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応援ラボの活動報告~第3回勉強会~

第3回目になる親子・子育て応援ラボ勉強会では、
社会福祉法人子どもの虐待防止センター相談員の青木幸子先生をお招きして、
CCAP版 親と子の関係を育てるペアレンティングプログラム®」のダイジェスト版を学びました。※CCAP Center for Child Abuse Prevention

今回はコロナの影響もあり、Zoomでのオンライン開催となりました。

親コラボ

①プログラムの特徴

このプログラムは、子育てに悩む多くの保護者の声を聞いてきた相談員が作ってきたもので、親と子のかかわりが難しくなっているときにでも、「誰でも安全に」を実施することが出来るプログラムとのこと。

特徴としては大きく3つ。
・子育てに悩む多くの親御さんの声に耳を傾けてきた相談員が作成した。子どもとの関係を変えようと思った時に誰でも簡単に安全に使えるプログラムを目指した。
・「しつけ」とは「しつけのゴール」を明確にする。「子どもが持つ本来の特性」を知る。「脳科学の視点から子どもへの効果的な伝え方」を学ぶ。
・プログラムの柱「実況中継」の声かけは親と子の関係を育てる。日常生活の場面を想定したロールプレイで、子どもの気持ち・親の気持ちを体感する。

6~12人の固定されたメンバーで6回実施、その後1か月おいて、フォローアップ1回。合計14時間を使ったプログラムでロールプレイをしながら進めていくということでした。

②「しつけ」の定義とは?

山梨県立大学人間福祉学部福祉コミュニティ学科教授・学科長の西澤哲先生の動画より。

西洋型の「躾」と日本型の「習気」、「しつけ」の定義が違う。
西洋型はマナーやルールなど、社会で困らないようにトレーニングするイメージ。日本古来しつけは子どもが不快な状態に陥った時に、手伝いをして快な状態へ戻してあげること。その様々な手助けの繰り返しを「しつけ」という。
手助けの繰り返しをしていくと、やがてそれが習慣化し、いずれはこどもが自分で、快な状態に戻れるようになる。自分で自分を整える力を養っていく。自己コントロールができるようになることがしつけのゴール。

■アタッチメント
子どもが不安定な状態の時、親などの養育者の近くによって抱っこなどしてもらうことで、否定的な情動状態を安定化させる。これがアタッチメント行動。しつけにはアタッチメント行動が入っている。アタッチメントが上手くできていない子どもは、感情状態を安定化させることが出来なくなる。

■共感性・他者視点の獲得
4歳以降は心の中に、アタッチメント対象(保護者など)がすむことになると、ストレス状態に置かれても心の中のアタッチメント対象を強くすることで、自分を安定化させることが出来るようになる。(3歳以下は、現物とのアタッチメントで安定化させる)
色んな心の作用につながっていく。罪悪感も同様。
「共感性」は人の状態を、自分の心に入れて味わうこと。
「他者視点」の獲得も同様で、心の中にいるアタッチメント対象がどう考えるか?等を考えるようになってくる。子どもの自己中心性は、わがままということではなく、自分と連携させていかないと理解が出来ない。また、二分法で白か黒かで分ける。

■脳の研究で分かったこと
怒鳴りつけたり罵声を浴びせたりすると、大脳辺縁系の部位が活発に活動。一方で、物事を考えたり、論理的に考えたりする前頭前野が抑制される。怒鳴りながら指示を出しても、子どもは混乱して上手く指示に応えることが出来ない。
また怒鳴ったり、罵声を浴びせられ続けた子どもは聴覚野が育たないという研究結果も出ている(福井大学友田明美先生の研究より)。脳科学が発達したことで、子どもの育て方によって、脳が育ちに関しても分かってきた。

・青木先生からの話
子どもの脳はゆっくり育つ
脳科学の研究が進んだことで子どもの脳についてわかってきたことが多くある。幼児期は大脳辺縁系(感じる脳)が活発に反応する。それをおおうように思考や抑制する人間の脳と言われる前頭前野を含む大脳新皮質がある。この人間の脳は思春期までかけてゆっくり発達していくと言われている。
2~3さいにみられるイヤイヤ行動は前頭前野がまだ機能し始めていないことが原因と分かってきた。3さいくらいになると話せるようになるので、親もついできるはずと思い「いったよね?なんでわからないの?」と言ってしまうことがあるが、子どもがわざとやっているのではなく、感じる脳がイヤイヤをやっている。この子のせいでも、親の育て方が悪いのでもないんだなと感じるられると納得できる。
子どもの脳はゆっくり育つ。イヤイヤ期は脳の発達過程で行われている
ことを知っておこう。心理学的に見みると子どもがイヤイヤと言える親子関係は良好な関係が築けている証。


③イライラサイクルから抜け出す方法

「脳のせいだ」と分かったけれども、私たちはついつい、「イライラサイクル」陥ってしまう・・・どう抜け出していけばいいのか。青木先生の講義は続く。

【イライラサイクル】
・禁止・否定的な言葉かけが多くなる→子どもとの関係性は悪くなる→子どもとの関係性が悪くなると、ゆうこときかない→問題行動が増加する。

【ニコニコサイクル】
・肯定的な言葉かけ→関係がよくなる→子どもがいうことを聞くようになる→子どもの問題行動の減少

イライラ

子どもの自己イメージは、大人からかけられる言葉で作られる。イライラサイクルから抜け出すためには、「肯定的な言葉かけ」が有効。

■抜け出すヒント1/肯定的な言葉かけ
効果的なのは、「肯定的な言葉かけ」
親からかけられた言葉で、子どもの行動は強化されていく。
「してほしいな!」と思う行動を子どもがやったときに、声掛けしていく。
ご飯を食べる時、袖で口を拭いている子に「口袖で拭かない、やめなさい!」と否定的な声掛けをすると、してほしくない行動を強化していくことになってしまう。して欲しい行動はテッシュで口を拭いてほしいので、食事をする前に、テッシュを置いておき。それで拭けた時に「テッシュで拭けたね」と肯定的なことばで声かけをすると脳からドーパミンが放出され認められた行動は繰り返されるので子どもの行動変容につながる。

■抜け出すヒント2/具体的に行動を伝える
私たちの子どもたちへの言葉かけ、「子どもに伝わっていますか?」と青木先生。
例えば、スーパーの魚売り場で、魚の目をつつく子ども。「なにやっているの?いい子にしてっていったよね?」といってもやめない。その場合は、具体的な行動で伝えないと伝わらない。
肯定的な言葉で具体的に伝えるのがよい。ヒント1・2を組み合わせて。「〇〇してね」と伝える
。例えば、

・「走らないで!」→行動とれない。「手をつないで歩こうね」とする。 
・「公園から、もうそろそろ帰るよ」→「夕焼け小焼けの音楽がなったら帰るよ」
・「いつまで起きているの?」→「9時になったら寝ようね」

■抜け出すヒント3/共感的な言葉を使おう
共感的な言葉かけをすると、さらに効果が高まる。
私たちも、子どもが小さい頃は出来ていたよね。2-3歳の子どもに対しては、子どもが転んだときには「大丈夫?痛かったよね」「泣かないで、頑張ったねえ」など、共感することが出来ていたはず。小学校3年生が転んだときに、「よそ見してるからでしょう」「ぼーっと歩くと転ぶよ」と声かけしていませんか?との青木先生からの問いかけ。あるある・・・
その背景には、「小学生なんだから、ちゃんと歩けるでしょう。」という気持ちがある。その結果、共感的な言葉が出にくくなるということだった。

時には、共感できないことだってある。
例えば、時間来ているのにゲームしている。「やめるんでしょ!だめだよ」と言われと、子どもは頭ごなしに怒られたと思い、感情的になる。そんな時は、「ゲームもっとしたいんだね」と共感の言葉をまずは伝える。そういわれると、子どもも「気持ちをわかってくれた。でもダメなんだろうなあ。」と思い、言葉が入りやすくなる。

例えば、3歳のトマト嫌いな子どもが、出されたトマトを半分だけ食べた。その時に「半分しか食べてないじゃん、まだ残っているよ。」というのか、共感の気持ちで「トマト半分食べたね。」と食べられた時にできている方を強化し言葉かけをするとその行動は増えていく。

とはいっても、子どもの行動が中々変わらない。
何度も同じこと言うのは疲れるんですけども・・・
そんなとき、行動を変える声かけ、どうしたらいいの?

④コミュニケーションを育む「実況中継」

■「実況中継」とは?
子どもの行動を見た通りに、そのまま伝えること。
ー何も引かない、何も足さない伝え方。
ー安全な伝え方
-誰もが簡単にできる伝え方

ということで、親が感情的になってしまう場面で、それに代わる方法として、見たままを伝える「実況中継」をする。
そのことによって、親と子どもの関係を作る、コミュニケーションを育む方法ということで、教えていただいた。

大人だって、「髪の毛キレイ!美容院にいったの?」と気づいてもらえると嬉しい。子どもだって嬉しく感じる。繰り返そうとする。ドーパミンが脳から出てくる。認められた行動は増えていく。
ほめて育てろ!と聞くけど、ほめるって負担だと感じる。保護者も虐待を受けて育ったような家庭だと、私も褒められたことないので、どう対応していいか分からないということに保護者もなってしまう。「ほめる」というのは、ハードルが高い。

「実況中継」は、例えばご飯を一人で食べているときに、食べているところを見つけ、「1人で食べているね!」ということを言葉にしていく。おはようと起きてきたら、「1人で起きてきたね!」という。
感情が入らず、伝えられる。その結果、子どもが認められると思う。安全な伝え方。

■実況中継の効果
子どもに、親が見ていることを伝えることが出来る。認めてもらうと嬉しく感じて、その行動を繰り返そうと子どもはする。その結果、コミュニケーションが円滑になる。

■イライラの原因とは?
親の要求度 ⇔ 現状(子どものできること)
そこにギャップがあるときに生まれ、大きければ大きいほどストレスになる。子どもは、出来ないことを言われてストレスになる。

スモールステップで出来ることから始める。
おじぎをして、おはようございますと言ってほしい。これは保護者の要求。
子どもは反応しない。小さな階段を作って、考えてみる。
「さっちゃんあたまをぺこってできるかな?」
ペコってやってみよう。というところからスタートする。
出来ることから少しずつやる。できたときに実況中継する。親が困った時こそ、共感から入り「聞く耳を呼び起こす」。切り替わったら実況中継。
一つの場面で、一つだけ伝えるとより効果的。生理現象(睡眠、食欲、排泄)は子ども自身は調整できないことを知っておく。

■それでも感情的になってしまう場合は?
感情的になったときには、まず落ち着く。
感情コントロールできないとき、分からせようとして話し続ける。
いえばいうほど、子どもは癇癪を起す。たたいたり・・・など。
いい加減にしなさい!とたたいたりとなる。

感情的になったときは、まず「大人が」落ち着く。
時間を取る(年齢×1分:子どもが待てる時間)+距離を取る(見放された感のない言葉かけ)洗濯物干してくるね。等の声掛け。
声をかけてはなれることが大事(子どもは見放されたように思ってしまうので)。少し時間を取ってみると、冷静になる。
落ち着いたら、自己コントロールが出来るようになる。

大人も「イラっと」怒りの感情が起こるのは自然なこと。感情の脳が反応した後、「理性」「抑制」をつかさどる前頭葉が働きだすのに3-5秒かかるのでその間やり過ごすための6秒やり過ごす方法の紹介もあった。

⑤まとめ

最後に青木先生から温かいメッセージをいただく。
「自分の気持ちに気づくこと、こぼすことは自分を守り、子どもを守ることにつながります。コップがあなたの心の容量だとするとコップの中は、子どもの事、夫の事、近所のこと、ママ友の事、仕事の事・・・とたくさんで、疲れて、いっぱいいっぱいの状態になる。自分の気持ちに気づいて、愚痴をこぼす、家事の手抜きをするなど私も調整していた。こぼすことは自分を守ることなんだと理解しておくことも大事です」と。


主催者の目黒区議会議員・田添麻友より、
「今日の研究会の内容は、保護者がみんな知ったらいい情報でした。こういった情報を保護者たちが全員、知るためにはどうすればいいかを考えています。虐待のない社会を創っていけたらと思います。」という言葉で、会が締めくくられた。


★私たち、親子・子育て応援ラボでは今後も「虐待のない」社会を目指して、活動を進めていきたいと思います。
文責:渋谷区議会議員 神薗麻智子

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日頃は、子育てしているお父さん、お母さんがもっと居心地のよくなる世の中になったらいいなと思って、地域で活動する人たちと勉強会を開いています。 今は、コロナ感染拡大についてできることはないかと考え、行動していきたいと思います。 noteはこれを機に始めました。