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90秒で読む!コンサルタント「読書日記」(第13回)

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「ワークマンは商品を変えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか」(酒井大輔著 日経BP 2020年6月)

とにかく面白い。痛快であった。

群馬県伊勢崎市で創業した作業服専門店「ワークマン」が、アウトドアショップ「ワークマンプラス」へと変貌し、今やポストユニクロと言われるまでに急成長した理由が明かされる。

作業服業界では向かうところ敵なしであったワークマンは、同じ作業服の売り方を100%変えることを決断した。低価格と高機能を両立させたブランドがアパレル市場で抜け落ちていることを発見し、その競争空白地域をいち早く押さえることで、一般客の心をつかみ、大幅に売上を伸ばすことに成功した。アイデア一つでここまで企業は変わることができるのかと驚きを禁じ得ない。

ワークマンがワークマンプラスというブランドを成功させることができた理由は、従来のやり方を変えるもの、変えないものを峻別して、改革したからである。

ワークマンが変えたものは、①自社の商品力を短期間で目覚ましく伸ばしたこと、②前例踏襲の経営からデータ重視の経営に変革したこと、③言ったことは必ずやるという「本気の経営」を見せたこと、④頑張る代わりに何かを捨てるという「トレードオフ経営」で経営の合理化を図ったことである。特に、ワンタッチで「仕入れ完全自動化」を実現することで、無駄な在庫を極力減らしながらも、販売機会を逃さない、売上最大化を実現する試みは画期的である。

逆に、ワークマンが変えなかったことは、①マニュアル化による店の標準化経営、②ローコスト経営の徹底、③余計な仕事はやらないというやらないことが決まっている経営、④ステークホルダーは長期固定である。特に、どれだけ納品するかという判断をメーカーに委ね、生産した分は全て無条件で買い取るという「善意型サプライチェーン」の確立は、画期的であろう。

自社製品を「独自化」させ、徹底的に他社と競争しないポジションにもっていくワークマンの戦略は見事というしかない。現在進行形のワークマンの進化の行く末が楽しみである。


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