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TWICEサナ、そのカルト的魅力について

TWICEにサナという日本人の娘がいる。

それなりにTWICEを聞いているひとであればご存知、「シャーシャーシャー」のサナ、生粋の大阪人、あのサナである。

世間一般ではこう言われている。NO SANA, NO LIFE。韓国語では“사나 없인 사나 마나” (sana eobsin, sana mana)。

個人的にはとりわけ推しているメンバーではないが(センの推しはダヒョンとツウィ)、サナ特有の魔力をいつか言葉にしなければ、とは常々思ってきた。サナとはいわばカルトであり、我々は、サナなしでは生きていけないのだ。

本稿というふざけ倒した散文では、彼女の魅力に迫る。

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1.キャラクター

まず第一に、TWICEメンバーをフィクショナルなキャラクターの枠組みで理解しなければならない。彼女たちは(アイドルグループTWICEという)一つのナラティブにおいて、それぞれの役割を担うキャラクターなのだ。YouTubeやライブステージの向こうにいる彼女たちは、この意味でつねに虚構的な存在であり、我々が消費しているのは虚構的な彼女たちにほかならない。我々はマンガを見たり、アニメを聞くのとほとんど同じレベルで、TWICEを消費する。

そして、TWICEという虚構は、ぞっとするほど入念に設計されている。

チャーミングなルックスに、愛嬌の出血大セール、TWICEのプリンセスこと最年長・ナヨン。誰に対しても気さくで、めちゃめちゃ豪快に笑う、女子のあこがれガールクラッシュ・ジョンヨン。不思議ちゃんかと思いきやめちゃめちゃにダンスが上手い、変人と努力家のハイブリッド・モモ。圧倒的な歌唱力と犯罪級のバスト、ゴージャス&ラグジュリーなリーダー・ジヒョ。おしとやかな箱入り娘、クールビューティ・ミナ。いたずら好きで、いじられキャラ、したり顔のおもしろいやつ・ダヒョン。ぼけーっとしてるかとおもいきや、突然やんちゃになるタイプ、みんなの赤ちゃん・チェヨン。超美人なのに泣き虫で引っ込み思案、頑張りやさんの末っ子・ツウィ

まるで高校のクラスから魅力的な女の子を集めてきたかのような、カラフルな面々。そこへ我々たちのサナが駆り出されたのは他でもない。ぶりっこキャラとしてだ。

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2.歌うサナ

一世を風靡した「シャーシャーシャー」に始まり、我々のサナはそのキャンキャンとした歌声がひときわ特徴的だ。

「アウアっ!すうぃーっとーっかー!」

「タイコマン!チョコレートアイスクリーム」

歌割りの傾向としても、サナ担当の歌詞はだいたいお菓子っぽい

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3.踊るサナ

TWICEには数々の名fancamがあるが、これもその一つ。

K-POPアイドルには、「ちょっと常軌を逸したアウラ、出しちゃいました」みたいな日があるものだ(EXIDハニの141008など)。サナの場合は180723だ。花柄のミニスカワンピを身に着けた我々のサナが、いつもにましてキレキレに踊る。ハイライトの一つはモモ「リップスティックまっまっまー」の1:54。おもむろに閉じられたサナの目は、次の瞬間、妖艶にツウィを見つめる。何事もなかったかのようにそつなく次のパートへ移るツウィも含め、素晴らしい場面だ。そもそもサムネイルからして悪魔的すぎる。

アイドルルームの企画で、ちょっとギリギリ攻めちゃうサナも”まさに”といったところだ。関西人の誘惑。

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4.絡みに行くサナ

ONCE(TWICEのファン)の間ではおなじみの風景だが、サナはだいたいメンバーの誰かに絡んでいる。

クラスに一人はいる、「つねに誰かに抱きついている系女子」を素で行くスタイルだ。

モモ相手のときだけ、やや当たりの強いサナ。

しかし、やっぱりなかよし。

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5.燃えるサナ

2019年4月、サナのプチ炎上騒動があった。

Instagram上で「平成」元号に言及したところ、韓国のネトウヨに叩かれるという散々な事件だ。

FANCY期は、元気のない姿も多く見られたサナ。普通にかわいそう。

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6.複数形としてのサナ

「YES or YES」のMV、2Bに当たる2:40からのワンシーンでは、我々のサナがいかんなく"活用"されている。カメラは右へとパノラマにパンし、複数人に分裂したサナたちを映す。もったいぶった感じで腕を組んだサナもいれば、窓の向こうに張り付いているサナがいて、こちらに向かっておどけるサナがいる。

「ちょっと簡単に言えば、あなたは何を選んでも私に会うことになる」

この猟奇的とも取れるワンカットを、ほかの誰に演じられただろうか。愛憎の入り組んだ上記のラインを、ほかの誰が歌えただろうか。いやはや適材適所という他ないキャスティングだ。TWICE内でもひときわ虚構的なキャラクターを担うサナ、その複数性が、映像の強度を高めている。

MV中ではツウィも三人に分裂しているが、こちらの美的効果はサナのそれとは全然ちがう。普通に可愛いというか、うれしい。コーギー三匹と同時にエンカウントした、みたいなうれしさがある。これでは残念ながらカルトとは言えない。

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7.撹乱するサナ

2019年現在、TWICEのウィキペディアに載っているアーティスト写真を見てほしい。

もはや説明は不要だろう。9人中8人があごに手を添えてポージングする中、なぜか我々のサナだけがおどけてみせている。

「Candy Pop」では、なぜかサナだけピンク髪のウィッグをつけているが、意図はまったくの謎だ。『アビイ・ロード』のジャケットで、ポール・マッカートニーだけ裸足、みたいなものだろう。

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8.ミームとしてのサナ

さて、サナのカルト的魅力については十分にわかっていただけたと思う。

ざっと総括すれば、そこにはミーム的な魅力があると言えよう。

シャーシャーシャーにチーズキンパ、サナ由来のコンテンツは、見事にパッケージ化され、細胞のように増殖する。サナのキャラクターは、極めてインターネット向きのものと言えよう。

へらへら書いてきたつもりだが、なんだか真面目考察モードに入りそうなので、今回はこのへんで。TWICEに限らず、K-POPアイドルについては、いずれ本腰を入れて批評したいと思っています。

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