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『ある男』平野啓一郎

👦🏻あらすじ👦🏻
弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。 
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。 
ところがある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に、「大祐」が全くの別人だという衝撃の事実がもたらされる……。 

愛にとって過去とは何か? 幼少期に深い傷を負っても、人は愛にたどりつけるのか? 
「ある男」を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。 

第70回読売文学賞受賞作。キノベス!2019第2位─Amazon説明より



👦🏻感想👦🏻
よく、スピリチュアルなんかで、人は誰しも親を選んで生まれてきた、と聞くが、本書を読めば、それが全くの杞憂であることがわかる。
時に人は出自を選べないからこそ苦しみ、他人の人生に羨望の眼差しを向けずにはいられず、果てはそれさえももし自分であったならという一種の欲望が現実に変わる。
自己を真正面から愛せない事程苦痛な事はない。
それ程己のアイデンティティを受け入れる事は容易くない。
だが無責任にそれを全て背負って生きるべきとも言えない。
誰か、たった一人だけで良い。その人を受け入れられたなら、この世から悲しい出来事は一つなくなる。そして、そこから始まるはずだった負の連鎖もなくなる。

2022年、妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝、清野菜名出演で映画化予定。

こちら2021年の読書メータ―主催のレビュアー大賞の課題本です。

『ある男』平野啓一郎


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