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STAND BY KNEE ヒザえもん

2021年5月31日からClubhouseで朗読リレー(#膝枕リレー)が続いている短編小説「
膝枕」(通称「正調膝枕」)の派生作品となっております。


今回は前文自作でほかの人の美しい文章のパクリはありません。だからわかりづらか
ったり誤字などもたくさんンあると思います。レイアウトももう見えているときの感
覚がなくなってしまっているので読みにくかったりもすると思いますのでご容赦くだ
さいませ。

「文が変」とか「よくわからん」などありましたら、こっそり指摘してください。今
後の勉強にさせていただきます。


続編は考えていなかったのですが、映画も見てしまったし、またくだらないことを思
いついてしまったので、皆さんの愛と寛容の上に胡坐をかかせていただきました。

無駄に広がる自然薯トリビア、よかったら日常生活で披露・・する機会なんかないか
(獏)






二次創作noteまとめは短編小説「膝枕」と派生作品を、朗読リレーの経緯、膝番号、
Hizapedia(膝語辞典)などの舞台裏noteまとめは「膝枕リレー」楽屋をどうぞ。

短編小説「膝枕」と派生作品|脚本家・今井雅子(clubhouse朗読 #膝枕リレー)|n
ote
5月31日からClubhouseで朗読リレー(#膝枕リレー)が続いている短編小説「膝枕」
の正調、アレンジ、外伝まとめ。
note.com






STAND BY KNEE ヒザえもん


片付いた部屋の中、段ボール箱の山に囲まれて、ヒサコは途方に暮れていた。明日は
いよいよ結婚式。明るく楽しい未来しか考えられないはずの今、自分は何をしている
のだろう。
「これがマリッジブルー?」

ちょっと頼りないけど、優しくて素敵な彼に巡り合い、相思相愛。結婚が決まるまで
の幸せな日々はジェットコースターの様だった。

それが、のどに小骨が引っ掛かったような気持ちになったのはいつからだろうか。

いや、ヒサコはちゃんとわかっていた。


幸せいっぱいの中、二人で結婚式の準備を始めた。お互い誰を呼ぶかという話になっ
た時、彼が言った。。
「オレはあんまり友達いないけど、小学校の時からのくされ縁を何人か呼びたいんだ
。技術部のタケシって知ってる?あいつもその一人なんだ。」
「ええ?!タケシさんと友達なの?!」

タケシといえば、技術部門のエース。秘書課でも誰が落とすかと常に話題の人である
。イケメンではないが、おおらかで暖かいリーダー気質。実力ナンバーワンの出世頭
だ。

「うん、今はああだけど、小学生の頃はガキ大将で、オレなんかいつもいじめられて
た。」
苦笑しながら彼は続けた。
「それがさ、中学に入っていきなり、{ゲームおもしれえよな}って言い始めたかと思
うと、ゲームの構造とかなんか勉強し始めちゃって・・。中三の時にはもう成績学年
トップクラスになってた。」
ヒサコはあっけにとられる。
「タケシさんっていじめっ子だったんだ。」


それから二人はお互い式に呼ぶ親せきや友人のリストを交換した。ヒサコは高校や大
学の時の女友達を何人かリストアップした。そして、彼のほうの友人リストを見てヒ
サコは腰を抜かした。

「女性に声をかけるのはどうしようかと思ったんだけど、一人はタケシの妹だし、も
う一人もグループのうち一人だけ仲間はずれにはできないから・・。それに彼女は仲
間でそんなんじゃないから心配しないでね。

その女性というのは、おしゃれ女子なら知らない人はまずいない、源静香。お風呂ス
キがこうじて入浴剤から始まり、オリジナルコスメまで展開しているカリスマビュー
ティーアドバイザー。本人の飾らないキュートさも相まって、今を時めく美容界のト
ップリーダーだ。
そしてもう一人の女性、タケシの妹。彼女は技術者になってしまったタケシに代わっ
て実家の八百屋を継いだ。少女漫画家を目指していたが、作品は佳作どまりで鳴かず
飛ばず。この際とばかり家業を継いだところ本領発揮。実家を町の八百屋さんから「
生産者の顔が見えるオーガニック野菜」を売りにした、健康志向のおしゃれな店に一
挙に押し上げた。2階では売っている野菜を使ったレストランも経営。得意のイラス
トを使った野菜のキャラクターグッズもかわいいと人気である。
そして後二人の男性。一人はキャリア官僚出木杉君。もう一人は何と骨川グループの
御曹子。勉強はあまり得意ではなかったようだが、起点とアイデア力でグループの推
進力となっている。

早まったか自分!?ロマンスの神様に頼んで友達の友達に期待すべきだったか。性格良
ければいい、そんなの嘘だと思いませんか?!


それ以降、結婚式に向かってバク上がりだったヒサコの気持ちにもやがかかった。
「本当にこのまま結婚してしまってもいいのだろうか。」


そんな思考のループにはまっていた時、、台所の引き出しがスッと開き、ガタガタと
音がした。引っ越し準備は終わっているので引き出しにはもう何も入っていないはず
だ。
恐怖にひきつったヒサコが振り向くと、引き出しから白い膝がのぞいていた。膝が折
りたたまっているのでうまく引き出しから出てこられず、うごうごしている。

「ヒザえもん!!」

ヒサコは駆け寄ると、ショートパンツをはいて正座した女の腰から下を抱き上げ、床
に降ろしてやった。

「ヒサコちゃん、お久しぶり!」


ヒザえもんは22世紀から来た膝枕型ロボット。ある日彼の家に行ったらどういうわけ
かわからないが、とにかくいたのである。ヒサコはすぐに仲良くなり、彼と3人で楽
しい時間を過ごしていた。・・・はずなのに、今の今まで存在をすっかり忘れていた

なぜだろう。いぶかしげな顔をしているヒサコにヒザえもんが説明を始めた。

「ボクは本当は許可なく時空を移動してはいけないんだ。だから前回22世紀に帰る時
、二人の記憶を消していったのさ。」
「じゃあ、今回はどうしたの?」
「明日はいよいよ結婚式なのに、ヒサコちゃん、全然うれしそうじゃないじゃない。
心配になって思わず来ちゃったよ。ボクでよかったら話を聞かせて。」
ヒサコの目からジワリと涙がにじんだ。


ヒサコの話を聞き終えるとヒザえもんが言った。
「そうだよね。彼らはみんな優秀だもんね。迷う気持ちもわかるよ。でもこれを見て
欲しいんだ。実はボク、これをヒサコちゃんに見せたくてここに来たんだ。

そう言うと、ヒザえもんのお腹の部分から光が壁に投影され、昔の8ミリビデオのよ
うな映像が映し出された。
彼の存在を初めて意識した社内旅行の時のようだ。

皆と離れて山奥に入っていく彼。自然薯センサーで芋の蔓を見つけたが、石や根や他
の蔓と絡まってなかなか根元にたどり着けない。
ようやく掘り始めたが掘っても掘っても芋にたどり着かない。やっと見つけて掘り出
そうとしたが、深すぎて途中で折れてしまう。呆然とする彼。

それから急斜面に移動する。滑落しそうになりながらも芋を掘る。平地と違って斜面
に沿って掘り出せるから平地よりは掘りやすい。それでも障害物で芋はあちこち曲が
ったりわかれたりしているのでなかなか全体を掘り出すことができない。画面には涙
目になりながら必死で芋を掘り進める彼の姿が映っていた。

そう言えば、一日目に行方不明になった社員がいたとかいなかったとか。すぐに見つ
かったのであまり問題にはならなかった。

「・・・あれは彼だったんだ・・・」

ヒサコの目は涙でにじみ、画面の中の彼の姿が歪んで見えた。

「自然薯センサーは蔓を見つけるためのアイテムだけど、やってくれるのはそこまで
。実際に掘るのは人の手なんだよ」
ヒザえもんが続ける。
「彼は本当にヒサコちゃんが大好きだから、ヒサコちゃんに喜んでもらおうと必死で
山に上ったんだ。体力も運動神経もないのにね。」

ヒサコはあの時の自然薯の味を思い出した。店頭で売っているものとは全然違う。香
りも味も濃い。粘りも強く、そのままでは食べられなかったので大根おろしと混ぜて
食べたのを思い出した。


「小学校のころからこんなに長い間、どうしてみんなが彼と友達だったと思う?
ヒサコが涙にぬれた顔を上げる
能力は高くないけど、できないなりにまっすぐに立ち向かっていく所、みんな認めて
いたんだよね。危なっかしいところもあるけど、頑張る彼を応援していたんだと思う
よ。そして20年。彼は今日まであんな素敵な人たちに見守られてきたんだ。あんな素
敵な人たちが友達と認めている彼はやっぱり素敵な人なんだ。」

ヒサコはまっすぐに顔を上げた
「さあ、ヒサコちゃん、時間がないよ。早く準備して。」
「ありがとう、ヒザえもん。」
ヒサコの心の中は恥ずかしそうに微笑む彼の顔でいっぱいになっていた。
「私たち、絶対に幸せになれるよね!!」

ヒサコは勢いよく立ち上がった。


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