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バースデーケーキ・キラー

 彼女は誕生日だというのに不機嫌だった。彼が時間になっても現れないからだ。
 苛立ちが頂点に達する直前、チャイムが来客を告げた。

 一発殴ってやろう。
 力任せにドアを開けると宅配業者が立っていた。

「お届け物です」

 落胆しながらサインし、差出人を確認する。
 そこには今ここにいるべき彼の名前。
 ひんやりした箱だ。

 品名は、ケーキ。

 怒りに任せてに開封する。立派なホールケーキだ。
 こんなもので許されると思うなよ。約束をすっぽかした罪は重いからな。
 豪快にフォークを突き立て、豪快に口へ入れた。

 そしてすぐに吐き出した。

 感じたのは甘さ。そして、不快な繊維。何か硬いものも入っていた。

 口に残った違和感を指で掻き出すと、それは毛髪だった。
 彼と同じ、ブラウンカラーの毛髪。

 硬いものの正体は、歯。そして、剥がされた爪。

 乗せられたプレートには、彼の名が書かれていた。

 のちにバースデーケーキ・キラーと呼ばれる殺人鬼がおこした、最初の事件だった。

【続く】

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