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〈詩〉芝居の後

広場に設えられた芝居小屋
天幕を揺らす風の冷たさ
独白が生み出した深い草の中を
観客はそれぞれにさまよい出す

いくつもの風景がめぐり
男が広場の外へと歩き去ると
急速に収縮して消滅する幻視の世界
残された現実としての冬の夕暮れ
それと軽い頭痛

コーヒーカップの白い内側
水面に微かに揺らぐ景色
結末はもう忘れてしまった

アパートの窓は街の灯を映して
みな同じ方向を向いている

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