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「スクランブル」若竹七海

長編なのだが、短編仕立ての長編だ。

若竹七海は以前「製造迷夢」を紹介した。
人間の暗い部分を書きだすのがうまい作家だと。
彼女の作風が、とくに女探偵「葉村昌」シリーズが好きで、シリーズ全作購入して読んでいる。
葉村昌が活躍する作品が入っていれば、他短編集やアンソロジーも買ってしまうほどだ。
世間的にも代表作扱いなのではないだろうか。

そんな若竹七海作品のうち、葉村昌シリーズ以外で持っているのが、上述した「製造迷夢」と本作「スクランブル」だ。

本作は女子高の文芸部6人組の話。

卒業から15年後、30歳を超えた彼女達は、仲間の1人の結婚披露宴に参加する。
そしてその中の1人が、かつて高校で起こった殺人事件の犯人は、金屏風の前にいる彼女だ、と悟る。
そして過去の回想へ。
この時点で、誰が”金屏風の前の彼女”なのかは不明だ。

回想シーンはAの視点で進行し、大きな謎として学校で起こった殺人事件がありながら、学園のちょっとした謎の解明が描かれる。
また、披露宴会場に場面が移ると、Aが新郎新婦を祝福しているシーンが。
こんな感じで、ちょっとした短編のように物語が進み、Aの次はB、Bの次はCと少しづつ、犯人候補が絞られていく。
まるでカウントダウン、徐々に真相に近づく緊張感がたまらない。
かなり面白い趣向のミステリー小説だった。

ミステリー要素も上述の通り面白いのだが、思春期の女子の友情や葛藤も甘酸っぱく、男子には無い青春を感じれて、それもまた興味深かった。

そして、、本作を読んで思った。
やはり若竹七海は短編、連作短編がうまい。
デビュー作の「僕のミステリな日常」、これは自分にミステリーの連作短編というものの面白さを教えてくれたし、「サンタクロースのせいにしよう」も良かった。
葉村昌は大好きだが、またノンシリーズの短編集を出して欲しいものだ。
絶対買うので。

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