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『古今和歌集』でAIアート㉗〜紀友則〜

雲もなく なぎたる朝の 我なれや いとはれてのみ 世をばへぬらむ

訳:雲もなく、風も凪いだ穏やかな朝が私だからなのでしょうか。よく晴れて、厭われてばかりで、この世を生きて行かなければならないのは(引用:『100分de名著 古今和歌集』 渡部泰明 NHK出版)

こちら、紀友則が恋に敗れて「やけっぱち」になったときの気持ちを乗せて詠んだ歌だそうです。

「何で晴れてるのにやけっぱちの気持ちが乗っているの?」という疑問にお答えするためには、学生の頃の古典の授業で習った「掛詞」という技法が用いられている点は補足が必要ですね(テキストの「受け売り」ですが💦)。

いとはれて

という詞に、2つの意味が持たされています。

①いとはれて→いと晴れて→(現代語訳)とてもよく晴れて
②いとはれて→厭われて→(現代語訳)嫌われて

だから、晴れの日という爽やかな情景で、やけっぱちを表現できるわけで、この辺は和歌ならではな感じがします。

ということで、「なんで俺だけこんな目に遭わなきゃいけないんだーーーー!」って思っている男を、ユーモラスに表現できれば今回の和歌絵は成立しそうですね。

そこでAIさんに描いてもらったのが冒頭の絵です。

彼は残念ながら失恋して、涙して、しこたま飲んで、叶わなかった恋を忘れようとしたはずです。

そして一夜明け、気分も新たに真っ白なスーツと靴で外へと繰り出しました。

澄み渡るような青空は、新しい彼の「門出」を祝うかのようです。

深呼吸でもして、力強い一歩を踏み出した彼の足は、前日降った雨でできた水たまりで滑り、彼は泥んこの餌食になりました。

さっきまでの「爽やかなリスタート感」はどこへやら。

「あぁー、もうホントにツイてねぇなぁ!!!」

この局面で「当たり散らしモード」ではなく、「笑いに変えちゃえモード」に入れるかどうかで、人の器の大きさは測れてしまうのかもしれませんね。

彼は「笑いに変えちゃえモード」に突入し、自分の哀れな姿と境遇に立ち向かうことにしたんです。

「こうなったらもう、とことん汚れてやるーーー!」とばかりに水を自分で跳ね上げて、諦めとも嘆きともつかないような、なんとも寂しげな笑顔を浮かべながら、泥水のシャワーに身を浸すのでした。

こんな状態になってしまったら、もう周りも笑ってしまうでしょうし、その笑いは彼の失恋の痛みを和らげるでしょう。彼も周りも笑いに包まれ、空気は和やか。

そして、そんな空気を演出したのは、心に痛みを抱えた彼自身です。こういう人に、私は憧れます。

今日の「和歌絵」は以下のキーワードをAIさんにお預けして描いてもらいました。

爽やかな朝、雲一つない真っ青な青空、男性、白いスーツ、白い靴男、水たまりの水が撥ねて泥だらけ、諦めたような笑顔、空を見上げる

A refreshing morning, a clear blue sky without a single cloud, a man in a white suit and white shoes, covered in mud from splashes of water from a puddle, a resigned smile, looking up at the sky


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