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出流原式土器⁉縄文土器を愛する人たち

 先日まで開催されていた「佐野の遺跡展」。遺跡の宝庫、佐野市には約500の遺跡があります。この企画展を通じて私も縄文時代の石器づくりの技術の高さや、土偶と埴輪の違いについて考えたりと、考古学に少しだけ触れることができました。その中でも縄文時代は約16000年前から2400年前までと非常に長い時代で、縄文時代の中で6期に分類されています。

毒島さん(左)と領塚さん(右)。お気に入りの土器と一緒に



 そんな縄文時代に作られていた縄文土器を研究しているのが、領塚さんと毒島さん。県外から1時間以上かけてお越しいただいたには何か理由があるに違いない。今回の目的は「出流原式土器」だそうです。佐野市が誇る深呼吸スポット、出流原弁天池。その出流原という地名のついた土器とはどんな土器なのか。その特徴をあげる前にまずは縄文土器について学びを深めたいと思います。

佐野市を代表する観光地、出流原弁天池

縄文土器の特徴と未だ解けない大きな謎

 そもそも縄文土器って・・・?

歴史の授業から時が止まっている方も多いはず。まずは縄文土器の材料から見てみましょう。
 主な材料は粘土です。水を吸収する性質のある粘土は、純粋なものほど乾燥すると縮んでひび割れてしまいます。そのため縮むのを抑えるために粘土に砂や土を混ぜで練り、焼き上げられます。そのため粘土に砂や土を混ぜて練り、焼き上げられます。 完成した縄文土器の9割が煮炊きなどお料理に使われていたそうです。
 そして縄文土器と言えば縄目が特徴的ですよね。粘土を紐状にして張り付けたり、紐を押し付けたりして個性豊かな模様が付けられています。佐野の遺跡展でもさまざまなデザインがあったので、何のために模様をつけているのか疑問に思っていました。
 領塚さんに伺ってみると「理由はまだ謎です!!」と。
まだ解明されていないことを伺いびっくりしました。
 土器は形とデザインの組み合わせで60種類の段階(型式)に分類されるそうです。もちろん完全な形で出土することはほとんどありません。かけらを集めて導きだします。機械で炭素(14C)の量を測ったり、模様や土器の形など手掛かりをもとに年代や地域を推理するなんて、コナン君にも負けない推理力。目からうろこでした!

縄文土器の縄目パターン。佐野の遺跡展で展示されていました

出流原式土器からわかる佐野市の歴史

 調査対象である「出流原式土器」がどんな特徴を持っているのかもお伺いしました。
・約8000年前に使われていた
・底がとがっているので、土に埋め、まわりに薪を置いて燃やし、
煮炊きしていた。
・口に近いところに粘土ひもを横や縦にはりつけている
・棒の先で突き刺した模様や細い竹を縦に割って横や斜めに線を入れたデザイン



美容院やサロンの多い佐野市。ご先祖さまもおしゃれに敏感だったのかもしれません


こんな小さなかけらから全体像がわかるなんて・・・想像力って大事だなと改めて思い知りました。こちらは佐野市黒袴町から出土した土器のかけらですが、同じ場所で違う種類の土器も出てきたそうです。

出流原式土器(左)と千葉県の方で見られる土器(右)

 こちらの土器は千葉県の方でもよくみられる土器の特徴だそうで、千葉県と佐野市がこの時代から人の往来があったことがわかります。お二人によると縄文時代にはまだ利根川がなく、平坦な陸で移動することができたのだそう。当時栃木に住んでいた鹿たちが冬になると千葉へ大移動し、人も一緒に移動していたのではないかと教えていただきました。また群馬県や福島県でも出流原式土器が見つかっていることから、縄文時代も佐野市は交通の便がよく宿場町のようになっていたのかもしれません。


大人こそ学びたい歴史

 「よくいえば専門家だけど、私たちは土器オタクなんですよ」と笑いながらお話してくれたお二人。たくさんの土器のかけらを1点1点みながら楽しそうに作業をされていました。
 発掘するまではその遺跡の時代はわからないし、完全な形で土器が出土することもほとんどありません。研究者の問題意識によって解釈も変わるので、もしかしたら学生時代に学んだ歴史は「正しい事実」ではないのかもしれません。
 歴史の授業では1時間で終わってしまった学生時代でしたが、今回学んだ1時間では「こんな風に暮らしていたのかな」「どんなことを考えてデザインしたのかな」と想像することができました。これが歴史を学ぶ醍醐味ですね。大人の学びはまさに青春。楽しい時間をありがとうございました!



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 午前9時~午後5時
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🏺入館料
通常時は無料 
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