日本語を育てる絵本

海外で子供たちに日本語を絵本を読み聞かせしながら、「日本語を育てる絵本ってどんな本なん…

日本語を育てる絵本

海外で子供たちに日本語を絵本を読み聞かせしながら、「日本語を育てる絵本ってどんな本なんだろう」ということを10数年考えてきました。その「あーでもない、こーでもない」をアメリカ各地の日本語フリーペーパーにコラムとして書いたんですね。このページは、そのコラムたちをまとめたものです。

最近の記事

初めて“読む”絵本: 『さる・るるる』

『さる・るるる』 作:五味太郎 絵本館 1980年  うちの子がひらがなの拾い読みを始めた頃、気が早い私は「次はいきなり絵本のひとり読みか」とか思ってました。まあ、世の中そんなに甘いわけがなく、文が読めるようになるにはそれなりの時間がかかったんですが、そのときに一応「最初にひとり読みさせるべき絵本は?」とか考えたんですね。  「むかしむかし、あるところに・・・」系の絵本だと、出だしからしてアウトなわけです。文字が多すぎるんですね。できるだけ少ない文字数で、なおかつスト

    • 心温まるエンディングの逆を行く絵本:『ねないこだれだ』

      『ねないこだれだ』 作:せなけいこ 福音館書店 1969年  絵本のストーリーにはいろんな終わり方がありますよね。悪いヤツをやっつけたりとか、仲直りしたりとか、家族愛や友人愛を再確認したりとか。ロングセラー絵本を読むとだいたい共通してるのが、話のエンディングが非常にわかりやすいということです。 今回取り上げた『ねないこだれだ』も、大変クリアーな終わり方をしてます。クリアーすぎて怖いぐらいです。「寝ない子はお化けになって飛んでいけ」。これがエンディングなんですね。実際に

      • なぜかおもしろい絵本:『だるまちゃんとてんぐちゃん』

        『だるまちゃんとてんぐちゃん』 作/絵:加古里子 福音館書店 1967年  この本の作者は加古里子(かこ・さとし)さんという男性なんですが、正直言って絵はあまりうまくありません。文も『ぐりとぐら』作者の中川李枝子さんのような言葉のセンスを感じさせる文章ではありません。でも、絵本としてはすごくおもしろい。子供たちにも人気がありますし。どうしてなんでしょうか(聞いてどうする)。  ひとつ言えるのは、ストーリーの積み上げ方がうまいということ。加古さんは工学博士でもあるんです

        • さまざまな“しゃべり”を学ぶ絵本:『おふろだいすき』

          『おふろだいすき』 作:松岡享子 絵:林明子 福音館書店 1982年  日本語にはいろんな口調がありますよね。ペチャクチャしゃべるパターンやゆっくりのんびり話すパターンなどです。普段の生活の中で、そういう様々なタイプの口調を子供に体験させるのは結構大変。早口の親はやはり早口になりますし、ゆっくり派はどんなにがんばってもゆっくり派です。  その点、絵本はいろんなキャラクターの口調をはっきりと塗り分けることが可能です。書いてあるセリフを読むことによって、早口の親もゆっくり

        初めて“読む”絵本: 『さる・るるる』

          何にでも使えるえほん:『おおきなかぶ』

          『おおきなかぶ』 ロシア民話/A. トルストイ再話 訳:内田莉莎子 絵:佐藤忠良 福音館書店 1966年 このえほんにはホントにお世話になってます。1年ほど前から日本語の読み聞かせ&手遊び・身体遊びの会をやってるんですが、そこでの最多出場の本です。読んでも良し、振りを付けても良し、劇にしても良しといろんな形で使えるんですね。 使いやすさの理由は、話が非常にシンプルであること(タイトルでもある「おおきなかぶ」をみんなで抜こうとする話)。あと、場面展開もわかりやすく文章も

          何にでも使えるえほん:『おおきなかぶ』