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観劇メモ:花組『アウグストゥス/Cool Beast!!』

東京公演が開催され、もう一回観られる前提でザックリ感想のみ。多少のネタバレはしています。観劇日は4月22日マチネです。


お話自体は割と明快。パクス・ロマーナ前の激動の時代と、それを収めた人物の話。出てくる人の名前も基本はなじみ深い有名人ばかり。なのだけれど、いかんせんうろ覚え過ぎだった。ストーリーはまっすぐ一本道とはいえ、ひとりの人物の変節が短時間に描かれるため、消化に時間がかかってしまった。大反省。

やはり何事も下準備が大事。最低限、パンフは読んでおくべきだった。ストーリーを追うのに必死で、感情を追い切れず、物語を楽しみきれなかったし、シーンの細かな演出を楽しみ切れなかった。心より反省。



オクタヴィウス。

「パクス・ロマーナ」を築きながら、その存在があまり華やかに語られる機会が少ない、そんな人物。実際、作中でも彼は常に物語の中心にはいない。受け身で、時に誰かのために動くことはあっても、基本の立ち位置が傍観者、という感じ。誰かが感情をむき出しにし、野望を言葉にし、そのために犠牲を払っても動いて行くのを、ただ争うことを避けて、避けているだけ。いや、史実がそうなんでしょうけど。

彼がどういう人物なのか、どうありたいのか、を知る手掛かりが少なすぎて、主人公に肩入れしがちな自分にはなかなか物語に没入できなかった。生まれ育ちが良く、周囲にも恵まれたが故に、どこかぽやんとした彼。こんな彼を民衆が「アウグストゥス」と称えるまでを、この短時間で描けるの??と心配になるほど。

とはいえ、最後も最後になり、これまで見せていなかった感情をむき出しにして「憎しみ」を見せた(知った)途端、ようやくその前の部分が生きてくる構造だったことを知らされて、あーー、これはそういうお話なのだ、とようやくこちらにも伝わってきた感じ。理解力が足りないんだったらごめんなさい。

でもですよ、ポスターを見てわたしはなんとなく人物像を脳内に作ってしまっていたのですよ。あの面を見せる頃には、物語がほぼ終わっているとか、かなり難易度高い気がします。が、一度「そういうものだ」と思ってみれば、めちゃくちゃ面白い気がしているので期待。


ポンペイア。

さらにもっと存在感が薄い。創作された人物である以上、史実に関わる部分には登場しえないのはわかります。が、だとしてもなぁ、というほどに「幻のように美しい」といいう以上の感情が残らない。

わたしは華さんの演技の、悲しみや怒りや喜びがほとばしるようなものしか観ていないので(はいからさん、ナイワ)、そしてそれがとても好きです。なので、基本、抑えた演技が続く本作で、彼女の感情を追うのがやっぱり難しかったのも前半のボヤンとした感想に繋がっている感。

感情が表情できちんと明確に示されるのが登場時のシーンくらい、あとは奇妙な静けさを携えていて(穏やか、と表現するべきなのかもしれないけれど、ちょっと違う気がする)、海戦のシーンでは無の表情で突然現れる。「あれ、なんで??」と謎不思議感が出てくるんだけれど、最終的に「幻のよう」という感想が正しいと知らされる訳ですが。

そのあたりの変化に地続き感を感じず、どうにも唐突に感じてしまった。まぁ、これも一回通して見て知ってしまえば案件なのかな、とも思いましたが。


主人公とヒロインに対してはそんな感じで、終わってから「あー、なるほど?」となったのでした。

二人でアントニウスとクレオパトラでも良かったんでは?と正直思ったりもしたけれど、こうして通してみた結果は、まぁ、もう一回観たら感想変わるだろうな。でも華ちゃんのクレオパトラ、良いと思うんだ……。

繰り返し見る人って結構特殊で、それを前提にしていいのかな……、という疑問がちょっと残りました。が、宝塚は、「そういうもの」なのかしら。うーん。予習不足だったな、という反省はしたものの、予習をしていてどうにかなる部分を越えているかな、という気もやっぱりします。お二人の演技が好きで、お二人の演じるものに対して勝手に信頼をしているがために、余計に。


他の主なキャストの方について。主人公と対比すると、こちらはしっかりと印象に残っている。

アントニウスの、成り上がり者としての野望。一番感情が明確で、人間味があり、目的も明確。ギラギラとした感情のきらめきは、ほとんど主役のような存在だなぁ、と思った。

クレオパトラの、愛を知り変化していく姿。カエサルに対しては自身の感情を明け渡していない感じだったのに、アントニウスに対して「王」から女になっていく感情の変化が明確。こちらも完全にヒロインのような描かれ方で、存在感だった。

アグリッパは、オクタヴィウスの魅力が前半伝わらないが故に、なぜこの人はこんなにも忠心を示すのだろう?が割と謎だった。だから「筋肉脳」と言われていた場面くらいしか印象がない。たしかに体を動かす場面、護衛としての活躍場面でしかなかったし……。最後のシーン、オクタヴィアとのなんか未来を感じさせる雰囲気が好きです。ソロで歌う場面よりも、あそこが一番感情が伝わってきた気がする。

ブルートゥス、「目」で伝える感情が凄かった。え、あの人、この前までアイリーンやってた人だよね?!悲しみも、死に方も、憎しみも、全部の気迫が目から伝わってくる感。登場する場面、ずっと目で追ってしまった。

オクタヴィア、可憐で可哀想で、でも可哀想という言葉を投げる相手として相応しくないような気品があって、凄い素敵だった。音さんは本当に何をやってもどんな役でも、短い場でも気持ちがスッと入るなぁ、という印象。

マエケナス、も、結局はオクタヴィウスが際立たない限り表に出る感じがなくて、一応いる、みたいなお役だったなぁ。これ、アントニウスとクレオパトラがあまりにも立ち過ぎた弊害なのかなぁ、とも思う。1本ものだったら、あるいはもう少しオクタヴィウス、アグリッパ、マエケナスの3者の関係性がきちんと描かれたのかな。海戦でも両者ともにほとんど活躍がなく、なんかいただけ感がもったいない……。

カエサル、あれ、こういう人物だっけ……?となるくらい、ギラギラとした欲望が見え隠れしていた。もっと知恵者だと思うんだけどな、それゆえの独裁だと思っていたんだけどな、っていう。ただ、民衆が彼を称えついて行くのに納得感がある風格を出されていたので、なんかスルっとそのまま受け入れてしまったけれど。


主に気になったのはこの辺の方たちでした。

ごにょごにょと批判的な感じのことを書いていますが、基本的には自分の理解が及ばなかった故、の部分が大きいと思っていますので、今後の配信、東宝での舞台を楽しみにしたいと思います。

あ、生オケ、めっちゃ楽しかった……!開演前のAでチューニング合わせているのが耳に届いた瞬間、震えました。全然違いますね!今回はお席も良かったので(ドセンの10列目前後)、余計にその音の広がりが気持ち良かったです。



Cool Beast!!。

ショーは筋で記憶していくのが難しいため、うっすらとしか覚えられないポンコツ頭です。だいたい「楽しかった!!!」しか残らないんですが。水の戯れのところは好きだなぁ、としみじみしたので、次回もここを注目して観たい。お歌も良かったです。あとお肉バトルも可愛かったので、もう一回観たい。マイティかわいい。

恐ろしいことに、以上です。体感時間でいうと3分くらいでした。


明日も幕が開くとは限らない、というのはこの1年でさまざまなところで体感してきたはずなのに、やっぱりその瞬間が来るまでは覚悟なんてできないものだなぁ、と改めてしみじみと感じたここ数日でした。

無茶だろと思いつつもマチソワで花組とバウを入れたこと、記憶の薄れ方などからしてもやっぱり無茶だったと思うけれど、見られて良かったです。生で観る舞台に勝るものはない。その日をまた迎えるためにも、おとなしく静かにおうちで過ごします。

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(公演ランチ、次行ったら食べるつもりだったのにな……しょぼん)