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この先何十年

「赤い口紅をつけ始めたのは、白髪が増え始めた頃だったから、40代半ばね。」

これまで一度も染めたことがないという白髪と真っ赤な口紅で、オーバーサイズのサングラスとスリムなジーンズを着こなすその女性はもう70歳近い。

「それまでは口紅なんて全然つけなかったのだけど、ある時、赤い口紅をつけると、白髪姿も生き生きして見えるということに気がついたの。」

そう言う彼女に

「実は、私も40歳手前で赤い口紅を使い始めたんです。若い頃は口元に自信がなくて、できるだけ目立たないようにしてたのに、いつのまにか、ヌード色よりも、赤く塗られた唇が自然に感じられるようになったみたいで。」

私もそう打ち明ける。

「女の皺とマットな赤は相性が良いのよ。散る間際の薔薇みたいじゃない。」

そう言って笑う彼女から、ふわりとジャスミンが香る。

「そうかと言って、皺を愛してるってワケじゃないわよ。こんなに皺々になっちゃって信じられない!」

まるでニキビに悩む高校生のような苦々しい口調で言うので、笑ってしまう。

10代から20代の頃は、歯並びに自信がなくて、いつも口元が目立たないようにしていた。

30歳になった時、2年間かけて矯正をして、銀歯を全て白い詰め物に変えた。

奥歯まで真っ白な歯で大口を開けて笑ったり、はきはきと話すのに憧れたのだ

そして、40歳になった今、真っ赤な口紅をつけて大笑いしている。

「ボトックスやフィラーには興味ないけど、70歳になった今も赤い口紅なしで1日は始められないわ。」

「私も、今ではこれなしだと落ち着かないんです。」

そう言うと、彼女はにっこり笑った。

「これからまだ何十年も赤い口紅を楽しめるじゃない。」

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