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手を伸ばせばワニに手が届きそうなワニ園 デンマーク/ファルスター島/2019.04


デンマークのハイウェイ、スウェーデンから車でドイツ行きのフェリー乗り場に向かう時。「Crocodile Zoo」という文字とワニの絵が掲げられた看板を目にすることができる。デンマークにあるワニ動物園って、一体どんなふうなんだろう?ワニはいつかの動物園でその姿を見たことはあるけれど、ワニ動物園というものには行ったことがない。ハイウェイの車の中から一秒弱程度、通り過ぎ際に見ることができる看板「Crocodile Zoo」。私はいつか、そこを訪れたいとおもった。

イースター休暇に入る前日の深夜だった。急遽、デンマークで休暇を過ごすことに決めた私たちは、デンマークのロラン島に宿を二泊取った。このロラン島は、ドイツ行きのフェリーが出る港がある島。そうであるから、この旅の計画は先ず、初日にワニ園に行くことに決まった。

ワニ園は、シェラン島とロラン島に挟まる形で位置する、ファルスター島にある。スウェーデンの家からこのデンマークのワニ園までは車で二時間弱とあって、然程遠くはない。しかしこの辺は土地の起伏がほぼ無く、視界がただ平坦な道を走るとあって、あまり面白いものではない。山が無いと、山を愛するフランス人は嘆くものである。

ワニ園に着くと、他の来園者は皆外に出て、ピクニック等をしていた。園の入り口の外では、大きなケージに入った数羽のオウムが声高く鳴いている。ワニ園の周りはというと、だだっ広い畑の間に、田舎道が通る。長閑な場所である。

入場料を払って中に入ると、ムンと暑い空気が我々を迎えてくれた。デンマークで室温が30度というと、違和感がある。個人的には、好きな蒸し暑さだ。園内には合計23種類のワニがいるとのことであるけれども、最初に目に入っていきたのは、頭上をピュンピュンと飛び交う色鮮やかな小鳥だった。お洒落だ。

さて、ワニ。木の柵を少し首を伸ばして見ると、どっしりとした大きなワニが近距離に横たわっていて、正直かなり驚いた。何がというと、そのワニの大きさと、柵が低く設定されて簡単に乗り越える事ができそうであるという事についてだ。柵から伸びた金網も、短い。体の大きい人がひょいと身を柵から乗り出してしまえば、ワニに手が届くだろう。そういってしまっても過言では無い程に、ここの柵は簡単だ。
最初のワニの姿に驚きを覚えながらも、次々に現れる大小さまざまなワニに、その都度感動させられた。殆どのワニは微動足りとも動かずに、ただじっとしているように見える。しかしこうして近距離でじっと見つめてみると、どのワニも眼が僅かながらに動いているし、口を開けていればその舌が蠢いている。柵越しから眺めた後はガラス張りの展示で、こちらも面白かった。特に印象深かったのは、現在中国西部に生息するという、ヨウスコウアリゲーターだった。小柄ながらも目がキリッとしていて、目を見張るものがあった。絶滅危惧種に指定されているらしく、今後のこのワニの繁栄が気にかかる。

余談だが、ワニの展示室に入る手前には、カメレオンいる。ガラス越しに見ることができるのだが、私は展示の主役のカメレオンでなくて、その餌として入っているゴキブリの方に目を向けられずにはいられなかった。スウェーデンに移ってからというものゴキブリの姿は見たことがないだけに、見慣れたその不気味な姿をこれもまた間近で見て、虫酸が走った。外の大きな檻の中にいるというチーターは、残念ながら奥に引っ込んでおり、その姿を見ることはできなかった。

ワニを目近にじっくりと見る機会などそんなにあるわけではないし、ここは訪れる価値のある動物園だとおもう。本当に、今にも手が届きそうなワニに会えるワニ園なのだ。


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