猫がきょうだいになった日のこと

これはずいぶん昔の、
わたしがまだ子どもだった頃の話しだ。
「これからは、この子を兄妹やと思い」
そうやってある日を境に兄妹のいなかったわたしに兄妹ができた。

我が家にやってきたのは、生後2ヶ月の真っ白なふわふわの猫だった。
目はまだ青色でキトンカラーだ。
市民新聞のお知らせに載っていた猫を親が引き取ってきた。

ぴょんぴょんと飛び跳ねるその存在は
兄妹といわれてもピンと来なかったが、
とても愛くるしく初めて出逢う子猫にわたしはドキドキしていたのを覚えている。

そのねこの名前はキャティにした。
なぜその名前にしたかというと、1番言いにくいカタカナを組み合わせてみたかったから。

とにもかくにも、その猫はわたしが小学2年生のときに家族となった。
兄妹になったキャティはとにかく寂しがり屋で、よくわたし達の後をついて回った。

特にめす猫だった為か、父親にはよく懐き
食後のミルク珈琲を父親が電子レンジで温めると

「ンナー」と鳴いては撫でてほしいと催促をしていた。
食後に珈琲を飲む時間だけは、父親が彼女のために時間を避ける瞬間だったのだ。
お腹を見せながら、嬉しそうに懐くその姿は本当に可愛かった。

そんな人懐こかったキャティだったが、ある日を境に無心でご飯を食べるようになった。
突然の食欲にわたし達は皆くびを傾げていた。

しかし、食欲が増すと同時に日を追うごとにペタンコだったお腹はみるみる大きくなっていった。
そう彼女は、妊娠をしたのだ。

これにはわたしの両親も驚いていた。
まだ産まれて半年たらず、人間歳で数えたら16歳での妊娠だった。
あっという間にお腹の大きくなった彼女は3ヶ月ほどであっという間に子どもを産み、母親となった。

そしてまたわたしの兄弟が増えた。
産まれた子猫は全部で4匹。
3匹はキャティに似た真っ白な猫だったが、
1匹だけ茶シマの猫が混じっていた。

これにまたわたしの両親はビックリしていた。なぜなら、キャティの旦那になる猫は、顔の大きな「あんぱん」と名付けた猫だと思っていたからだった。
「あんぱん」と名付けたのは、うちの母親だったがあまりにも大きな茶色の顔があんぱんに見えたらしい。

その日からその猫は「あんぱん」と呼ばれるようになった。

あんぱんは野良猫だったが、キャティに一目惚れしたのか、日夜構わずうちの庭先に来ては網戸越しに「ナウゥ」と鳴いてはアピールをしていた。

少し澄ましたところも持ち合わせていたキャティは、あまりあんぱんを相手にはしていなかった。だが、キャティが妊娠したとき
家族全員がついにあの、あんぱんの「恋」が実ったのかと思っていた。しかしキャティから産まれた子猫は濃い茶色と黒のどちらかというとマダラ模様だった「あんぱん」の色ではなく、
薄い綺麗な茶しまの猫だった。

「あんぱんの子じゃなかった…」
そのことに家族が唖然としていると、網戸越しにいかにもシュッとしたイケメンの猫がやってきた。

その様子に「ニャァ」と嬉しそうにキャティが鳴いた。その瞬間、彼女の旦那はこの子だと皆確信した。
そして、やはり彼女は面食いだったことが判明した。

結局その茶シマは、知り合いのひとにもらわれていかれ、もう一匹はわたしの同級生の家へ…

そしてもう一匹引き渡そうとされているのを学校帰り発見してしまった。玄関先に父親が描いた絵と共に、譲りますというポスターが貼り付けてあったのだ。

忘れもしない、わたしはそのポスターを引きちぎって「嫌やぁー」と泣いて駄々をこね、やめてもらった。

そうしてわたしの兄弟は3人ではなく、3匹となった。その頃には猫のいない生活は、もう考えられなかったのだ。

その猫たちは知ってか知らずか大きな欠伸をして「ナァアン」とひと鳴きした。

猫たちが亡くなってしまったいまも、わたしは4兄妹だと思っている。



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