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ジブリアニメ感想「崖の上のポニョ 」~ポニョは死神だったのか?~

公開 2008年
監督 宮崎駿

これはもうポニョかわいい~
いやされた~
以上。で基本的にはイイと思いますが。

そこは宮崎駿さん作品。
これもなかなかそう一筋縄ではないですよ。
裏読み、深読み、いろいろできますが
ネット上ではある都市伝説の話題でもちきりです。
興味ある方はググってみてください。いろいろ出てきます。
細かく紹介してたら長くなるので、さわりだけ。
津波水没以降、後半は死後の世界を描いている。
ポニョの本名「ブリュンヒルデ」は北欧神話では死者の魂を天界へと導く存在。
ポニョは死者の魂を迎えに来た死神だった!
宮崎駿監督がついにこの世を見限った作品である・・・なんて。

ポニョ3

僕の解釈は───
都市伝説は都市伝説です。

冒頭、ポニョが家出して人間の港にやってくるとそこはゴミだらけの海です。
ヘドロとゴミの中を泳ぎ、ジャムの空き瓶にポコッとはまってしまう。
子供なら爆笑のシーンです。宮崎さんもそれでいいと思って書いているのでしょう。
しかし大人は笑えません。笑っても苦笑いです。
かわいいいアニメに乗せて、のっけから辛辣な社会風刺です。
ポニョは父フジモトによって海に連れ戻されるのですが。
このフジモト。例によって元人間だったけど、人間に絶望して人間を辞め魔法使いになり、何やら怪しげな薬を精製して人間界の転覆を狙っているという設定。
ここまでは
「風の谷のナウシカ」以来一貫して人間のエゴと自然破壊にたいしての風刺と警鐘を描いている、ザ・宮崎駿ブシです。

ポニョ4

もう一つネット上で物議をかもしだしているのが
5歳の宗助が母親の事をリサ。父親をコウイチと呼び捨てにしているのはなぜか?
という問題です。
これは現代核家族化への風刺ではないでしょうか。
父は船乗りで、ほとんど家に帰ってこない。母リサも、老人介護の仕事で忙しそう。
家族でありながら、家族でいることよりも個々の生き方を尊重する。
リサとコウイチの夫婦観。家族観。は現代日本の一般家庭の平均モデルといっていいのではないでしょうか。
そんな家の子だからこそ宗助は母をリサ。父をコウイチ。と呼ぶ。
親というより一人の人間として。
ポニョが人間の女の子として二度目に宗助のもとにやってきたとき
リサがうちに迎え入れてごちそうに出したのがチキンラーメンというところも
苦笑せずにはいられません・・・。

ポニョ2


その夜、リサは老人ホームの人たちが心配と宗助とポニョを家に残し出ていき、
翌朝、宗助が起きると床下浸水です。
(崖の上の宗助の家が床下浸水だという事はその下の家はほとんど水没ということ)
宗助は大変だと思い、リサの安否を確認するためおもちゃのボートをポニョの魔法で大きくして、老人ホームに向かいます。
ここからが問題の都市伝説の部分です。
ここですでに宗助は死んでいる。その後に出会う人たちもすべて・・
この後のシーンはすべて死後の世界という解釈です。
途中ボートで避難する町の人たちと出会うのですが、町が津波に飲み込まれているという割にはみんな呑気で悲壮感なく、日傘さしてピクニック気分の夫婦がいたり・・・。
暗いトンネルを越えるシーンなど・・なるほど信憑性もかなりあります。

ポニョ1


確かに近年の駿さんは、明らかに死を意識している感じはします。
年齢的にも体調的にも切実に感じるものがあるのでしょう。
それが作品に表れている感じはします。
大人たちがそういう深読みすることをあえて狙って仕掛けているという気もします。
ただ・・
吾郎さんの「ゲド戦記」の試写会が行われているときに、駿さんはこれを作っていたのですが。
吾郎さんの「ゲド戦記」がほとんど子供を無視している作風なのに対して
当てつけのようにポニョの絵をかきながらブツブツ
「子供がわかればいい・・・子どもがわからなければ意味がないんだよ・・」
と言っているところ、ドキュメンタリー番組で観てしまいましたから。
駿さんの作品は子供目線でそのまま素直に受け取ればいいのだと思います。

そして最後は・・・・

駿さんもいろんな風刺や警鐘を描いてきましたけど
まだまだ人間捨てたもんじゃないよ・・と。
若い君たちがこれからどう生きるかによってはね・・
と、締めくくっているのではないでしょうか。

初稿 2018・10・31

あらすじ
海辺の小さな町。崖の上の一軒家に住む5歳の少年・宗介は、ある日、クラゲに乗って家出したさかなの子・ポニョと出会う。アタマをジャムの瓶に突っ込んで困っていたところを、宗介に助けてもらったのだ。
宗介のことを好きになるポニョ。宗介もポニョを好きになる。「ぼくが守ってあげるからね」
しかし、かつて人間を辞め、海の住人となった父・フジモトによって、ポニョは海の中へと連れ戻されてしまう。人間になりたい!ポニョは、妹たちの力を借りて父の魔法を盗み出し、再び宗介のいる人間の世界を目指す。危険な力を持つ生命の水がまき散らされた。海はふくれあがり、嵐が巻き起こり、妹たちは巨大な 水魚に変身して、宗介のいる崖へ、大津波となって押し寄せる。海の世界の混乱は、宗介たちが暮らす町をまるごと飲み込み、海の中へと沈めてしまう―。
少年と少女、愛と責任、海と生命。神経症と不安の時代に、宮崎駿がためらわずに描く、母と子の物語。(アマゾン商品より)