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毎日1曲『三種の神器』20220110-SMILE〜晴れ渡る空のように〜

作詞、作曲、歌唱、演奏、DTMを仕事や趣味にしている人に向けて書いています。毎日1曲、自分の頭の中で鳴った曲を取り上げて、僕の独断で『ヒット曲の三種の神器』と呼んでいる、世界のヒット曲に共通する不思議な法則を数値化して解説をしているコラムです。興味を惹かれたら『ヒット曲の三種の神器』の詳細についての過去記事もご覧ください。

今日の1曲

日付:2022年1月10日
タイトル:SMILE〜晴れ渡る空のように〜
アーティスト:桑田佳祐

『三種の神器』度数

ヨナヌキメロディ度:6
弱起度:7
客観描写度:0
解説:
印象的な長めのイントロの後に、素直な音階のメロディが静かに始まる。自然にシ(7)が使われている、少し切なく美しいAパートはヨナヌキメロディでも弱起でもない。ゆっくりと2周して、少し裏拍を強調して明るいリズムのBパートに入ると、いきなり「ソーラドレミレドラー、ソラドレミー」というヨナヌキメロディ。出だしは半拍食って(食うとは、早くの意味)始まるが、ここは弱起というよりもシンコペーション(音楽用語、検索してね)。そして期待を高まらせた後に続くヨナヌキ+弱起のサビ冒頭部分は、一度聞いたら2番から歌えるくらいシンプルで印象的です。

結果的にサビはファ(4)もシ(7)も出てくるので、曲全体としてのヨナヌキ度数は6、弱起度数はサビが効果的なので7。一方で、もしかしたら東京オリンピック・パラリンピックのためにもともと準備したものではないかとも邪推してしまう歌詞は、桑田佳祐でなければ書けないような内容でもなく、『民放共同企画“一緒にやろう”応援ソング』とかいうあたりさわりのない抽象的な企画応援歌になっていて客観描写は0にしました。

実は桑田佳祐さんが作る曲は、このnoteコラムで詳説している『ヒット曲の三種の神器』、すなわちヨナヌキメロディ、弱起、客観描写の宝庫なのです。数多のサザンオールスターズの大ヒット曲は、この『三種の神器』を説明するための格好の教材と言えます。

コメント:
近所のユニクロに買い物に行ったのですよ。そしたら店内でこの曲がずっと流れていて、桑田佳祐の声だとわかったけど「ふーん、こんな曲あったんだ」と思った。上にも書いたように、過去のサザンオールスターズの偉大なヒットパレードに比べたら、怒られるかもしれませんが個人的には「どうってことない曲かな」と思ってしまいました。しかし、しかしです、やっぱりボーカルは素晴らしい。ユニクロ店内の天井のスピーカーの近くで立ち止まって、しばし聞き入ってしまいました。なにやらずっと綺麗で真面目なことを言っている歌詞なのですが、3回目のサビのクライマックス部分の「心折れないで でなきゃモテないじゃん」が桑田節で救われます。日本の宝ですね。

各種リンク

桑田佳祐「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」民放公式スペシャルムービー (民放共同企画“一緒にやろう”応援ソング)

『ヒット曲の三種の神器』解説記事

大平太一流 作詞作曲の必殺技『ヒット曲の三種の神器』解説記事です、是非あわせて読んでみてください。
①ヨナヌキメロディ/なぜか覚えやすい音階の不思議
②弱起/インパクト大!言葉やメロディが飛び込んでくる
③客観描写/具体的で無感情な描写が人の心に感動を生む

追記

「もしかしたら東京オリンピック・パラリンピックのためにもともと準備したものではないかとも邪推してしまう歌詞」なんて書いてしまったけど、この曲のWikipediaを読んだらちゃんとそう書いてありましたね。よく調べもせずすみません!でも言い訳になるけど少し面白い話なので、僕がなぜそう思ったかという理由を話します。

桑田佳祐は英語のリズムに似た日本語の言葉遊びが得意で、往年のサザンオールスターズの作品にはパッと聞き英語のように聞こえるがよく聞くと日本語、みたいな歌詞がよくあります。歌詞の意味もあるのかないのか、でも優しく美しくユーモアがあって、誰もが共感できる人生の瞬間の描写が、ファンを捉えて離さない魅力です。なのにこの曲はいかんせん、大仰で観念的な言葉で終始していて、およそ彼らしくない歌詞だと思いました。その理由として、この曲がそもそも最初から英語や他国の言語でも歌われることを想定して作られたのではないかと思ったのです。歌は本質的に翻訳ができない、それは歌詞が言葉であると同時に音色やリズムそのものだからで、俳句の英語訳が困難なことと同じです。でもこの曲のような観念的なメッセージは翻訳が可能です。

欧米のポピュラー音楽や映画が世界にマーケットを拡げ得た理由のひとつは文化の成熟度だけではなく、「外国語に翻訳可能なエンターテイメント」を意識的に作る戦略的意図があったのかもしれない、と思えることさえあるのです。

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