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「人格転移の殺人」西澤保彦

西澤保彦には3つの側面がある、と勝手に分析している。

1つが別で紹介している「麦酒の家の冒険」のようなパズラー小説。
論理が重視されており、謎についてのロジカルな解明がメイン。

もう1つは人の悪意。
それも他人を害しようと思ってのことでなく、生まれた環境や育った環境、過去のトラウマによって身についた考え方が、それをもとに行動すると他人を害する行動をとってしまうという、無自覚な悪意、身勝手さからくる悪意だ。

最後の1つがSF設定だ。
SF的な不可思議な設定、主に超能力がメインだが超常的な現象の元で事件が起こるというもの。
面白いのは、例えばサイコキネシス(手を使わずに物を動かせる)能力がある人物が人を殺す。
そして部屋を密室にする。
密室にする理由の最も合理的なものは、誰も入れないから病死・事故死、自殺など他殺以外だと警察に認識されることで、犯人探しが発生しないようにする為だ。
だがこのケースだと明らかに殺人だとわかる形で事件が起きている、ではなぜ密室にする必要があるのだ?
興味を惹かれない?

このように、人の無意識な悪意、パズル要素、SF的な要素を組み合わせた作品が多く、どれも面白い。

本作は、アメリカで主人公の日本人が、多種多様の人種とともに、カフェで地震に見舞われる。
そこで逃げ込んだのが地震で空いた穴にある謎の遺跡、そこに入ったことにより超常的な現象が起こり、入った数名にはなんと、一定のサイクルで人格が入れ替わるという現象が起きる。
情報漏れを防ぐ為に政府によって監禁された彼ら、その彼らの中で連続殺人が発生する。
そんな状況の中で、いったい初めてあった他人同士がどういった理由で人を殺すという行動に至るのか?
無差別に見える為、自分の命も守らなければならないという状況で、いかに論理的な解が出るのか?

ぜひ読んでみて欲しい。

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