になりそうですね。
佐藤 そうですね。でも、いまはみんなロスターに残ることに意識を持っていっていると思いますが、正直言って、残ることを考えている時点で1試合も出られないんじゃないかと思うんですよね。特にインサイドはあまりにもレベルが高いので…。そろそろ、その次元を超えてきてほしい、というのはあります。日本一というより、日本代表になるレベルを目指してやってもらいたいです。
―それでは昨年を振り返りたいのですが。成果は何がありましたか。
佐藤 アサイメントの理解が上がったことかなと思います。スキルのレベルが高い分、アサイメントがしっかりわかっていたらこれだけ動けるんだという感じですね。当たり前が整理されました。
―それは何か特別なことをしたのですか。
佐藤 特別なことやミーティングをしたというより、「人のせいにするのをやめよう」ということを徹底したという感じです。
小島 自分は昨年はLBコーチだったので、その目線からの印象になってしまいますが、「WIN 1on1」は意識して取り組めていたと思います。それも1Qの中でだけでなく、4Qを通して戦い切ることができ、パナソニック戦やJAPAN X BOWL富士通戦の最後のように、大事な場面で結果を残せたのではないかと。もうひとつ、さっきマサキ(佐藤)が言ったアサイメント理解につながるのですが、“Same Picture”、みんな同じ絵を見てフィールドに臨む、ということができたのでないかと思います。今年DLコーチになって、DLのLINEグループは激しく動いているなと思ったんですよね。日曜日の練習後から金曜日まで、練習時のプレーについてLINEで活発に意見交換がされていて、よくコミュニケーションが取れています。その結果、「このスタンツのブリッツなら通用する」(この方向でQBを急襲すれば通用する)といった武器ができたのが成果だと思います。
―今年の課題はどんなことでしょうか。
小島 高い次元でプレーできる層を厚くすることですね。三井さん、中田さんが抜けた穴を埋めないといけない。フィニッシュの部分でボールキャリアに対してタックルを決めることがさらにできれば、昨年よりもう一段階上がったユニットがつくれると思います。
佐藤 僕もそう思います。主力が2人減ったので、立て直しぐらいの感覚でいます。改善点はびっくりするぐらいいっぱいあって、頭を悩ませながらやっています。昨年は三井さん、中田さんもいた中の4試合だけでボロボロだったんですよ。今年は2人がいなくなったうえに試合数も多い。絶対怪我すると思うので、そこが怖い。なによりも選手層ですね。今年はDL内のひとつのポジションではなく、どこでもできるようにしておかないといけないと思っています。
―そういう意味では昨年と今年では変わりますか。
小島 メンバーは変わりますが、昨年以上のユニットにしないといけないと思っています。特別なことをするというより、ベーシックなことの質を高めていきたいですね。そこにちゃんと上がってきた選手が残っていくのだと思います。
―今シーズン、DLのここを見てほしいというポイントは。
小島 明らかにLOS(ライン・オブ・スクリメージ)を支配しているという状態を見てもらいたいですね。相手OLのラインをDLが押し上げている状態。結果的にもちろんDLがタックル・フィニッシュしたり、LBが動いてロスタックルしたり、ということにつながるディフェンスを見せたい。あとはQBを思いっ切りサックするところを見せたいです。
―「LOSを支配する」とは「押されていない」ということですか。
佐藤 「押されない」もそうなんですが、僕のイメージは、DL4人のために1人でも多く相手オフェンスを割かせたら勝ちだと思っているので、DL4人で数的優位になるということですかね。玄人的に見るとわかると思うのですが、ランのときにOLがLBに行けていないとか、パスプロ(パスプロテクション/QBが投げられるよう守る)にRBもTEも残っているな、とか。1対1で勝つというよりは、DLが数的優位をつくっているところを見てほしいです。
―その延長線上にQBサックもあると。
小島 最終的には、相手がRBもTEも残しているのに、DLがサックしちゃう、というところまでいったら、誰がどう見てもリーグナンバーワンのDLだと思いますね。
―それではチーム内の他のユニットに負けないアピールポイントを教えてください。
佐藤 DBかDLか、ってぐらいタレントがそろっていると思います。BJはもちろんのこと、スタメンは基本、日本代表。そのままオールXリーグになってもおかしくないぐらい、タレントには自信ありますね。
小島 まず「元気」だと思います。声がよく出ている。元気よく練習をしたいという気持ちがよく伝わってきます。プレーでは、勝つのは当たり前で勝ち方にこだわる、というスタンスは、他のユニットに負けないと思っています。
―自分たちにキャッチコピーをつけるとしたら。
佐藤 愛称の「デストロイヤーズ」がしっくりきています。破壊神ですからね。相手オフェンスが死ぬほど苦労して何年もかけてつくっきたスキームを、1人の力で全部潰すことができるポジション・人間たち、というのが醍醐味だと思っています。結局、DLが強かったら、相手が何を準備してきてもグチャグチャになっちゃいますからね(笑)。
―ちなみに、佐藤選手はなぜDLを選んだのですか。
佐藤 高校まではWRもやったりしていましたが、ディフェンスの方が明らかに、自分のプレーで「これ潰れたな」って思えて楽しかったんです。逆に、抜かれたら絶対行かれる。言い訳できないところも魅力ですね。
小島健吾 キッキングコーディネーター兼DLコーチ
(こじま・けんご)慶應高校ではLB。慶應大学在学中から母校を指導し、ヘッドコーチまで務める。慶應大学、LIXILでコーディネーターを歴任後、2019 年からオービックのコーチに。2020 年キッキングコーディネーター就任。2018年カレッジ日本代表ディフェンスコーディネーター。東京都出身、28歳。
DL♯35佐藤将貴
(さとう・まさき)中央大学で元オービック主将の庄子達郎ヘッドコーチ(当時)に鍛えられ、突出した存在感を発揮。主将を務め、U-19、カレッジ日本代表も経験した。2018年オービック加入。2020年シニア日本代表、オールXリーグ選出。2020年から副将。184cm・103kg、大阪府出身、26歳。
▲後列左から:♯20平澤 徹、大木海人ディフェンスアシスタント、宮﨑 陸(新人)、利根川公紀(新人)、山岸達矢(新人)、♯33仲里広章、♯94菊池雄大、樋口尚行(新人)、渡邊健太郎DLコーチ / 前列左から:♯50板敷勁至、山田鈴星(新人)、小山健太(新人)、♯23バイロン・ビーティー・ジュニア、♯68清家拓也、♯35佐藤将貴、小島健吾キッキングコーディネーター兼DLコーチ / 欠席:♯90髙橋 誠
< DL 自己評価レーダーチャート >
2人にユニットの「戦力」(アクア)と「キャラクター」(ピンク)を自己評価してもらいました。(全10項目。0~10点満点。2人の平均点をチャート化)
全体的に厳しめの佐藤選手。メンタルは「けっこうモチベーションに左右されるんですよね」。まじめ度については、「DLは、万国共通でアフター(練習)に残らないそうです」。たくましさは、プレーではいちばんタフでかっこいいから「10」ですが、オフでは「1」だそう(笑)。オン・オフの切り替えがしっかりできて、自分がなによりも好き。我が道を行くタイプのようです。
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