思考の「起点」はどこにあるか?

今朝の日経「経済教室:GAFAと日本企業(上)」で早大・根来先生も使っておられた「も」という助詞。ここに見られる思考の起点の問題。過去起点から未来起点へ。VUCAの時代の学界の限界と自分で思考するチカラを考えます。

お恥ずかしいですが、昨秋書いた自身のコラムをご提示します。宣伝みたいでごめんなさい。読み比べると起点の違いがわかって頂きやすいかと。

「アマゾンは本の小売からプラットフォームサービス『も』行うようになった」と過去起点で考えるか、「トヨタは多様なサービスを持ちながら、クルマ『も』作っている会社になっている必要がある」と未来起点で考えるか、では大きく違います。

従来は過去起点(フォアキャスティング)、過去の延長線上に未来を考えるということが多く行われてきました。FACTがここでは明確なので、過去起点の思考には説得力があり、合意形成がしやすいです。

しかし今、もっとも必要とされているのは未来起点(バックキャスティング)、未来を考え、それに向かって現在何をするかを考える、という逆算的な思考です。

未来起点の思考ではFACTを必ずしも十分に揃えることができません。過去起点の思考のようにFACTで「説得」するのではなく、自身が思い描く未来、ビジョン、情熱で人の心を動かすことが必要になります。FACTが十分にないなかで「世に問う力」が求められます。

ただ、未来を思い描く力がなければそれも始まりません。

そして一方で気を付けたいのは、「誰か」の纏めや整理を待っている間にも世の中はどんどん変化していくということ。。。

性格上、学界、研究者はしっかりしたFACTがなければ語れません。しかし、そのFACTが揃う頃にはもう事態は変わってしまっています。

経営学や経済学の世界ではそれが顕著だと思います。世の中が変化するスピードにFACTが、それを基にするいわゆる識者の纏めや見解、判断、意見が追い付かなくなっているのが現状でしょう。

FACTはもちろん大事です。しかし、誰かがFACTを集めて、整理して、それを基に意見を出してくれるのを待っていられる時代でもなくなっています。

自分で気づいて、最低限の情報を素早く収集して、方向性を大まかに決めて動く、その過程で情報を編集して必要な人に素早く届ける

そんなことも必要になっています。もちろん、その過程、その後もいろいろありますが、今はまずそうした「直感的な行動力」が求められているでしょう。この前のnoteで書いたOODAに近いものになります。

そうした力は急に身につくものではありません。それをコツコツ磨いていくツール、そのための機会が多くの人にあれば、、、そんな考えから、学生や若者向けに新たに発信を始めたのがTwitterのobacon@新聞大学「毎日考マラソン」です。

ちょっと難しいビジネスのお題も出したりしていますが、「誰か」の「何かを待つ」のではなく、「自分の頭」で「自分で考えて動く」そんなきっかけにして欲しい。そんな想いでやっています。

今は変革の時代、ドラスティックに世の中が変化しています。

過去起点に陥りがちな50代前後、それより上の世代、つまり若い人たちの親世代以上の年齢の人たちが今の状況を理解、適応するのはとても難しい状況です。

だから親や学校の先生の意見は参考にはするけれど、それを鵜呑みにはしない。そういうことも大切になると思います。仕事や生活を考える、生きていくうえでの前提が違うのですから。

自分で考え、自分で見極め、自分で選択する。自分で納得する人生を自分の力で切り拓いていく。そのための直感的思考・行動力を磨いていくひとつのツールとして、新聞大学の毎日考マラソンが役立てば幸いです。




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歩く好奇心。ビジネス、起業、キャリアのコンサルタントが綴る雑感と臍曲がり視点の異論。