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クワガタ採りにいったら泡まみれになりながらプロデザイナーのレイヤー構造へ思いをはせる (クワガタ星雲とバブル星雲の天体写真)

はじめに

 先日撮影した超難関のSh2-140/Sh2-150の領域の画像処理に延々と悶々と付き合わされているなかで、さらに快晴の夜を迎えてしまうと、撮影せざるを得ないリモート環境。4人で場所と設備をシェアしているとはいえ費用はかかったけど、大満足です。いま、幸せかもしれません。

 撮影対象を全く練っていないので、2014年に、William Optics Star 71という10万円ちょっとなのに、とってもシャープでフラットな屈折望遠鏡のファーストライトに、当時のメインカメラEOS60Daで挑んだんだけど、たぶん合計1時間ぐらいしか露出してないのに、頑張って画像処理した不完全な思い出のリベンジをしようとしました。

 クワガタにみえるSH2-157と、バブル星雲と呼ばれているNGC7635とM52星団を撮影してみました。

 ケフェウス座の散光星雲エリア内では有名ですが、なかなかに難物です。薄さでいうとAクラス。初心者は手を出しちゃいけません。

構図

 超メジャーな構図です。クワガタ星雲を画像検索すると、だいたいこの構図ですし、だいたいの方々が一度は撮影されている構図です。

 いまの私のシステムでは、超安定構図ですね。狭くもなく、広くもなくぴったりです。このカメラに使われているKAF-16200のセンサーが約27.2×21.6mmと、一般的な35mmフルサイズやAPS-Cサイズに比べて正方形に近く、こうやって縦構図にした時に横幅が広くとれて、とてもバランスの良い構図になりますね。四つ切サイズプリントにちょうど良いセンサーですね。

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撮影データ

 8月20日と8月21日は新月期でした。ただ、両日ともに空の状態がよくなってきたのは0時を超えてからでした。観測所は富士山麓の標高1300mにあり、雲が低空だけにある場合には雲海の上で撮影できるのですが、その雲の上面が少しだけかかることが多いです。そんなときは深夜になると快晴になることが多いですね。

 リモート環境で撮影しているので、直線距離で100km離れている現場の様子は全天ライブカメラでしかわかりません。よって、1等星以上の輝星の有無しかわからないので、実際に撮影しないと薄雲があるとか、すこしモヤがかかっているとかわかりません。
 なので、撮影した画像の星の大きさからボケを判断したり、写っている星の数から雲の通過具合を判断してます。それらは撮像ソフト「Sequence Generater Pro」がやってくれていて、マズいフレームがでてきたら、必要に応じて撮影枚数を調整していっています。
 なので、後にいくほど撮影フレーム数が足りなくなるし、再確認したところ問題があるフレームとかでてきます。なので、「2日で撮影するぞ!」という気持ちで臨んだ方が焦らずにできるのでミスの防げます。

 というわけで、結局2夜で、合計465分(約7.8時間)の光を集めることになりました!

[Technical Data]
> Object Name: SH2-157, NGC7635, M52
> Date: 2020/08/20, 2020/08/21
> Location: Fujigane Remote Observatory, Yamanashi, Japan
> Scope: ε-130Db βSGR
> Mount: iOptron CEM60-EC
> Autoguider:
>> Camera: QHY5L-II
>> Scope: KOWA LM100JC
>> Software: PHD2
>> Camera: Moravian G3-16200, -15C
> Filter: Astrodon LRGB Gen2 E-Series Tru-Balance Filters
> Exposure:
>> L: 1x1 600sec x 28
>> R: 2x2 300sec x 20
>> G: 2x2 300sec x 8
>> B: 2x2 300sec x 9
>> Software: Sequence Generator Pro
> Image Processing:
>>PixInsight 1.8
>>StellaImage 7
>>Photoshop CC 2020

画像処理

 今回は十分に時間をかけて撮影をして光を集めたので、適切にカブリとコントラストを調整すれば良いだけでした。

 例えば、今回のPhotoshopでの画像処理では、こんな感じの処理レイヤーです。RGBごとに、左右上下のグラデーションマスクを作って、それぞれのチャネルの画像をみながらレベル調整で中間値を下げてカブリをとり、さらにコントラストの偏りがあれば、中間値を上げつつシャドウを下げて整えていきます。
 最後にRGB処理のあとにでてきたカブリを輝度のレベル調整(グラデーションマスク)だけで調整していくだけで綺麗になります。
 基本的には上下左右だけのグラデーションマスクを使用し、最後にそれでも対処できないものがあれば、ちょっとだけ斜めとか上半分右半分とかのグラデーションマスクをつくって対処しています。

スクリーンショット 2020-08-23 9.47.02

 上のレイヤー構造のように、RGBを分けて管理すると、あとで調整がしやすいですよ。そしてRGBごとにグループ化しておいて、グループに対して、レイヤースタイルで、例えばGグループだとすると、Gチャネルだけチェックをつけておきます。

スクリーンショット 2020-08-23 10.02.06

 昔はWebクリエイティブ系の仕事をしていたのでプロのデザイナーと仕事をすることが多かったのですが、仕事ができるデザイナーほどレイヤー構造が非常に整理されていて、デジタル時代のデザイナーは、それが最終的なクオリティに直結しているんだと薄々感じてましたが、自分がPhotoshopをいじる立場になると正解だったと実感してます。

 赤色しかない領域ということもあり、いつも書いているように「星が綺麗なこと」だけは気をつけました。

さいごに

 北側の暗黒帯が入り組んでいるエリアの表現だけは最後まで悩みました。この暗黒帯の先に洞窟星雲がつながっているんですよね。この赤カブリを取る、それとも取らないで最後まで悩みましたが、結局、程々に残しました。

 クローズアップはどこにしようとおもいましたが、バブル星雲とM52でしょう。バブル星雲が飛ばないようにすることと、M52の星々の存在をきちんと表現することができているのかというのが大事だと思ってます。

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おしまい

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