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ライブコマースについての考察

 少し前から「ライブコマース」という言葉がライブ配信業界で言われるようになっています。言葉自体は古くからある言葉ですが、ちょっとこの言葉がどうも独り歩きしていて、ライバーやリスナー、さらには事務所やライブ配信プラットフォームの関係者でさえも理解しないまままになっている気がしています。
 そこでこのライブコマースについて少し今回はまとめたいと思います。

1.ライブコマースって何?

 まず、ライブコマースとはいったい何でしょうか?
 ライブコマースとは「デジタルプラットフォーム上でライブ動画配信サービスなどを利用し、ライブ配信で商品を紹介する配信者と視聴者で双方向に連絡を取り合い商品を確認して販売する手法」と言われいます。ライブ配信と通販の融合なんても言われますね。
 このライブコマース、大きくは三つに分類されると思います。

A) スモールビジネスの直販

 農家(生産者)が直接自分の農作物を売る、なんていうケースを想定してもらえるとわかりやすいと思います。
 生産者がライブ配信で自分たちの商品を宣伝し、直接そこで販売するわけですね。顔が見える農業なんて言葉も一昔前に流行りましたし実際の生産者と直接話を聞きながら商品を買えることは安心につながりますよね。
 あるいは地下アイドルなどが自分たちのCDやチケット、グッズの手売りの一つの手段としてライブ配信を使うというのも考えられます。

B)ライブ配信小売店

 もう一つが小売店が自分の店舗の商品を紹介するなんてのもありえます。実演販売のオンライン版やTV通販のオンライン版みたいなイメージですね。https://www.youtube.com/watch?v=7gvSo0gdVzo

 自分たちのお店で取り扱っている様々な商品を来たリスナーに紹介して、実演なども行い、あるいはその場でリスナーから質問を受けたりしながら気に入ったらその場で買ってもらうというタイプです。

C)企業による広告

 例として挙げれば、化粧品などが代表的になります。中国では化粧品のライブコマースでの販売が非常に伸びているというのは有名ですが(口紅王子とかTVでも取り上げられていますよね)、化粧品などをそのインフルエンサーが専門知識を踏まえてじっくりと説明し、そしてリスナー達からの質問にもしっかり受け答えしていくことで、購買意欲を刺激して購入につなげていくというものです。

2.何が違うの?

 配信自体は商品自体を紹介して、その商品について質問に答えたりと、基本的にはやることは変わらないんです。でも、実はABとCの間には「お金の出どころが違う」という大きな違いがあります。
 これはライブコマースの場所を提供するプラットフォーマーの視点ですが、A,Bは物を「売る場を提供」するわけです。そのためプラットフォーマーのビジネスモデルとしては中間マージンを取ることになります。例えば2千円商品が一個売れたら10%マージンをとってという、消費者(リスナー)からの売り上げに対してマージンを取るような形になります。

 一方Cの場合ですがプラットフォーマーが売るものは「集客力」や「配信を成功させるコンサル力」になります。企業から広告費をとり、そのプラットフォームの集客力や、集客力のあるインフルエンサーを用意して、配信に来た人の購買率を高めさせるという価値を提供します。

3.どれが成長するの?

 今世間一般で言われているライブコマースというのは、このCの話をしています。
 かつて企業の宣伝といえばTVでのCMでした。でも今はその宣伝費がTVではなくYoutubeや各種SNSに流れて行っているわけです。それをライブ配信にも引き込もうという話です。
 ただCだけじゃ企業の数も集まりません。大企業とかだけでは配信数も増えないですから。そこでBあるいはAまで包含して対応できるようなプラットフォームを、と考えているわけです。
 17Liveが始めたライブコマース事業のHandsUPも基本Cをメインにしています。

 Bのタイプはうまくいきそうに思う人も多いと思うんですが、実際これは多分うまくいかないですね。メルカリと楽天という日本のEコマースの大手二社がすでに失敗して撤退したことからも明らかだと思ってます。

4.Aをよく話しているけど、、、、

  で、Aなんですが。これは一定の需要はあります。
 よくライバー事務所やその話を聞いたライバーさんがこれを始めようみたいな話をするのを耳にします。そのためにグッズ作ってとかね。

 これは実はすでにやってる人はたくさんいるんですよね。例えばアイドルやアーティストなんて大体自分のプロフィールのリンクに自分のグッズやCD、チケットを販売しているサイトのURLも書いておいて、その商品宣伝してとか、当たり前のようにやってるわけです。手作りシルバーアクセなんかを売っているライバーもいます。つまり「売るものがすでにある人」はこの方式をすでにいくつもやっているわけです。
 
 このライバーがリスナーを誘導しているる販売サイトの仕組みを取り込むことでライブ配信プラットフォームを伸ばそうという考え方もないわけではないです。

 ただ実際にはかなり無理があって、Live812が混在型のビジネスに挑戦してますけど、まあ配信見てもお察しな感じですよね。5月末に現在のアプリでの提供を終了し8月からWeb版にリニューアルすることを発表していますが、2か月以上も間を開けてどうするんでしょうね。

5.なんでこんな話を?

 正直この手の話ってライバー事務所やその関係者がよく話しています。配信も盛り上がるしもっと人気になれるかもみたいな期待を抱いているのかもしれません。でも、私にはグッズの製作代行をライバーから受けたいだけのただの営業トークにしか見えないんですよ。
 以前ひろゆき氏もYoutubeライブの中で話していましたが、日本ってものを作って売る商売で成り立っていたんですね。でも物を作る仕事がどんどんなくなっています。大企業は海外に発注してしまうし。
 そんなかでそういう製作代行を始める製造業の事業者はたくさんでてきています。ググれば山ほど出てきます。
 ロゴ入りマグカップ作りたい、オリジナルTシャツ、抱き枕。なんでも自分が作りたいものに「製作代行」っていれてググれば出てこないものないですからね。
 正直そういうことを知らないライバーが騙されてるだけじゃないかな~と、思ってしまいます。

 で、そういうものを作って売っても結局は金の出どころは「応援してくれるリスナーの財布」でしかないので、自分に使われる課金額は増えず、お金の流れが変わるだけになってるライバーさんも出てくる予感がします。それでライバーの利益が増えるならそれでもいいかもしれませんけど、メジャーアイドルでも新作グッズなんて毎月も出したりしないですからね。

 そういう商売始めるならなんか優しくしてくれるライバー友達とか事務所のえらい人に言われたから、ではなくちゃんと自分で調べる習慣つけないと損するだけになると思いますよ。

よろしくお願いします。