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【私的読書案内①】SHOE DOG

もう4年前なのか〜、と思うほど
インパクトある読後感を今も
ありありと覚えています。

お世話になり続けたブランド
は違うので恐縮ですが、

創造と狂気は紙一重であり、

そのギリギリの綱渡りこそが
ベンチャー企業の経営だ、

という事実をこれほど突きつけてくる
ビジネス書は他に無いでしょう。 

SHOE DOGとは、
日本語に翻訳すると「靴バカ」。

創業者をふくめ、その靴バカ5人組が作った
のが、NIKEというブランド。

この本はNIKEが創業から株式上場を遂げる
までの、いわば黎明期だけが描かれています。

(何かに熱狂してのめり込む人を◯◯バカ
 と呼ぶ時代がありましたね。今はオタ?)

著者でもある創業者は、もともと公認会計士
として働き始め、後に起業のかたわら、
大学の教鞭を取るほど会計学に精通した 
人物だったようです。

「どうも学生たちは会計における資産と
負債、純資産の関係性やバランスを
理解するのに苦労しているようだった」

という言葉がサラッと書いてあります。

一方で自分の事業になると

「手元に使える金が1ドルでもあるなら、
全部シューズの仕入れに使う!当たり前
の話だ!」

と吠え、売上規模が上がる度、仕入れ額も
天井知らずで上げ続け、

極端なまでに偏った拡大路線に
融資した銀行と経営方針で揉めに揉めた
エピソードが次々と出てきます。

ホントに同じ人が書いている話か?

と思うほど、人格が一変してしまう
創業者の熱量は圧巻のひと言に尽きます。

創業者を交えた靴バカ5人組の
ミーティングもまた、朝から晩まで、
昼も夜も語り尽くし、飲み尽くす。

この会議の様子も、参考になるべき点を
見つけるのが難しいほど極端な偏りばかり。

一方で、セールス、財務、法務と
それぞれ専門分野を持っていた 

この靴バカ5人組のフラットな
関係性と語り尽くしたミーティング 
こそが、NIKEの成功を生んだ源だ

と語る研究論文も、実際に
数多く存在します。

ちなみに黎明期なので、マイケル・ジョーダン
をはじめ、NIKEと契約した有名アスリート
のエピソードは全く登場しません。

また、靴バカがテーマですが、
エア・ジョーダンをはじめNIKEの
代表的なシューズもほとんど出てこない上、

良く話題になるNIKEの戦略、マーケティング
や刺激的な広告のメッセージも登場しません。

経営学の観点から言えば、「いつ潰れても
おかしくなかった」というセリフが繰り返し
出てくる企業の話は反面教師でしかなく、

読む人によっては、「まるで参考にならない」
と思う人も少なくないと思います。

一方で「机上の空論ではなく
リアルな話を聞きたい」という人には 
まさにうってつけ、と言えるでしょう。

狂気と熱狂、そして葛藤。

ブランドという、一見、幻想めいた
イメージに血を通わせるエッセンスは
それかもしれない、

ふと、そう思わせてしまうほど
強烈な情念を感じる一冊です

※ビル・ゲイツによる書評はこちら

‘走る行為そのものがゴールであり、ゴールラインなどない。それを決めるのは自分自身だ。走る行為から得られる喜びや見返りは、すべて自分の中に見出さなければならない。すべては自分の中でそれらをどう形作り、どう自らに納得させるか、なのだ。’  ー SHOE DOG より引用

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