見出し画像

「NYCは孤独な経営者の右腕」二代目社長が投資会社への事業承継を決断した理由

中小企業の事業承継と聞くと、子や孫といった親族への引継ぎをイメージされる方が多いかもしれません。ところが、意外にも最近は親族への事業承継は減っており、社員や役員からの内部昇格が過去最高の36.4%。親族にとらわれない事業承継の傾向が強まっているようです。

事業承継は大きく分けて子や孫など親族へ引継ぐ「親族間承継」、親族以外の社員や役員が後を継ぐ「内部昇格」、また私たちのような投資会社や事業会社、ファンドなどが譲り受ける「第三者承継」の3種類があります。

右 NYC アソシエイト加藤
中央 ビジネス会計人クラブ 島田社長
左 NYC シニアアソシエイト/弁護士 鈴木

今回お話を伺ったビジネス会計人クラブ株式会社(以下ビジネス会計人クラブ)の島田社長は、創業社長であるお父様から事業を引継ぎ、さらにNYCへの事業承継をご決断されました。

NYCへの事業承継から2年経ったこれまでの歩みを担当者と振り返るとともに、親族間承継ならではの悩み、また「経営者は50代になったら、すぐにでも事業承継に向けて動き出してほしい」と仰る中小企業の後継者課題についてお聞きしました。

【ビジネス会計人クラブ株式会社】
税理士向けのコミュニティ運営
税理士を中心とした専門家のための知識習得を目的とした研修会の運営をしています。また弁護士、司法書士、社会保険労務士をはじめとした専門家マッチングをしております。2022年9月にNYCが全株式を取得しました。
https://bac.gr.jp/


コロナ禍をきっかけに50代で事業承継を決断。若い投資会社への引継ぎは熱意が決め手

ーーはじめに、ビジネス会計人クラブの事業内容とNYCへの事業承継を決断した経緯について教えてください。

ビジネス会計人クラブ 島田社長

島田社長
ビジネス会計人クラブは、1997年に税理士を中心とした専門家のための、知識習得と研鑽を目的とした研修団体として創設いたしました。

現在は東京と大阪に事務局を構え、400名ほどの会員様にご入会いただき、会計人のみならず弁護士、司法書士、社会保険労務士など士業専門家や協力企業がいらっしゃいます。最新の税制やトレンドを知るだけでなく、業界で第一線を走っていらっしゃる諸先生方の生きた情報を学べる場としての役割とともに、お客様の希望や悩みに応じたビジネスマッチングも行っております。

定例研修会の様子

父が創業し、2014年に私が跡を継ぎ代表を務めて参りましたが、2022年9月にNYCへの事業承継を行いました。きっかけは2020年頃に起こった新型コロナウイルスの流行ですね。私自身は50代で健康面に大きな不安はなかったのですが、病気に限らず不測の事態が起こってしまった時に社員や家族、関係者の方々に多大な影響を及ぼしてしまうだろうと強い危機感を覚え、決断しました。

NYCの方々に初めてお会いした時は、とにかく若い、エネルギッシュな印象が強かったですね。投資会社という業界に馴染みはありませんでしたが、話を進めていくうちに非常に熱心な方々だということが伝わりました。

検討期間から投資実行まで半年ほどかかったのですが、その間もこまめに報告などもいただいていたので安心して進めることができました。M&A仲介会社の担当者のアドバイスを受けながら、最終的にはNYCの皆さんの熱意が大きな決め手になりましたね。

ーーNYCへの事業承継を決めたことで、社内や周囲の方々の反応はいかがでしたか?

島田社長
NYCへの事業承継については私から従業員へ説明しましたが、いきなりのことで戸惑いもあったかと思います。ただこれまで通り私が在籍していることでの安心感と、NYCの担当者がこまめに来社しコミュニケーションをとっていただいたおかげで信頼関係を築くことができました。一部の会員の先生方にも直接お会いしてコンタクトをとっていただきましたね。

父にもNYCへの事業承継について相談しましたが、既に私への引継ぎも終わり経営は一任されていたため、快く了承してもらうことができました。総じて大きな混乱もなく、スムーズに移行できたと感じています。

NYC アソシエイト 加藤

NYC 加藤
私たちとしても従業員の皆さんの温度感は大切にしています。投資先ごとにエリアや規模、年齢層、男女比率も異なりますので、事業承継への反応は様々です。

従業員の皆さんの立場からすると、事業承継は「寝耳に水」とも言える事態で、驚いたり不安を感じて当然でしょう。島田社長が普段からしっかりとコミュニケーションをとっていらっしゃったからこそ、NYCへの事業承継を前向きに捉えていただけたのだと思います。

親族間承継ならではの課題をチームで解決。ビジョンに向けて日々進んでいる実感がある

ーー中小企業ではまず親族間の事業承継を検討される方も多いですね。島田社長は実際にお父様からの引継ぎを経験されて、どのような課題がありましたか?

島田社長
私自身が企業経営の経験がないまま代表に就任したため、多くは父のやり方を踏襲していました。私が後を継いでからは、これまで曖昧だった組織体制を見直したり、企業と会員のビジネスマッチングの仕組みを体系化したりといった新たな取り組みにも着手しています。

ただ小さな組織でニッチな業界だからこそロールモデルや相談相手がいなかったこともあり、常に手探り状態で経営をすることへの不安感はずっとありましたね。

一時的に外部の専門家の力を借りることもありましたが、限られた人員で日々の業務と並行しながら新規施策や中長期的な戦略を考えることは難しいです。経営状況についても数字を把握した後に何をどう振り返ったらいいのか、具体的にどこに原因があったのかもきちんと把握できないままでした。

ーーここからはNYCへの事業承継後に行った取り組みについて伺います。実際に、どのような段取りを経て経営支援を行っているのでしょうか?

NYC シニアアソシエイト/弁護士 鈴木

NYC 鈴木
初めに島田社長と従業員の方々へのヒアリングを行い、次に中長期的な経営計画を立てました。会員数や事業規模といった数字面の目標だけでなく、ビジネス会計人クラブとしてこれからどのような立ち位置で、どんな価値を提供するか、将来像を明確にすることで現状の課題も見えてきます。初期的にはこれまで抱えていた課題を洗い出し、順に解消することを優先していきました。

まずは新規入会促進と組織の活性化を取り組むべき課題として掲げ、人材採用にも着手しました。NYC側でエージェントの選定や求人票の作成、面接のセッティングを行い、島田社長へ情報共有しながら面接へご参加いただくことでスピード感を持って進めることができたと感じています。結果的に東京事務局・大阪事務局で合わせて2名の新規採用を実現しました。

入社後もNYCメンバーが営業資料やセールスのフォローアップを行い、業界未経験の方でもスムーズにキャッチアップを行いご活躍いただけるようサポートさせていただきました。中小企業では人材課題を自覚しつつもなかなか手が回らないというお声も多いですが、NYCの持つ知見や人材ネットワークを活用することで大きな改善が見込めます。

島田社長
東京事務局だけでも200名以上の会員様がいらっしゃる中で、定例会や研修会、交流会など多いと月5本ほどの企画を並行して進めています。これらの通常業務に加えて会員様と顔を合わせて接する機会を持つことが徐々に難しくなっていると感じていました。

ただ新規入会いただく方には既存会員様からのご紹介も多く、また中長期的な事業成長を考えると人材採用は必須でした。組織体制の変更にあたっては人を増やすだけでなく既存体制から脱却する必要もあり、一筋縄ではいかない部分もありましたが、NYCの皆さんと都度相談し連携を取りながら改革を進めてまいりました。

現在は新しくご入社いただいた方が中心となって大阪事務局を運営していますが、その方のスキルや人脈を活かしたビジネスマッチングの拡大や新規事業の立ち上げ、拠点の増設に向けた取り組みなど、将来を見据えた動きが増えています。

父と経営と共にしていた頃は「こうなったらいいな」という未来の話はしても、あくまで願望で、具体性のある目標ではありませんでした。父も私も経験と感覚に頼って経営判断をしていた部分も大きかったので、今はNYCとしっかり現状を把握し、大きなビジョンに向かって日々進んでいる実感があります。

ーー島田社長がお持ちだった会議体の運営や経営管理への課題感は、NYCへの事業承継後どのように改善されましたか?

島田社長
経営管理については、そもそも月次決算で数字を把握することはあっても分析や改善にまで至ることができていませんでした。ひとりで悩みながら経営判断をしていたところから、何でも相談できて的確なアドバイスをもらえる相手がいるということに頼もしさを感じます。

ただ、当初は会議や打ち合わせが増えることへの負担も少なからずありました。数値や進捗の管理も事前に行わなければならず、ウェブミーティングも不慣れだったので、正直なところ戸惑いもありましたよ。チャットワークやスラックなどのITツールも導入し、大阪事務局とのコミュニケーションの形も変わってきました。

事業承継を行った当初は新型コロナウイルスが流行しており、経営者の立場としても、世の中のムードとしても非常に閉塞感が強かった時期でした。これまでのやり方を変えて新しい風を取り入れていかなければ、事業成長を実現することはできません。負担感よりもこれまでの課題を乗り越えていこうというポジティブな気持ちの方が強かったですね。

NYC 加藤
経営管理はビジネス会計人クラブの顧問税理士の先生とも相談しながら、見直しを進めました。適切な形とタイミングで数値を把握できれば先の見通しが立ちやすくなり、それにより何を補強しどう改善するか策を講じることができます。

経営管理に限ったことではありませんが、数値やデータを集める・見るだけでなく、効果的な施策に反映し経営判断や意思決定に活かすことが日々の経営においては必要不可欠です。私たちは中小企業専門の投資会社として、現場の方々と同じ目線に立って事業成長の土台を作っていくことにこだわりを持っています。

また、自己勘定投資で外部に株主がいないからこそ、投資先企業の意向を反映した柔軟な支援計画をご提案でき、よりよい形での事業承継を実現できると考えています。

経営者は50代になったら事業承継の検討を。新しい風を取り入れ、会社を次のステージへ

ーーお父様から事業を引き継がれた立場として、同じように経営や事業成長に課題感をもっていらっしゃる経営者の方へ、アドバイスをいただけますでしょうか。

島田社長
親族から引継ぎを受けた後継社長という立場は、その立場ならではの孤独と隣り合わせだと感じています。私自身の経験を踏まえると、やはり相談相手がいないこと、ロールモデルがいないことへの不安が大きかったです。また、身内であったり従業員が後継社長になる場合でも、先代のやり方や人柄と比較されたりといった悩みを持つ方もいらっしゃるかもしれません。

NYCへ事業承継を行ったことで同じ目線と責任感を持って経営に取り組んでくれる「頼れる右腕」ができたことへの安心感がありますね。外部からの情報も無駄なくキャッチアップできますし、必要な専門家とも繋いでいただけます。

また、NYCグループ企業間での交流もあるため、同じように悩みを抱え責任を背負って事業に向き合ってらっしゃる経営者の方々との繋がりができたことも非常に大きな収穫でした。

NYCグループ企業経営合宿での様子

ーー後継者不在という課題はありつつも、いつ、どのように進めるか決め手がないと感じる経営者様は多いです。ご自身の経験を踏まえて、投資会社へ事業を引き継ぐことのメリットをどう感じていらっしゃいますか?

島田社長
自力での事業成長に課題を持っている経営者の方々に対しては、どこが原因で何をどのように改善したらいいかわからないという手詰まり感があると思います。そのような閉塞感を打破し、新しい風を取り込みチームで課題に向き合っていただけるという点で、投資会社と手を組むという選択肢は非常に有効だと実感しています。

税理士事務所の先生方とも事業承継の相談を受けることがありますが、どうしても日々の業務に追われて後継者問題が後手に回ってしまい、思わぬ事態に陥ってしまったといった声も聞かれます。

自分の経験を踏まえて、私は60代からと言わず、ぜひ50代での事業承継を勧めたいですね。年齢だけですべてを判断することはできませんが、何かあってから動き出すのでは手遅れになってしまうかもしれませんし、あえて決断を後回しにする必要はないのではと感じます。まずは周囲に相談するなり、少しずつでも動き始めてみるのがいいのではないでしょうか。

NYC 鈴木
島田社長が仰っていただいた通り、NYCは業界全体と比較しても年齢層が若く最新の技術やトレンドにも明るいので、新しい風を取り入れて変化をもたらしたいというニーズには非常にマッチすると思います。

また、私たちは投資会社として、経営者様から企業の未来を託され事業や技術、雇用を守り引き継いでいく責任があり、言わば一蓮托生の関係です。この点においてNYCのメンバー全員が並々ならぬ覚悟をもっています。

時には変化のためにご負担をかけてしまうこともありますが、表面的なコミュニケーションや急場しのぎの施策をとることなく、しっかりと経営にコミットし成長を共に形作っていきたいですね。

▼事業承継インタビューは弊社youtubeでもご覧いただけます

NYCへの事業承継をご決断いただいた島田社長と、八王子・町田・あきる野で集団学習塾を運営する株式会社翔栄学院の及川社長に、事業承継の経緯を伺いました。

NYCグループ企業の経営者の皆様にお集まりいただいた、経営者合宿の様子もご覧いただけます。ぜひ併せてご覧ください。

▼事業承継のご相談はホームページよりお問い合わせください

※記載内容は2024年10月・取材当時のものです。
お問い合わせはこちらから https://nycinc.jp/contact/

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集