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キリン柄の男


「すき、すき、すき!」


わたしがいままでの人生で一番好きだった男のこと。彼はネットで知り合った、コスプレイヤー。多趣味なひとだったから、ほかにもいろんな趣味があった。

どうして別れたか先に書いてしまうと、わたしが彼との先が見えなくて浮気して、名前を間違えるというべたなことをしてしまい(男女逆だけど)名前間違えるなんて重症だ、別れよう、と思って別れた。

まだ田舎にいたころ、あるSNSで彼と知り合ってやりとりをしていたのだけど、上京してすぐに初めて会った。彼はホールケーキを持って「上京おめでとう」って来てくれた。ジャージにタンクトップを着ていて、口と舌にはピアス。(わたしも当時舌ピアス3つくらいあいていた)バンドマンではない。

そこから彼とはセフレになったのだけど、セフレにしては結構な頻度で会っていたと思うし、彼は毎回「すき!」って言いながらわたしを齧ってきた。これがまためちゃくちゃ跡が残るくらい。連絡もマメだった。

わたしも決まったひとがいなくてほかの人とも会っていたんだけれど、だんだんそれもわずらわしくなってきて、彼との時間がもっと欲しくなったし、彼が一番よくなってしまった。だから、ふたりでご飯をたべにいったときに「わたしを彼女にしてよ」って言って付き合うことになった。

彼と一緒にいると、特別な気分になった。彼は変わっていたし、別に特別顔がいいわけでもなかったのだけれど、子供みたいで遊びにかけてはほんとうに上手で、一緒にいるとどんな時でも何をしていても楽しかった。すごく好きだった。

わたしは大きい動物の中ではキリンが一番好きなのだけど、彼はある日美容室へ行って髪の色をキリン柄にしてきた。ほんとうにちゃんとキリン柄だった。

彼の愛情表現はストレートで、最初だけかと思っていたけど付き合っていた3年間変わらなかった。わたしは、彼と一緒にいて「ひとを好きになる」という感覚と「好きなひととセックスを重ねる良さ」を知った。でもそれは彼にちゃんと伝えられていなかったと思う。

そもそもおそらく彼にはほかにも会っている女の子がいたとおもうし、彼は動物好きでいろんな動物を飼っていたのだけど(蛇や亀とか爬虫類)犬を飼うって言い出した時にわたしはプツンと来てしまった。

そのころわたしは付き合うという関係の先を考えなければいけないと思っていたし、人生設計に彼を組み込みたくて、ようは一緒に暮らしたかった。彼の不透明などこか掴めないところを把握したかった。そういうことはふわっと伝えていたけど、ふわっと流されていたのにわたしに向き合わずに、手のかかる犬は飼うのか。と。


今思えば、わたしは子供だったなあ、もっとこうしたらとかは思うけれど、その時はその選択をしたかったわけだし、後悔もしていない。むしろ感謝している。

彼も遊ぶには楽しいけど家庭向きじゃないタイプのダメ男だと気付いたし、いまでもたまに連絡すると返してくれる。結婚したときに報告もした。

彼とのことはわたしの恋愛観に影響しているし、でもいい思い出しかなくてすごく幸せな思い出。


おわり






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