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【読了003】陳舜臣『弓の部屋』

 夏の夜の神戸を彩る生田神社の花火。それを、異人館のボウ・ルーム(弓の部屋)から眺める男女の間で、突如、殺人が……。被害者は、メイド・光子の夫の山中。彼は、電灯を消した一瞬にすり替えられたコップを口にして、毒殺された。捜査の進展につれ、居合わせた人々の過去が、次々にあばかれて……。神戸情緒あふれる、本格ミステリ。

Amazonより

 めちゃめちゃ期待して読んだ本がまあまあだった時より、そんなに期待しないで読み始めた本がまあまあだった時の方が嬉しいですよね。そんな読後感でちょっと得した気分です。失礼かな。失礼だな。

 男性作家が書く女性主人公って大体「ああ……うん……」みたいな感じになるんですが、今作の主人公は割合さっぱりした性格で良かったです。グレてた過去があるっていうのも珍しくていい。ただのキャラ付けじゃなくてちゃんと本編にも絡んできますしね。
 彼女の婚約者にして探偵役の渋沢さんに関しては「ああ……うん……」って感じだったんですが。生真面目な朴念仁的なキャラって脇役だと微笑ましいんですが、主人公と並んで物語を引っ張っていく立場になるとどうも物足りないし爽快感がない気がしてしまう。あんまり魅力を感じられなかったなあ。まあその分主人公がちゃきちゃきしてるから、釣り合いは取れてるのかもしれない。

 この本に出てくる「悪事」みたいなことって今でも出来るのかな? ってちょっと気になりました。さすがに今は無理かな。でも「なるほどな~そういう手口があるのか……」ってちょっと感心してしまったり。

 犯人の人物像が大分私好みでした。こういう人が犯人だと私は嬉しくなっちゃうんだ。そういう意味でも、最後までストレスなく楽しめました。

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