見出し画像

これからのライブ配信サービス③

 「これからのライブ配信サービス」も第三回目になります。日本のライブ配信業界を語る上では外すことができない「17LIVE」を解説したいと思います。ワンセブンという呼び方がまだ慣れません。

4.17LIVE

 17LIVEはもともとは台湾のヒップホップアーティストが設立したライブ配信事業ですが、発足当初から売り上げをヴァージン諸島やケイマン諸島にある会社に上がるようにするなど、グローバルで運営することを前提に租税回避の仕組みをもつなど、かなりやることやってる会社です。
 くしくもPocochaサービス開始の2017年にPocochaに半年ほど遅れて日本進出を開始ししています。
 日本のライブ配信の成長を引っ張ってきたサービスといっていい会社だと思います。

17LIVEの強み

 これは何といっても分厚い「ギフター層」ですね。月額1千万円以上の課金リスナーが何人もいて、100万円くらいじゃ月によってはランキングに入れないし、数十万円レベルでは箸にも棒にもひっかりはしない。
 EVERY.LIVEでは月間ランキングに毎月40位前後で入っている私も17メインの時代はごみカスリスナー、どこの枠に行っても2~3人は私より格上の課金ユーザがいましたw
 「イベントはギフター達が札束で殴り合う世界」なんて言われたりもしますが、そのギフター達にも単推しではなく、何人ものライバーを応援していたり新人枠などを回ってるようなレベル100後半にギフターもいたりします。
 そういうギフター層との出会いの可能性があり、出会いがあれば一夜でシンデレラストーリーが実現される。それが17ライブの一つの顔です。
 もう一つの顔としてそういう大物ギフターの存在が中堅どころ(月10~50万くらい)の課金ユーザにしてみると非常に居心地の良さを提供される配信サービスになっています(この辺のリスナー心理は解説は別にします。長くなるので)。このことがその辺のリスナーの層も分厚くしていて、リスナー全体の動きも非常に活発です。そのため、中堅どころのライバーにも数人それなりのリスナーがついている人が多く見られ、伸ばしていくライバーのモチベーションも維持しやすいサービスになっています。

17LIVEの良いところ

 この強みはなぜ作られるのか。
 それは高額課金ユーザ優遇のシステムがもたらしているところが大きいです。
 アーミーやアーミー限定配信しかり、入室エフェクトしかり、高額ギフトのティッカーなどもそうでしすし、マイレージ制度などもありますが、高額な課金者ほどしっかり運営が優遇していく制度です。
 高額課金者優遇で一部のリスナーやライバーから批判があるのも事実だと思いますが、でもライブ配信サービスもライバーたちもそういう人たちが支えているんですよね。それがなきゃ配信プラットフォームが伸びることはないわけで。
 それを長く運用してきたことがこのギフター層を積み上げていて、それがライバーにも多くの利益をもたらしています。
 ギフターがつけば一気に枠が安定して、収益も上がり、枠自体もギフターが牽引してどんどん伸びていく好循環に入れます。
 17って数少ないプラットフォームが客(課金リスナー)を持っているライブ配信なんですよね。他のプラットフォームってライバーが客を持っている場合が多いんですが17は17自体が多数の客を持っていてそれをライバーにあてがうことができてるんです。これは配信をする上では大きなメリットになってきます。
 コロナが終わり、他の例にもれずに17もリスナーの減少や、ギフターランキングのギフト額の低下は起きていますが、それでもこのギフター層の分厚さはやはり強みと言えるでしょう。

17LIVEの悪いところ

 一つ目は独占(専属)契約制度です。
 17LIVEは誰でも配信を行い報酬を得ることができますが、契約(認証)ライバーにならなければ十分な報酬は得られません。その契約に2パターンあり、独占契約と非独占契約という契約形態があります。独占の場合は他の配信プラットフォームでの配信が禁止されることになります。
 この違いは報酬に影響してきて、公開されている準認証ライバーの報酬の場合、独占だと還元率は最大で約30%+ボーナスあり、非独占の場合は約25%になります。

 認証も同じように差がつけられていますが、報酬差から独占を選ぶライバーも多いです。その結果半年くらいして結果が出せないからほかに移りたいと思っても契約更新まで変更できないのでそれもできないという事態になるライバーが多々います。
 また非独占だとリスナーに知れるとリスナーの投げるモチベーションが下がるともいわれます(運営に取られる量が増えるので)。

 この制度、UpLiveも同様の制度を取ってますが、正直「時代遅れ」な感じがします。フリーランスの競業禁止って係争になりやすい契約形態だし、なによりも①で紹介したTikTokの台頭です。
 Pocochaをはじめ多くのライブ配信のライバーたちがTikTokにリスナーを取りに行くという活動をしだしています。独占だとそれができないんですよね。17やUpLiveで十分に人気を獲得できているようなライバーはわざわざ非独占にして外にリスナーを取りに行くなんてしないわけです。ライブ配信業界全体がTikTokが大きく影響力を持つようになると予想される中、おそらくこの二つは離れ小島になっていってしまうかもしれません。
 そうするとマーケットの規模として
 『TIkTok+その他の配信』>『17Live』>『UpLive』
 となってしまい。最終的に2社は苦しくなっていきそうな気がします。

 もう一つは還元率の低さです。非独占(準認証)だと25%。これって多分業界で最低クラスの還元率だと思います。TikTokも25%で同じですが。
 これがぼったくりというわけではないです。TikTokも17Liveも客をそのサービス自体が持っていてライバーに斡旋する事業と言えるわけで、客数やお金払いのいい客を多数持っているサービスが大きく取り分を取るのは当然だと思っています。
 でもちょっと低すぎないですかね?

17LIVEに向いているライバー・向かないライバー

 これ、難しいです。
 この還元率だとすでにファンリスナーを持っているライバーの移籍先としては選択しづらいですよね。だいたいどこの配信から移ったとしてもリスナー達の課金額が同等なら収入減ってしまいますし。新規リスナーの獲得の期待はあるとしても少しギャンブルですよね。
 かといって新人に進めるには独占の1年契約は途中で方向転換ができないという制限を受けます。
 そのため正直いろんな人から相談をうけることがあるんですが、おすすめしづらいんですよね。
 おそらくライバー事務所の方とかも同じように悩まれてるんじゃないかな?と思います。
 その点からもこの独占契約を前提とした制度設計ってそろそろ見直すべきタイミングなんじゃないかと思いますけどね。せめてもう少し短い期間で切り替えができるようにするとか。

以上、今回は日本国内のライブ配信市場を初期から牽引してきたサービスの一つである17Liveを解説しました。長文にお付き合いいただきありがとうございます。

 この「これからのライブ配信サービス」は連載マガジンとして、しばらく様々なライブ配信サービスについて解説していきたいと思います。次回以降にはBigo LiveやEVERY.LIVE、ミクチャ、UpLive、Youtubeなども順次開設していきたいと思います。よろしければマガジンもフォローしてください。

 また内容に興味をもっていただけた方はよろしければ「いいね」やSNSでの拡散にご協力ください。著者の励みになります。


よろしくお願いします。