俺はチョコチップクッキーの一番いい具合のチョコチップ率を探る。
チョコチップクッキーが好きだ。俺はクッキーモンスターだからだ。
特にブルボンのこれが好きだ。安いし美味いからだ。
戸棚を開けたら最低一箱はあるように常備している。俺はクッキーモンスターだからだ。
さてこのラベルをよく見て欲しい。「CHOCO」の上だ。
《チョコチップ12%》と書いてある。
体積%だか重量%だかわからないが、これはブルボン社員が美味しさとコストの板挟みになりながら一生懸命血反吐を吐きながら寝ずに計算して割り出したチョコチップの最適比率なのだろう。多分そうだ。
俺はこの美味いチョコチップクッキーを製造しているブルボンを、親を慕う子のように信頼している。
だが俺は与えられる幸福(チョコチップクッキー)に甘えず自らチョコチップクッキーの高みを模索する必要がある。俺はクッキーモンスターだからだ。
思い立った俺はクッキー生地を作った。平日の朝からだ。
余談だが仕事を辞めることにしたので有給を使いまくっている期間なのだ。
レシピはクックパッドで適当に検索した。
目を背けるな、グロ画像ではない。これはクッキー生地だ。安心しろ。
そしてこれを7つに分け、様々な比率でチョコチップを混ぜた。
これを寝かせて、型を取って、焼く。
クッキーモンスターである俺にとっては造作もないことだ。
焼いたものがこちら。これらを実際に食べて一番美味いチョコチップ率を探る。
ここで一つ謝らなければならない。重量%だの体積%だの賢そうな言葉を使ったが特に実際に分量を計ったわけではない。
研究者として恥ずべきことだが、計量が面倒くさかったから全部目分量だ。以下比率の話は全て混ぜるときの見た目の話だ。それを踏まえて読んでほしい。
無クッキー
最初はこれだ、チョコチップ率0。無クッキー、ただのバタークッキーだ。
普段クッキーを食べる時はチョコチップクッキーばかり食べているので物足りなさを感じるかと思いきや、特にそんなこともなく普通に美味しかった。
バターの風味が最高だ。俺はチョコチップに固執していたのかもしれない。
微クッキー
申し訳程度に混ぜられたチョコチップ。
だがチョコチップ率を下げることで、チョコチップに到達した時の嬉しさを増幅させる効果を狙ったものだ。
宝探しゲームのような楽しさが期待できるかもしれない。そう思った。
結論としては、美味いが無クッキーとの違いを認識できなかった。
味わって食べたらまた違ったのかもしれないが、俺はクッキーモンスターなので豪快にバリバリ食べてしまった。それがいけなかったのかもしれない。
クッキーに罪なし。
普通クッキー
普通クッキーだ。市販のチョコチップクッキーを参考にして「だいたいこれくらいだろ」と適当にチョコチップを混ぜ込んだ。
なかなかそれっぽい見た目になったと思う。
味はもちろん美味い。また微クッキーと違い、豪快にバリバリ食べてもチョコの風味がして嬉しい。
「チョコの風味がする」→「嬉しい」という感情の起こりを28歳にして初めて経験した気がする。
多めクッキー
「よ〜し、今日はちょっとたっぷり目に入れちゃおうかな」程度のチョコチップ。
先ほどの普通クッキーの1.5倍くらいのチョコチップと思ってくれればいい。
ちょっとだけ冒険してみた、そんな言葉が似合うクッキーだ。
まだ常識の枠内だが本人的には大冒険。初めて辛口のカレーを食べる子供、初めて大盛りに挑戦する子供。そんな感じがする。わからないだろうか。わからないか。そうだよな。
味だが非常に美味い。クッキーのサクサク感とチョコチップの食感の違いを両方楽しみながら、よりクッキリとしたチョコ味とバターの風味を楽しむことができる。
半々クッキー
ここから先は禁断の領域だ。そう、これはチョコチップとクッキー生地、だいたい半々くらいのチョコチップクッキーだ。
クッキーとチョコの狭間にあるもの。そう呼ぶこともできるだろう。
チョコチップクッキーとは何か、という哲学的なテーマにもつなげることができるクッキーだ。だが今回はそんな話はしない、美味いかどうかだ。
もちろん美味い。美味いが崩れやすく食べにくい。味としてはほとんどチョコ味で、もうザクザクしたチョコと言っていい。
オーバークッキー
半々の壁を超えたチョコチップクッキー、チョコチップ率だいたい60%程度だろうか。
便宜上チョコチップクッキーと呼ぶが、もはやメインはチョコなのでクッキーを結合材として繋げたチョコという方が正しいのかもしれない。
コンクリート。まるでコンクリートのようではないか。
コンクリートは骨材(砂利や砂など)、結合材(セメントなど)、そして水からなっている。
このクッキーの場合は骨材がチョコチップ、結合材がクッキーにあたる。(水は当然クッキー生地に含まれる油分等だ)
チョコチップの割合を増やしたチョコチップクッキーはコンクリートに似る。この事に気がついている人間が俺の他に何人いるだろうか。
そう思うと優越感すら芽生える。
味としては半々クッキーと大して変わらなかった。
ほとんどチョコ
最後はこれだ。チョコチップ率70~80%くらいだ。
ほとんどチョコと言って差し支えない。
だが待ってほしい、人体は70%が水分と言われている。だが誰も人体を指して「ウォーターじゃん」とは言わないだろう。
これも同じだ。チョコチップが70~80%だろうとこれはチョコチップクッキーなのだ。
噛みしめるとすぐに崩壊し、口の中にボロボロとチョコチップが転がりほろ苦さを振りまく。
その様子には儚さすら覚える。だが正直そんなに美味しいとは言えない。
不味くはないが、製菓用のチョコチップをそのままポリポリ食べているのと変わらない。食べやすいチョコチップだ。
どことなくニールブロムカンプ監督の短編映画のモンスター、Zygoteの顔に似ている。思い出さなきゃよかった。
Zygoteはyoutubeなどで無料公開されているから怖いやつが大丈夫な人は見に行って欲しい。日本語字幕にも対応している。
結論
結論としては多めクッキーが一番美味かった。非常に面白くない結果だが実際そうなので仕方ない。
いつもより少しの背伸び、少しの贅沢。
考えてみればチョコチップクッキーだって、プレーンなクッキーに少しの贅沢としてチョコチップを加えたものじゃないか。(これは適当に言ってます)
チョコチップクッキーに限っては、その少しの贅沢というのが丁度いいのかもしれない。
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