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90秒で読む!コンサルタント「読書日記」(第12回)

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「両利きの組織をつくるー大企業病を打破する「攻めと守りの経営」」(加藤雅則他著 英治出版 2020年3月)

現AGC(旧旭硝子)を事例に、成熟した大企業が既存事業を守りながら、いかに次の成長領域に挑戦して生き残るかについて述べた書である。

事業にはライフサイクルがあり、企業が長期的に生き残り、繁栄し続けるためには、個々の事業の成長のS字カーブをうまくつなぎ、既存事業が衰退期に入る前の踊り場で、次の新たな成長事業を生み出さないといけない。

しかし、成熟企業であればあるほど、新たな挑戦を行うにあたって、自社の「組織カルチャー(=具体的な「仕事のやり方」)が最大の壁となって立ちはだかる。各企業の「仕事のやり方」は、過去の成功体験により築かれている。このため、多くの企業では新しいことを始めるのに際し、古いやり方でやろうとしてしまい、失敗してしまう。「成長の罠」から抜け出すことができず、既存事業が新規事業を殺してしまうのだ。

「両利きの経営」の核心は、①既存の事業を深堀りする組織能力、②新しい事業機会を探索する組織能力、③相矛盾する2つの能力を併存させる組織能力という3つの組織能力の獲得を目指すことである。

組織を進化させるためには、経営トップの役割、意思表示が極めて重要である。同時に、トップの意思に反応するミドル、若手が存在しなくては、組織進化は始まらない。だからこそ、本当に組織を変えるつもりならば、まずは組織の何を変えるのかについて、当事者間で合意する必要があるのだ。

トップダウンとボトムアップがミートするところで、初めて実務レベルでの変革が可能となる。一社でも多くの日本企業において、組織開発の扉が開くことを筆者は期待している。

「脱皮できない蛇は死ぬ。」「両利き経営」の背景には、「成熟企業は自ら変わらないと新興企業に、一気に創造的破壊をされてしまう」という強い危機感がある。



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