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NEEDY GIRL OVERDOSEのいろんな話(ネタバレ無し)

・NEEDY GIRL OVERDOSE

  1月に発売ししたニディガが、めでたい事にたくさんの方から愛される作品となりました。2週間で20万本、嬉しいね!
 諸々の数字が大きくなるに連れ、やることも増えてきまして、発売前より忙しくなるという嬉しい悲鳴を上げている状況です。仕事があるのは良いことですね。これからも、超てんちゃんとあめちゃんのために頑張ろうと思います。いや、もう「超てんさん」だな……。

 というわけで、ネタバレ無しで、製作にまつわるお話とか、ちょっとした裏話を書いていったりします。オタクは長文で作品の話をするのが大好き!

 ↑僕が書く細かくて長ったらしい話より、有能な編集さんが丁寧にまとめた発売前インタビューを読んだほうが、百倍わかりやすいですけどね!

↑100万本達成時のインタビュー。こちらもネタバレ無しでいろいろ書いてあるので読んでみてね。


・企画とか

 今作は、何を隠そう僕が企画したゲームです。
「企画」って具体的になに? って方も少なくないでしょう。僕も、なんかアニメのOPとかでクレジットされてる役職くらいのイメージでした。

 ざっくり言うと「始まりの人」であり、「こんな作品をつくりたい!」って資料を製作し、それを偉い人に見せてオッケーをもらう役割です。自分のやりたいことを大人に見せ、これはイケると思わせるまで粘ってお金を用意させる、夢見がちな子供の仕事です。

 僕も、「美少女ゲームが作りてぇ~」という気持ちを漠然と抱えて生きてきたので、インディーゲームの関係者(今作のプロデューサー・斉藤さん)と話す機会に、突然「これを作りたい!!!!」ってパワポを突きつけたんです。
 はっきり言って、クオリティはゴミもいいところです。僕はレイアウトのセンスとか全くないからね。しかし、情熱とか勢いを買ってくれたのでしょう。こんなボケナスの企画を拾って、それに時間も金額も全力投球してくれたプロデューサーは狂人です。結果的に、売上として恩返しできたわけですけど、コケたら一番痛いのは僕でなくプロデューサーですから。

 軽く中身を話しますと、「レトロな美少女ゲームをカッコいい画面で、現代のインターネットを絡めて作りたい!!!」みたいなことを数ページ書いて、「僕は、こんな感じのヒロインが好きだ!!!」と長々書きました。企画書よりも怪文書寄りだと思いますが、前触れなく企画書を渡されたら、その時点で無条件に面白いから案外乗ってくるんじゃないかと期待を込めて。

 僕の幸運はなんといっても良き仲間に恵まれたことです。
 企画書って、とうぜん面白さや情熱も必要ですけど、なにより「これはお金を出す価値がある」と認識されないといけない。具体的に書くといやらしいですが、「確実にお金を回収できて利益にもなる可能性が高い」と判断されないかぎり、半端な状態で、半端な体勢で進んでも絶対に失敗するからです。
 自分ひとりが自分の作品で挫折する分には構いませんが、大勢を巻き込んで失敗した時の絶望感はマジでヤバいぞ。

 なので、「なぜ人気がでるか?」といった疑問のアンサーとして、キャラクターデザインをお久しぶりさん、音楽担当をAiobahnにお願いすると話したんです。もちろん、シナリオは自分で、と。僕がやりたいゲームを作るのだから、話は僕が担当するしか考えきれなかったので。

 お久しぶりさんとは、自分の著書でイラストを担当してもらったし、Aiobahnとはシンプルに友達。この豪華メンバーが実現するのであれば、どう考えても注目はされる筈で、注目されたからには、内容が伴えば成功間違いない……みたいなことを図と話術で説得するのですね。結果的に言えば、お二人とも喜んで協力してくれました。アートワーク、BGMのクオリティに関しては頭が上がらない。

 それから、ドット絵担当として、自分が好きだったえっちなゲームを製作したねんないさんに声掛けしました。完全に初対面でしたので(相互フォローですらなかった)、こんなクソガキの話を聞いてくれて優しすぎる……。

 後は、プロデューサーがエンジニアなどを連行し、みんなで何度も何度も打ち合わせしながら、杜撰な企画書をどうにか形にしていきました。

・最高に顔が良い少女

 さて、企画が動き始めたとて、まだ影も形もないため、完成形が自分の頭の中にしかない。まずは、全員のイメージを一致させるため、お久しぶりさんにキャラクターデザインをお願いします。
 お久しぶりさんは、今の若手絵師の中でも特に「最高に顔の良い女」を描くイラストレーターだと信じていたので、作品の特徴を説明し、超てんちゃんはこんな雰囲気で! って、お願いします。


 それから、数種類のデザイン案が登場したわけですが、僕の妄言が基なのに、一瞬でこんな凄すぎるラフが届いて、もう仰天ですよ。ここから自分のイメージする「あめちゃん」に近づけるため、泣く泣く案を切り捨てていかなければならないのだから、楽しくも切ない打ち合わせを重ねます。ボツになったあめちゃんが消えていくたび怨嗟の声が脳内に響く。

 何度もnote内で話しておりますが、僕は坂口安吾が書く、「性格が最悪な代わりに、それが許されるくらい最高に顔が良い存在」が大好きで、最近のアニメで言えば甘瓜みるき(※当時は登場していないキャラなので、彼女の出現は「延期しているうちに負けた!」と思いましたね)のような、「自分のかわいさのために生きる少女」を信仰しているのです。
 あまりの美しさに人間の尺度で考えきれない思考をしている上位存在を前にしている感覚が好きなのかもしれません。「かわいい」を極めた偶像としてあることで、信者たちを幸福にする存在との大きさに惹かれるのでしょう。僕は、自分の信仰先を探しているんだなぁ。

 そういった考えが第一にあったので、最初に自分が目指したのは、「とにかく超てんちゃんの顔の良さを前提とした世界」を構築することでした。ゲーム内のオタクもプレイヤーも超てんちゃんを好きになる理由として、「超絶にかわいい」を用意したかったのです。そんな超てんちゃんのかわいさは、Steamを通して世界中に届くようになりました。


・真善美

 コンセプトは固まってきたのだから、次は肝心のゲーム内容ですよね。

しん‐ぜん‐び【真善美】 の解説
認識上の真と、倫理上の善と、審美上の美。人間の理想としての普遍妥当な価値をいう。 

 上の記事でも書きましたが、ゲーム内容にも「真善美」の概念が適用されるとしたら、真は「ゲームとしての操作性」、善は「スッキリする綺麗なストーリー」、美は「操作感でも正しいシナリオでもない部分の面白さ」にあると考え、ちゃんとしたゲームとしての面白さ……真は大手メーカーのもっと大型作品の役目だと思うし、善のわかりやすいストーリー性に興味がないため、必然的に美を目指していくものだと感じました。
 美……製作陣の個性をなにより優先した作品が許されるのも、Steamとインディーゲームという低価格でクリエイター性を重視した土壌ならではだと認識しておりますので。

 上の僕のインタビューでも話しましたが、北野武監督作品こそ、わかりやすく「美」に全振りした日本の映画だと思います。これ以上、話すと脱線していくので、とにかく「ソナチネ」を観てくれ!

 とは言え、それについて口に出して伝えはしなかったものの、製作陣には自ずと似たようなイメージが共有されていたようで、「初見でカッコいいヴェイパーウェイヴなゲーム画面」「OSを再現するという無茶な操作性」「デスクトップを基準にして進むシナリオ」などが決められていく。

 ヴェイパーウェイヴ要素については、僕がスタプリのED大好きだったことも大きい。ニチアサは、いつだってオタクの予想の斜め上をいきつつ、最高の映像を届けてくれる。

 つまりは、「たくさんの予算と人員で誰もが楽しめるゲームを作る」のは、もっとちゃんとした企業がやることであって、少数精鋭の僕らは、どうあっても「前例のないゲームシステムを構築し、ギミックをつぎこんだ芸術性を見せつけて感動させる」ことしか勝ち筋がなかったのだ。

・美少女ゲームへの意識

 僕は美少女ゲームが大好きでしたから、その上でSteamには大先輩の「ドキドキ文芸部」が君臨しており、例にもれず僕も文芸部のみんなのことが好きで好きで堪らない。
 同じSteamで美少女ゲームといったジャンルでリリースするのだから、ドキドキ文芸部と違う方向性を出せなければ何の意味もない。過去の名作へのリスペクトはあっても、そのせいで名作の下位互換になったら本末転倒だから。
 記事でも書きましたけど、もう苦しみの連続ですよ。なにがあったら、「ドキドキ文芸部」含めた過去の名作美少女ゲームとの違いを出した上で、現代で創作する意味を表現できるか。狂いそうになりながらも必死に試行錯誤と打ち合わせを行い、スタッフに徹夜で「ドキドキ文芸部」をプレイしてもらったりもしながら、これまで生きてきた僕の感性の全てをまとめていく。

 lainにも、その元ネタであるR.D.レインにも強く影響を受けています。

 思うに、創作で最も挫ける場面って、このタイミングじゃないかな。「これ過去の名作を遊んだほう/読んだほうが早くね?」って気づく。一瞬でも、そう感じたのであれば恐らくその通りで、それからまたアイディアを練り直し、そのうち無理だと悟って断念する……。このプロジェクトは、当たり前ですが僕が諦めたら終わりですので、そのプレッシャーとの戦いでしたね。
 これは遊んでいただいた皆さんにしか評価できないことですが、個人的には現代だからこその美少女ゲームの可能性を捻り出せたと満足しています。それを最大のクオリティで出力した製作陣にも満点です。

 ↑僕の美少女ゲームへの想いは、こちらのまとめでイヤというほど書いているので、興味あったら読んでみてね。

・延期と発売後、これから

 noteを追ってくれている方はご存知のとおり、このゲームは長く延期しており、延期中の僕のメンタルはマジでヤバかった。

 ↑こんな感じです。いや、期待の裏返しなのでユーザーは一切悪くないんですけど。話題にされなくなった方が真の終焉ですしね。この時に感じた「インターネット全体が敵(自分を責めている)に見える感覚」のおかげで、ゲーム内にあるルートを実装できた(プレイ済みの方にはすぐわかると思う)ので、強い負荷は創作への昇華のチャンスでもあることがわかるね。もう、なにを作るにしても二度と延期したくない……。

 世の中の明らかに未完成な状態で発売して叩かれるゲームの、製作側の気持ちがわかるようになりましたね。「あぁ、アレはプロデューサーやスタッフの体力が尽きて、損切りを選択された世界線の自分だ……」って見え方するようになっちゃった。
 プロデューサー、最後までついてきてくれたスタッフ、本当にありがとう……。気づかないうちに、こっそり僕のメンタルも支えてくれていたのでしょうね。みなさんのおかげです。


 長々と、僕の話を読んでくれてありがとうございます。
 プロデューサーから、次回作はやりたいか? と訊かれた際に、「今は●●●に興味があります」と答えたら、「それは流石にウチじゃ扱えない(笑)」と却下されました!
 落ち着いたらいろいろ挑戦したいですし、ここまで上り詰めた(まだ半月だけど)超てんちゃんの魅力を、どんどん世界中に伝えるために今作もどんどん盛り上げなければなりません。嬉しいことに、いっぱいお話はきておりますので。超てんさんは人気者やね。

 また落ち着いたら、次のために数ヶ月は読書や動画視聴についやして、時が来たら、ゆっくりその時に興味ある分野の作品を企画するかもしれません。 †昇天†

 それにしても、AiobahnのセンスもKOTOKOさんの歌唱力も凄いなぁ。MV作っている時は「喜」しかなかったです。作詞もっとやりたいな。延期中は怖くて聴けなかったですけど、今なら遠慮なく超てんちゃんのパラパラを眺められるよ……。

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