無題

こんな楽な商売はない。

最近流行りのものですが、その裏には、多くが隠されています。流行りは、裏があります。なんとなく流行っているからということで、何も考えずに乗っかることは、お気を付けください。何かが起こったときは、疑問に思う気持ちを忘れないでください。流行の裏には、お金を産むために、それらを操作する人たちや仕掛け人が、必ずいます。実際は、賢い人たちが得をして、その彼らは惑わされる人たちを笑っているのです。

(下記、抜粋です)

台湾発祥の「タピオカドリンク」が大ブームだ。繁華街を歩けば若者がカラフルなドリンクで喉を潤す姿が目に入ってくる。だが、カップ底に沈む黒いタピオカが暴力団にとって“黒い真珠”に化けていることは知られていない。実態を、暴力団事情に詳しいフリーライターの鈴木智彦氏が明かす。

【写真】暴力団にとっては「黒い真珠」

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 その店──暴力団経営のタピオカドリンク屋はJR山手線某駅に近い繁華街の一角にあった。立地も、ファンシーな店構えも、笑顔の店員も、暴力団と無関係にしか見えない。実際、働いている店員は、自分が暴力団のフロント企業でアルバイトをしているとは思っていないだろう。ましてや、SNS上にアップする写真を撮影したり、モチモチした食感を楽しんでいる“タピオカ女子”たちは、その代金が暴力団に還流されているとは想像すらできないはずだ。

 若い男女に混じって行列に並び、人気メニューの『タピオカミルクティー』を買ってみた。透明容器に入れられたうす茶のドリンクの底に、黒いタピオカが溜まっている。実質的な経営者の暴力団幹部に「黒い人間たちの集合体である犯罪組織の暗喩ですか?」と訊いてみたところ、「まったく関係ない。そもそもタピオカはデンプンで出来ているから着色すればどんな色にもなる。たまたま黒い方が若者にウケるから使っているだけだ。こじつけもほどがある」と呆れられた。

 この幹部は商品であるタピオカを業務用スーパーで仕入れているという。

「ブームで品切れが続くようになったので有名チェーン以外の有象無象は中国からの輸入に頼っているところがほとんどだろう。ネットで『黒糖珍珠粉圓』と調べれば安いのが沢山みつかる。原価は1杯で20グラム使うとして約6円。客はタピオカがたくさん入ってると喜ぶんだけど、あんなん沢山入れても痛くない。むしろ飲み物代の方が高い」

◆「こんな楽な商売はない」

 彼とは別の広域組織の暴力団員は、まだ駆け出しといっていい程度のキャリアだが、不良仲間だった知り合いに資金提供させ、タピオカ店を出店している。

「これほど楽に始められる商売はない。技術が不要だし、開業コストもかからない。店舗は5坪程度あれば十分で、ジューススタンドほどの広さで足りる。乾燥タピオカを戻したり、牛乳や紅茶を沸かすためのスペースや道具さえあればいい。特別な調理技術もいらないからアルバイトが2人いれば店を回せる。これまで狭いテナントではクレープやケバブが主流だったんだけど、いまはどんどんタピオカ屋に変わってる。都心でも家賃や改装費含め、200万程度の資金で開業できる」

 タピオカはネットを使い、海外から調達しているらしい。主力商品のミルクティーは、最初、格安スーパーのプライベートブランドを使っていたという。

「ミルクティー1杯15円程度の原価だ。いまは大ブームで、どこも激戦区なので、ちゃんとした茶葉を買い、ミルクを注いで、それなりの手間をかけるようになったので原価は30~40円。飲み物代よりタピオカが安いから、うちも“タピオカ増量無料”をアピールしている。客の9割は増量を選ぶし、店は茶葉やミルクの節約になって一石二鳥、売り値は1杯約500円だからストローや容器代を入れても原価は1割ほど。飲食店の平均原価は3割なので、タピオカは優等生だ」

 肝心の儲けだが、2人の話を総合すると1店舗で月に80万~100万円ほどの利益をあげているようだ。

 もちろん、経営に暴力団が関係しているのは一部の店の話だが、羽振りのよさをみて幹部たちも興味津々となり、先輩たちに出店アドバイスをしているという。今後はヤクザ系のタピオカ屋が増えるかもしれない。

「コストをかけずにブームのうちに稼ぎ、潮が引いたら撤収するつもり。だから店舗より移動販売がいいかもしれない。ヤクザ、カタギに関係なく、経済活動は楽して暴利、一攫千金が基本。クオリティを下げて儲ける努力はしても、こつこつ努力していいものを作るなんて愚の骨頂」

◆「流行はメシの種」

 タピオカ屋は、彼らにとって突飛な商売ではない。暴力団は犯罪組織というよりよろず屋で、幹部や組員たちはそれぞれ個人事業主であり、合法、非合法にかかわらず、様々な仕事で金を稼いでいる。

ヤクザの商売といえば、非合法、または非合法スレスレというイメージがあり、インターネットカジノや裏DVDの販売、非合法な風俗店、繁華街のぼったくり店を想像するかもしれない。その手の店が暴力団に寄生されやすいのは事実だが、“グレーな商売”ばかりが暴力団のシノギではない。

 これまでも、首都圏でそこそこ知られた喫茶店チェーンを暴力団組員が経営していた例を取材したし、一昔前、バターをふんだんに使った高級食パンがブームになった際、関西の有名店を経営していたのは九州の指定暴力団だった。当時、私が在籍していたヤクザ専門誌にその団体の幹部も連載していたため、編集部にはいつもそのパンが差し入れられた。第3次ブームとされるタピオカ同様、高級食パンも再びブームだから、また手を出しているヤクザがいることだろう。

 数年前、バレンタインデーのチョコレートが高級化・ブランド化し、原材料の価格が上がると、知り合いの暴力団幹部はカカオ豆の買い占めに乗り出した。付け焼き刃の知識で参入したところで失敗するだろうと思っていたところ、海外から仕入れた賞味期限切れカカオ豆やチョコレートを混ぜて問屋に販売し、莫大な利益を上げたのだ。

 ブームの裏には必ず暴力団がいる。

 暴力団が表看板としての正業を持つようになったのは、それまでメインだった賭博事犯が非現行犯で逮捕・起訴されるようになり、違法行為に依存すると行き詰まるという危機感からだった。そのため山口組三代目組長の田岡一雄は、常々組員に「正業を持て」と言い続けた。

 だが、暴排条例が施行され、いかなる理由だろうと暴力団と交流・取引をした一般人が違法とされるようになった。博徒はお天道様の下を堂々と歩けない日陰者を自認し“無職渡世”と称していたが、今や社会的に合法な商売をすると、取引相手が罰せられるため孤立無援で、建前上、文字通り無職でなければならない。

 だが、暴力団は今もしっかりオモテの経済に寄生している。彼らだけを社会悪として排除することは困難であり、我々日本人は知らず知らずのうちに暴力団の共犯者なのである。

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