
創業から2年間デザイナーがいないスタートアップのデザインへの向き合い方
株式会社hokan代表取締役CEOの尾花政篤(@ShigeObana)と申します。株式会社hokanでは保険業界特化型のSaaS、hokan®を提供しています。
hokanには創業から2年間、正社員のデザイナーがいません。
ただ、これは「デザインに投資していない」ということではありません。
代表取締役である私以下、メンバー全員がデザインの重要性を認識しています。
そんなhokanがこれまでどのようにデザインに取り組んできたのか、これからどんなことにチャレンジしていきたいのかを書きます。
デザイナーがいない創業初期のスタートアップの方や、デザイナーがいても全社にデザインの意識を浸透させるのに困っている方にお読みいただくと役に立つかと思います!
これまで取り組んできたこと
これまでhokanではデザイナーがいないながらもデザインに対して色々な取組みをしてきました。
核となるCI(Corporate Identity)の策定
まず、2018年の終わりから2019年頭にかけて、会社の核となるCI(Corporate Identity)の策定を行いました。
CI策定は初めてだったので、Designship代表を務められている広野さんのお力をお借りしました。
CIとして"保険業界をアップデートする"というミッション、そしてSOJO・TAKUSU・MASSUGUという3つのバリューを定め、ロゴを刷新しました。
"保険業界をアップデートする"というミッションはお客様にも覚えてもらいやすく、今でも非常に好評です!!
詳細は以下のnoteにまとめています。
国内外の事例やデザイン最新トレンド/手法へのキャッチアップ
デザイナーがいないことが原因で時代遅れのデザインになってしまわないよう、国内外の事例を研究しています。
弊社hokanのメインサービスは保険代理店向けSaaSで、メインの機能はCRMです。そのため国内外の保険代理店向けのシステムおよびCRMのUIは全て確認してからデザインしています。(ここで言う、"全て確認"というのは本当に文字通り、全ての画面を見ています。)
また、ダッシュボード・カンバンなどの機能や、フォーム・サインイン・モーダル等々のパーツ単位で最新UIを大量に見て、適切なUIを選ぶようにしています。
こういったUI研究の際はPinterestを活用しています。私自身、Pinterestでパーツ別にボードを作成して参照できるようにしています。
また、デザインの最新トレンドを追いかける努力もしています。
noteやTwitterで流行っている記事には目を通し、最新サービス・OSは直ぐにつかってみるようにしています。
トレンドを追いかける一環で、先日はiOS13の半モーダル/モーダルUIの特徴について分析しました。
顧客と一緒にサービスをつくりあげていく
hokanは営業の過程で、お客様と一緒にプロダクトをつくりあげていく、というスタイルをとっています。
この「お客様と一緒にプロダクトをつくりあげていく」というのは、「お客様の声を全て鵜呑みにする」ということとイコールではありません。
- 本当にお客様が欲しいと思っているものは何か?
- それを実現するために最適なUIは何か?
- 特定のお客様だけが求めている機能ではないか?多くのお客様ひいては業界全体として求められている機能か?
といったことを、皆で徹底的に考え抜くようにしています。
これらを考え抜いた上で、まずはデザインをおこしてお客様に見せて、レビューをもらいます。レビューを踏まえて開発を着手するようにしています。(時間の都合と確信の度合いによってはお客様に見せずに開発に着手することもあります。)
PMもエンジニアもメンバー全員でデザイン
hokanにはデザイナーがいない分、メンバー全員がデザインに対する意識をもつことで成り立っています。
hokanのPMは全員最初にUIトレースをします。デザインに対する感度を高めるためです。上述のデザイン研究も皆が取り組んでいます。
【hokanのPMが全員やること】
— 尾花政篤 hokan InsurTech SaaS (@ShigeObana) September 10, 2018
・業界、商品勉強
・競合サービスの調査
・保険購入フロー体験
・保険営業ヒアリング
・FigmaでUIトレース
・PinterestでUI見まくる
・海外最新サービスのUI/UX体験
業界特化型SaaSという性質上、業界・現場理解から要件定義まで一気通貫でできる必要があるからです
hokanでPMの役割をもつことがあるメンバーは3人いるのですが、3人全員がFigmaをつかってデザインしています。加えて、フロントエンドエンジニアや私もFigmaでデザインすることがあります。
また、エンジニアも積極的にデザインに関与します。
hokanでは去年(2018年)からFigmaを利用しているのですが、Figmaを利用し始めたキッカケはエンジニアからの「デザインをいつでも見られるような形で共有して欲しい!」という声でした。
新機能を開発する際や、UIの大幅な変更があるときには、PMとエンジニアが話し合ってデザインを決めています。
デザインに関わる人が多いため、デザインシステムとまではいかないですが、デザイン時の注意事項をまとめるようにしています。
デザイン思考を活かしたデザインコンサルティング
デザイン思考などのデザインの考え方も吸収していくようにしています。
デザイン思考の一部であるダブルダイヤモンドモデルの考え方や、それに則ったデザインプロセスの進め方などをTigerspikeの保坂さんに教わりました。
ダブルダイヤモンドモデルは合宿のコンテンツ設計でも活用しました。
最近ではデザイン思考を活用したコンサルティングにも取り組んでいます。
私は以前コンサルティングファームに所属していた際、戦略・業務・ITなど幅広い領域でコンサルを担当していました。そこにデザインを掛け合わせて、コンサルティングを行っています。
守秘義務の関係で内容を書くことはできないのですが、日本でも有数の大手企業向けにデザインを活用したコンサルティングを実施しています。
これからチャレンジしようとしていること
デザインに関して、まだまだチャレンジしていきたいことが沢山あります。
デザインシステムの定義とデザイン資産の蓄積
hokanでは前述の通り、純デザイナーではない5人がデザインに関わっています。
皆「エンジニアに開発してもらうために要件を伝えるデザイン」はできているのですが、
- つくったデザインが再利用可能な形で資産化されているか
- 既存機能・将来機能を考慮してUIのパーツをコンポーネント化できているか
- 開発を迷いなく進められるよう、システム要件まで考え抜いてデザインできているか
等々の視点でみると、人によってバラつきがあります。
また、プロダクトとしても顧客管理・契約管理ベースとなる機能をつくる初期フェーズが終了し、機能拡充を進めていく次のフェーズに入っています。
(業界特化型SaaSの特徴だと思うのですが、hokanにはアップセルの機能をつくる余地がめちゃくちゃあります!)
今後はデザインシステムがないと、人・機能によってバラつきがでてしまい、会社としてのデザインの統一感がなくなってしまう可能性があります。
また、フロントエンド開発において、コンポーネントを横展開していくためにも、局所最適なデザインが増えていってしまうのは適切ではありません。
デザインシステムとそれを活用できる組織・文化を段階的につくっていく必要があると考えています。
"業務システム"を超えるためのデザイン
いまhokanは利用者数を増やしていくフェーズであるため、営業・導入が一番の注力ポイントになっています。
今後、いかにhokanを継続利用していただくか、そしてhokanを利用して成果を出していただくか、というのが重要なフェーズに移っていきます。
その時、デザインが大きな力を果たすと考えています。
hokanはいわゆる"業務システム"ですが、"業務システム"をユーザーにとって身近なものにするため、「使っていて心地よい」「使っていて楽しい」というレベルまでデザインを磨いていきたいです。
さらにその先にユーザーの行動を変えていくところまで実現したいと考えています。
デザインで経営をリードする
hokanは"保険業界をアップデートする"というのをミッションに掲げています。
そのためには現在提供している代理店向けSaaSにとどまらず、新しい事業を創って、会社を10倍、100倍と飛躍的に成長させていく必要があります。
こういった10xの成長をもたらす新しい事業というのは、例えば
◆マネーフォワード
マネーフォワードME(toC向け資産管理アプリ)
↓
マネーフォワードクラウド(toB向けバックオフィス業務効率化)
◆ラクスル
ラクスル(印刷・広告のシェアリングプラットフォーム)
↓
ハコベル(物流のシェアリングプラットフォーム)
というようなものです。
hokanでも次の柱となり、10xの成長をもたらすような事業の構想検討をはじめています。
このような新事業をつくる際は、デザインで事業コンセプトやプロトタイプを先んじて提示していくことが効果的と考えています。
保険業界そしてInsurTechの世界・日本の情勢をおさえつつ、法規制や最新テクノロジーのトレンドもつかんでいなければなりません。
経済産業省の高度デザイン人材育成研究会の資料の5類型↓でいうと、ビジョンデザイナーにあたるような動きです。
社内外に魅力的なコンセプトを示し、多くの人を巻き込んで、次の柱となる事業をつくっていくために、デザインの力を活用していきたいです。
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