オフィスワークを経験したことない私があこがれる何の変哲もない平日の仕事終わり

今日もよく働いた。

朝ちゃんと起きて化粧をして、使いまわしている安いシャツとちょっとアシメなスカートにいつもと同じ黒い靴を履いて、電車にのって会社に着く。今は別に忙しい時期ではないので定時前からそわそわしながら夜ご飯の事を考えていた。ご飯と言っても飲みたい酒とつまみを考えていたという方が正しいかもしれない。

今日は軽く酎ハイを飲んでから日本酒か焼酎だな。結局それがいつものパターン。そういえば実家から送られてきたどこかの道の駅の酒盗があったはず。コンビニで果汁が多めのグレープフルーツサワーを買って帰ろう。いつもとは違う一筋向こうのコンビニなら新しいスイーツも置いているかもしれない。

定時になったらその途端に席を立つ会社を出る。電車に乗る。電車の中での27分、すわれても座れなくてもあまり関係ない。だってこの電車が一番忙しいから。一日見ていなかった携帯の隅々までチェック。今日起きたことをくだらない順に自分の欲望のままに見ていく。芸能人の熱愛、ああ、この人かっこいいと思ってたのに彼女と手つなぎデートをすっぱ抜かれたなんて、かわいそうに。こんな記事、書かなきゃいいのにしょーもない。でもなんだか読んでしまうから書く人がいるんだよな。

学生向けの胸キュン映画の予告を見る。そっか、今の若手俳優ってこんな感じなのね。男の方は私のタイプじゃないけど女の子はかわいいな。それにしても内容薄っぺらいしこんな映画二時間見るなんて拷問だよ。まあ見ないけど。

ふーん、また地震があったか。そういえばあの辺に数年前仲良かった友達が住んでたっけな。

そんなことを考えながら携帯を見ているとすぐに時間は経つ。毎日しっかり八時間働いて、疲れを感じるのもめんどくさい。

予定通りコンビニに寄って新しく出た宇治金時のアイスも買ってアパートに戻る。この町のどのアパートも同じだろうなというようなどこにでもありそうな自分のアパートに。

今日はエコバッグを忘れたので直接鞄に入れた宇治金時とチューハイ一缶を取り出して両方を冷凍庫にしまう。クーラーとテレビをつける服を脱ぐ化粧を落とす。
ろくなテレビやってねえな。

グラスに氷を入れてまたチューハイを出す。適当に買っておいたニンジンと酒盗と一緒にお盆に置いて部屋に入る。

やっと足を延ばして座る。チューハイの缶を開けて一口目、感じる一日の終わり。今日もよくがんばった。大学時代の友達はきっともっと働いているんだろうな。最近忙しいって言ってた。4時間睡眠とか言ってたっけ。かわいそうに。でも私には関係ない。時間じゃない、仕事量じゃない、だれが何と言おうと今日も私はがんばった。チューハイのご褒美の時間だ。

相変わらず内容のないおもしろくないテレビの画面を見ながらチューハイを飲む。こんなのジュースよ、酔えもしないわ。水でさらっと洗ったニンジンをそのままぼりぼり食べながら「馬だな私」と心の中で笑う。これ別になんてこともない酒盗だけどやっぱり日本酒にあいそうだな。ちょうどいい日本酒あったっけ。パック酒があったか。

血が通い始めた足を動かして重い腰を上げて酒を取りに行く。ちょっといい磁器のぐい呑みで飲もう。洗い物が増えるけどまあいいか。

はあ、ちょうどいい。これでほろ酔い。チャンネルを変えよう。イケメンを見よう。八時か、まだ早いな。私の今日は今からだ。

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