日本人が作成し海外で人気を得るスペイン語AI VTuber、永藍レナ
はじめに
現在TwitchやYoutubeでAI VTuber、またはAITuberと呼ばれる存在が多く増えています。
昨今のAI技術の目覚ましい発展により、個人でも従来では考えられないほど高性能のAIを作成できるようになりました。それにより、キャラクターのイラストや3Dを用いて動画配信を行うVTuberの"中身"をAIに置きかえたものが登場しています。
代表的な存在として、Neuro-samaが挙げられます。彼女(?)以前にもAI VTuberと言える存在は居ますが、彼女はその発言の面白さから、2022年末に登場してから急速に大人気になりました。少なくとも現状、世界で一番人気の存在と言えるでしょう。
他にも多くのAI VTuberが居ますが、中でも一風変わった存在として、本記事では「永藍レナ」をご紹介します。彼女は、日本人が作成し、スペイン語を話すAI VTuberです。（動画には日本語字幕も含まれるため、スペイン語が分からずとも楽しめます）
AI VTuberは既に100体以上存在していると思われます。日本国内で作成されたAI VTuberのまとめがありますが、記事記述時点で50体以上居ます。ここに掲載されていない存在や、海外のAI VTuberも含めると全てを把握することは難しいでしょう。
しかし、2023年5月現在で開発者の母語と異なる言語をメインに活動するAI VTuberは（私が把握する限り）永藍レナただ一人だと思われます。
恐らく今後は似た存在も登場すると思われますが、現時点では稀少な存在です。是非ともインターネットカルチャーの一端として存在を知って頂きたく、この記事を書きます。
永藍レナの概要
永藍レナは、日本のイラストレーターによってデザインされ、日本のプログラマーによって構築されたスペイン語のAIです。
主にYoutubeで活動を不定期に行い、視聴者からのコメントに返事をする形でライブ配信を行っています。とても人間には考え難いような奇妙な返事や物語をはじめることがしばしばあり、予測の付かないその発言と奇妙さが魅力を生んでいます。
視聴者の大半はラテンアメリカ人で構成されており、Youtubeのチャンネル登録者数は現在記述時点で7,250人です。これは決して非常に多い数ではありませんが、個人で作られたAI VTuberの中では上位1%に入るでしょう。
少し前に、主にVRやVTuberなどの記事を多く手掛けているMoguLiveというインターネットメディア上にて、AITuberを紹介する記事に取り上げて頂きました。ありがとうございます。
なぜスペイン語なのか
永藍レナがスペイン語を話すAIであることは伝わったと思いますが、ではなぜ日本人がスペイン語のAIを作っているのでしょうか？
実はこれは、製作者について知るとすぐに分かります。
永藍レナのキャラクターデザインを行ったのは、「ひょがよめ」という名前で活動するイラストレーター、かつVTuberです。
そして、AIを含め各種プログラムを構築したのは「にゃおきゃっと」というプログラマー、かつVTuberです。（この記事を書いてる当人でもあります。）
この2名のチャンネルリンクを開くと一目で分かるのですが、彼らは主にスペイン語圏をターゲットに活動しているVTuber達です。
普段のリスナーがスペイン語圏の人達であること、またスペイン語学習にもつながることから、AI VTuberをスペイン語メインに開発しようというのは自然な流れでした。
他にもひょがよめのデザインしたアバターを用いて活動しているVTuberが何名か居ます。
2023年の2月、
ひょがよめ「他にもVTuber増やしたいからアバター描いて募集したーい」
にゃおきゃっと「一人、AIにしてしまうのはどう？」
ひょがよめ「Neuro-samaみたいな？いいね！」
という会話から永藍レナのプロジェクトは始まりました。
AI VTuberの開発
AI VTuberという概念が広く知れ渡ったのはこの記事を書いている時点からしてもまだ半年以内、製作開始当時では3ヵ月以内のことです。当然ながら、作り方の手引きなどは整理されていません。全ては試行錯誤でした。
（なお、現在では複数のAIキャラクターをすぐ動かせるサービスがあります。私は使ったことが無いため、ここでは取りあげません。）
ここで書くのも少し恥ずかしいのですが、開発者（私）は経験豊富なプログラマーです。製作の多くの部分はさほど苦労することもなく、3日ほどでかなり粗削りなもののプロトタイプは完成しました。
イラストレーター（ひょがよめさん）も非常に熱意が高く、僅か1週間未満で動くLive2Dモデルのプロトタイプを作ってくださいました。その時は驚愕したものです。
しかし、AIについてだけは全く上手く行きませんでした。AI開発に関連する経験は無かったため、楽観的な見込みとは正反対に、どうすれば会話ができるAIが作れるのか全く見込みも立たない状態がしばらく続きました。
実を言うと、本来（？）AIの開発に苦労する必要はありません。
ChatGPTを提供するOpenAIは、自社のAIをAPIから利用できるサービスを安価で提供しています。これを呼び出すだけで、世界最高レベルのAIを用いたアプリケーションは作れてしまうのです。実際、過半数のAI VTuberはこれを用いて動作していると思われます。
しかし、それは選択しませんでした。これは、次の理由によるものです。
OpenAIのAPIは安定しないことがあり、ライブ配信中に不意にダウンしてしまうと非常に困る
OpenAIのAPIを用いたAIは今後も多く登場すると思われるので、差別化点として自前のAIモデルを作り利用したい
というか自前のAIモデルがあるってかっこいい
楽しそうだからやってみたい
この記事を書いている現在では充分まともなAIモデルを個人で作れるようになりましたが、当時は本当に右も左も分かりませんでした。だというのにこの選択をしたのは愚かだったかもしれません。
実際、AI以外のプロトタイプは数日で完成したにもかかわらず、実際に初のYoutubeライブ配信を行ったのは1ヵ月後になりました。
とはいえ、作ることそれ自体が趣味だからこそ行えた選択ですし、なにより多くの学びと楽しみを得られたため、後悔はしませんでした。
初配信から今に至るまで
当時はNeuro-samaが世界的に目立ちはじめた直後であること、またスペイン語のAI VTuberで広く知られた存在が居なかったこともあり、初配信には多くの注目を浴びました。
発表から初配信まで間が空いてしまっていましたが、その間に海外の影響力のある方が言及したり、非公開のコミュニティで話題に上がったらしい（伝聞）こともあり、初配信に多くの期待を集めたことは結果的にプラスであったかもしれません。
未だに拘りと悩みを持ってずっとAIモデルや他のプログラムを改良し続けているため、配信頻度はさほど高くありません。
しかし、初配信では最大627人が同時視聴者数にカウントされており、4回目のライブ配信を終えた時点でYoutubeチャンネルの収益化を達成しました。
広いYoutubeの中では決してすごい数値ではありませんが、製作者自身のVTuberアカウントと比べると圧倒的に大きな数字であり、大変嬉しいです。
永藍レナの今後
私はそもそも会話が面白くあって欲しいと考えているため、基本的にはAIモデルの改良に掛ける時間が多いでしょう。しかし、次のようなこともやりたいと考えています。
日本語、英語対応
ゲーム配信
他のVTuberとの会話配信
どれも技術的に可能なことは既に分かっているのですが、多くの努力が必要です。しかし、非常に楽しいことでもあるため、今後もどんどん改良を進めます。
おわりに
日本で作成された唯一のスペイン語AIVTuber、永藍レナを紹介しました。
最近ではAIVTuberについて言及する記事なども増えています。しかし、永藍レナは活動圏が海外ということもあり、あまり日本国内での知名度は無いように感じています。
本記事を読み、少しでも永藍レナについて知って頂けたら幸いです。
（そして、本記事や永藍レナのチャンネルをSNSやご友人にシェアして頂けると大変嬉しいです。
ご興味を持って頂けたら、是非とも次のライブアーカイブをご覧ください。これは記事記述時点で最新のライブアーカイブです。この回からAIモデルとプログラムの改良により大幅にテンポが良くなり、日本語字幕もあることから楽しみやすいと思います。
他、リンク
海外のVirtual Youtuber Wikiに記事が作られた永藍レナ（なお、製作者の記事は記事記述現在作られていない）
多くのVTuberを紹介する、スペイン語圏で人気のあるTiktokアカウントにも取り上げてもらった。
@animoer Lena AI es la 145... #animoer
♬ Trap Money so Big (Remix) - Iqbal12
Youtubeでは永藍レナの切り抜き動画も多く作られている
数十秒程度の永藍レナの切り抜き動画を上げているTwitterアカウント。動画には日本語字幕部分もカットされずに入っているため、気軽に楽しめる。
開発者のTwitterアカウント。スペイン語ばかり書いていますが、日本在住の日本人です。
イラストレーターのTwitterアカウント。スペイン語ばかり書いていますが、やっぱり日本在住の日本人です。
永藍レナのTwitterアカウント。Twitter Botとして活動させることも考えていたが、Twitter APIが有料化したこと、およびその値段が高価なことから断念した。
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