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サンタクロースになる方法

世の中には自分が思いも寄らない仕事があったりする。その中には、収入がよかったり悪かったり、社会的な地位が高かったり低かったり、スーツを着る必要があったりなかったり、資格が必要であったりそうでなかったりする。そんないろいろな要素を考慮し、何かの仕事に就いてお金を稼ぎ、毎日飯を食い、酒を飲む。それが人間の営みだ。

サンタクロースという仕事に資格は必要ない。そりゃ、サンタクロース検定(略して「タク検」)の2級や3級くらい持っていれば、いざサンタクロースになった時に依頼が増えることもあるかもしれないが、だからといって、公務員になるみたく参考書を広げて来る日も来る日も勉強をする必要はない。まぁ、タク検を持っていても、好きなアーティストのライブに行って、ファンクラブに入っていればグッズを並ばずに買える程度の優遇しかされないから、そんなに重要なことでもないと言える。

では、どうやってサンタクロースになるのかというと、主な方法は2つある。手っ取り早いのは、まず自分で「サンタクロースです」と名乗ることだ。サンタクロース用の名刺を作るところからサンタクロースへの道は始まる。
ただ、いきなりフリーのサンタクロースになったところで、自分で仕事を取ってくるのはなかなか難しい。だから、「祖父も父も兄もサンタクロースをやっています」という人とか、「玩具屋さんや、プレゼントをサンタクロースに卸す仲介業者などの業界に知人がいます」という人におすすめの方法である。
あと、フリーのサンタクロースは自分でトナカイを調達しなければならないので、誰かに譲ってもらうか、自分で捕獲しなければならないのが難点である。サンタクロースの衣装も自ら用意する必要があるが、こちらはドン・キホーテに行けばいろいろな種類の衣装が低価格で販売されているので、そんなに心配する必要はない。

次に、養成学校に入るという方法がある。ちなみに、養成学校は東京・大阪・札幌・沖縄の4ヶ所にある。自分でサンタクロースと名乗り、フリーのサンタクロースになるのと比べれば、サンタクロースになるまでにかかる費用や時間は多くかかってしまうが、コネもノウハウもない人は是非とも養成学校に通ってほしい。養成学校にはたくさんのメリットがあるからだ。
まず、入学時にオスとメスのトナカイが支給される。このトナカイを飼育し、繁殖させることでソリを引くトナカイたちを揃えていく。ちなみに、在学中のサンタクロース実習(いわゆる、教育実習みたいなもの)の際は、養成学校が所有するトナカイを借りることができるので、一安心だ。
そして、卒業後にサンタクロース事務所へ斡旋してくれるのも、養成学校に通うメリットのひとつである。フリーではやっていく自信がないサンタクロース志望者にとっては大事な要素だ。養成所の就活支援センターは、全国のサンタクロース事務所にコネを持っているし、別にサンタクロースになりたくなければ、玩具屋や仲介業者を紹介してもらうこともできる。
ただ、サンタクロース事務所に入ると、ギャラの3割しかもらうことができない。そのギャラの3割でトナカイの飼育もしなければならないし、家族を養う必要もある。養成学校を卒業し、晴れてサンタクロースになれたからといって、浮かれている暇はないのだ。業界のいろいろな場所へ営業に行き、酒を酌み交わし、着々とコネを作っておく必要がある。その積み重ねが、独立してフリーになった時に大きな差になるのだ。

さて、サンタクロースはクリスマス以外に何をしているのかという疑問は誰もが持っているだろう。夏は南の島の浜辺でカクテルを片手に……みたいなのは御伽噺だ。実際は、営業に行きながら、配達業に従事している。僕らがよく利用するAmazon。その商品を届けてくれる人の一部は、実はオフシーズンのサンタクロースなのである。

イラスト:大成海


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