砂漠でバームクーヘンを売っていないか?

こんにちは。ナッツです。

今日は、「価値があると信じているものほど、届かなくなる」というテーマでお話したいと思います。

そのこだわりは誰のため?

高校教師をして7年ほど経ちますが、授業のプリント作りが人一倍遅いのが悩みだったりします。

分析すると理由は明らかで、「こだわりを捨てきれない」のが遅い原因です。

プリントを作っていると、レイアウトなり文章表現なりにこだわってしまって気づいたら何時間も経っていた、、、の始末。

そしていざ、そのプリントで授業をしてみると、自分のたくさん時間をかけて作ったところはサラーっと流れてしまったりして切ない気持ちになります。

この現象をよくよく考えてみると、
”相手の求めていることと自分の提供するものの温度差”
を察知できていないんですね。

生産性などを無視して、ついつい職人気質な部分が出てしまう。

「プロダクトアウト」という言葉があります。
意味としては、「作り手の理論や計画を優先させる売り方」のこと。

少し言い換えると、
「まず作り手が良いと思う物を作ってから、それを売ろうとする」イメージです。

昔ながらの職人さんは、自分の技術や素材にこだわりを持ち、「いいものを作れば売れる」という考えのもと、技術を磨いてきました。

その結果、「メイドインジャパン」の信頼を得た訳ですね。実際、いいものを作れば、いいものがあまりない時代においてはどんどん売れていったみたいです。

ですが、みんなが欲しくないと、そもそも行き渡らなくなります。

「すごい!だけど、要らないなあ」で終わります。

モノだけに限らず、価値観も同じで、みんなが同時に「いい!」と思うことも少なくなってきています。

すると、こちらがどんなに「いい!」と思っても、届かなくなります。

例えば、授業でも、「これは良い情報だ!」といってやみくもに知識や勉強を教えても、目の前にいる生徒が必要と感じているかどうかはまた別の話です。

こちらがどんなに良いものと思っていても、悲しいことに相手が興味を持たなくて、聞かなければ意味がなくなってしまう。

加えて、「生徒に届けるものはこだわりたい」という美しい理由で、プリント作りにこだわった結果、そこには本来もっと有意義に使えたはずの時間が消えてしまっている現実についつい目を塞いでしまうんです。

このあたりを気をつけないと、相手の目線を欠いたプロダクトアウトになってしまいます。

砂漠で喉がカラカラの人に、超ハイクオリティの手作りバームクーヘンを売るのと同じことです。

喉がカラカラの人はまずは何が欲しいか?を考えて、口がパサパサになるあなたの自慢の「バームクーヘン」をあげるよりも、まずは普通の「水」を与えてあげましょう。

そこから先が「あなたのこだわり」の勝負。

相手と自分の目線を行き来する。

ちなみに、プロダクトアウトの逆は「マーケットイン」といいます。

「マーケット」=「市場」は、何を欲しているかを調べて、それを解決するものを売る!ということです。

生徒が関心あることを絡めて授業をすると、結構授業への食いつきが良いです。

ところが、これはこれでデメリットもあります。

もしかしたら相手がほしいのは、「単位を落とさない授業」「受験で必要な授業」「寝まくっても減点されない授業」かもしれません。

そこにフォーカスして面白い授業ができるはずがない。

世界で初めて大衆向けの自動車を生産することに成功したヘンリー・フォードの言葉に、

「もし私が何が欲しいかと聞いていたとしたら、人々は『もっと速い馬』と答えただろう。」

という言葉があります。

この意味としては、相手の要望を意識しすぎると、予想を超える素晴らしいものが生まれにくいということです。

独自性がなくなって、平凡なモノになってしまいがちになる。

また、人の望みを最優先で叶えようとした結果、本当に自分がしたいことをできない可能性もでてきます。

僕はクエンティン・タランティーノという監督の映画が好きなのですが、この人の映画なんて、大衆のニーズなんてフル無視です。関係ない。

自分が価値を感じ、観客に届けたいものを撮った結果、そこに根強いファンがついて、偉大な映画監督になっています。

このように、プロダクトアウトを極めた先にヒットがあり、大衆に迎合しすぎたら結果的につまらなくなってしまうパターンもあるので注意が必要です。

結論、大切なのはプロダクトアウトとマーケットインのどちらが大事か?ではなく、二つの視点で物事を考えないと、『価値』ってなかなか届かないよね、、、

という話でした。

以上でーす!

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