閉鎖病棟に入る(4)

この病棟には、何年、何十年も入院している患者たちがいた。彼らには面会に来る家族もいない。ほんとうはいるのかもしれないが、少なくとも面会には来ない。半世紀入院しているおじさんと、20年ばかり入院しているおじさんとは、いつも仲良しだった。お互いを「ちゃん」づけで呼び合っていた。お茶の時間はいつも、同じテーブルで談笑していた。半世紀のおじさんは、時々廊下で独り言を叫んでいることもあったが、それ以外はいたって大人しく、人の好いおじさんだった。

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