SHUWA

小笠原流煎茶道で修行しつつ、煎茶道の活動をしています。煎茶道にまつわる話を載せています…

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小笠原流煎茶道で修行しつつ、煎茶道の活動をしています。煎茶道にまつわる話を載せています。二十四節気七十二候に合わせた文人華の紹介もしています。

マガジン

  • 日本の暦と文人華

    煎茶道の茶室の設えには季節の草花や野菜、果物を盛られた、文人華が飾られます。日本の暦の二十四節気七十二候に暦に合わせた文人華を紹介しています。

  • 煎茶道と文人文化

    煎茶道と茶道の違いは、抹茶を茶筅で点てる茶道と茶葉から急須で淹れる煎茶の茶道具の違いのみならず、床の間の花飾り、好まれる軸など部屋の設えなど美意識のベースとなる文化が異なります。煎茶文化は古く中国唐の時代の文人文化から江戸の日本の文人に受け継がれ今日に至ります。煎茶道文化の美意識や精神性の中心となっている文人文化を煎茶道の風景の中から取りあげていきます。

  • 小笠原流煎茶道のデザイン

    煎茶道のお点前でつかうお道具はデザインのみならず、美しい点前と称される小笠原流煎茶道にあるさまざまなデザインを紹介します。

最近の記事

鴻雁北(七十二候)と捨翠為鈿

4月10日頃は七十二候の「鴻雁北(こうがんきたへかえる)」です。雁が北へ渡って行くと言う意味です。雁が並んで飛ぶことを雁行といいます。煎茶道の卓式点前で、お客自身がお点前のお茶碗を並べて順次、次客に回していく所作も雁行と呼びます。茶托に乗った茶碗が並んで進んで行く風景が雁行に似ているからです。取りあげた文人華は、五葉松と白梅の取り合わせの「捨翠為鈿(しゅうすいいでん)」です。捨翠とは平安時代、春まだ浅い頃に、野辺に出て草花を摘んだ習わしが由来の言葉です。雅題は、緑の草花を拾い

    • 雷乃発声(七十二候)と万代長寿

      3月30日頃は七十二候の「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」です。遠くで雷の音がなり始めると言う意味で、春の嵐とともに春雷が鳴るころです。桜も満開の時期ですね。菊と桜の取り合わせた文人華に「万代長寿」という雅題があります。春の桜、秋の菊を取り合わせることで万代の時を感じさせる盛物です。

      • 桜始開(七十二候)と桜花風韻

        3月25日頃は七十二候の「桜始開(さくらはじめてひらく)」、桜が咲き始める頃です。煎茶道の茶席にも桜を飾りたい時期です。桜を松を取り合わせると、桜花風韻という雅題になります。風韻とは趣があるという意味です。四季を通じて常緑の松と儚く散る桜の花をの対比が風流な趣を感じさせます。

        • 春分(二十四節気)・雀始巣(七十二候)と不老富貴

          3月20日頃は二十四節気の春分です。暦便覧には『日天の中を行て昼夜等分の時也』とあり、七十二候では「雀始巣(すずめはじめてすくう)」。昔からお彼岸の中日として祖先を祀る日としてきました。またこの日は春季皇霊祭として、歴代の天皇、皇后、皇族を祀る日として明治時代に祝日とされ、戦後、春分の日となり「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」とされています。この時期、そろそろ牡丹が咲く頃、煎茶席でも牡丹を用いた盛物は多くあります。牡丹は富貴草、富貴花と呼ばれることもあり、牡丹と松で「不老富

        鴻雁北(七十二候)と捨翠為鈿

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          3本

        記事

          菜虫化蝶(七十二候)と閑窓清友

          3月15日頃は七十二候の「菜虫化蝶(なむしちょうとなる)」、青虫が羽化して紋白蝶になる頃です。お彼岸ももうすぐ。この時期は木瓜の花も見頃です。文人華にも木瓜と春蘭、隼人瓜を取り合わせた雅題「閑窓清友」があります。

          菜虫化蝶(七十二候)と閑窓清友

          桃始笑(七十二候)と王母百年

          3月10日頃は七十二候の「桃始笑(ももはじめてさく)」、桃の花が咲き出す頃です。煎茶席にも桃を飾りたい季節です。煎茶席に飾られる文人華には、桃と松毬の組合せ「王母百年」という雅題があります。王母とは中国の伝説の女仙(女神)西王母のことです。漢の武帝が西王母に長寿を願ったところ、天から西王母が現れ武帝に三千年に一度花が咲くという仙桃を七個(仙桃七顆)を武帝に与えたという伝説があります。松毬は長寿と子孫繁栄を意味し、王母百年は長寿と子孫繁栄を願う雅題ということになります。

          桃始笑(七十二候)と王母百年

          啓蟄(二十四節気)・蟄虫啓戸(七十二候)と春茅一束

          3月5日頃は二十四節気の啓蟄です。暦便覧には『陽気地中に動き、ちぢまる虫、穴をひらき出れば也』とあり、七十二候では『蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)』です。蟄は土に隠れた虫の事、啓は、開放する、導く、申し上げるといった意味があります。蟄が開放されて春が近いことを伝えてくれる、そんな意味合いが伝わってきます。啓蟄という言葉は古くから使われており、古代の礼文献をまとめた大戴礼記に含まれている、夏王朝時代に書かれた中国最古の暦書「夏小正」に記載されています。 少しずつ暖かくなって

          啓蟄(二十四節気)・蟄虫啓戸(七十二候)と春茅一束

          草木萠動(七十二候)と蘭秀芝英

          2月28日頃は七十二候の「草木萠動(そうもくめばえずる)」です。寒さが緩み、草木が芽を出し始める時期。煎茶席も春の野を感じさせる蘭秀芝英(蘭と霊芝)など飾るのよいでしょう。

          草木萠動(七十二候)と蘭秀芝英

          霞始靆(七十二候)と歳寒二友

          2月23日頃は七十二候の「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」、言葉通り霞がたなびき始める頃です。梅の便りが届くこの時期、煎茶席の床を飾る文人華にも梅を活ける盛物は歳寒二友(梅と菊)を始め、多くあります。春霞を詠った和歌は多いです。  ひさかたの天の香具山このゆふべ  霞たなびく春たつらしも      (万葉集 巻10 1812 柿本人麻呂歌集)

          霞始靆(七十二候)と歳寒二友

          雨水(二十四節気)・土脉潤起(七十二候)と天仙

          2月18日頃は二十四節気の雨水です。暦便覧には『陽気地上に発し、雪氷とけて雨水となれば也』とあり、七十二候では「土脉潤起(つちのしょううるおいおこす)」(脉は脈の異体字)。雪が雨に変わり、氷が溶けて水になり、土地も潤い草木も芽吹く頃とされています。来週には上巳の節句のひな祭り。この日にお雛様を飾ると良縁に恵まれると言われています。この季節、水仙や南天が寒さの中、目を楽しませてくれます。煎茶席では水仙と南天の取り合わせた「天仙」はよく飾られます。

          雨水(二十四節気)・土脉潤起(七十二候)と天仙

          魚上氷(七十二候)と吉報早春

          2月13日頃は七十二候の「魚上氷(うおこおりをいずる)」です。言葉通りの意味は「魚が氷の下から跳ね上がる」頃です。。 春が来たことを教えてくれる魚を春告魚と呼びます。春告魚として、ニシンやメバル、イカナゴやサワラなどが地域によって呼ばれています。ちなみにサワラは「鰆」と春の魚と書きますよね。煎茶道では早春を告げる文人華の雅題「吉報早春」があります。早春に花の香りを運ぶ苔梅、水仙、椿に吉祥を表す霊芝を組み合わせます。

          魚上氷(七十二候)と吉報早春

          黄鶯睍睆(七十二候)と四君子

          2月8日頃は七十二候の「黄鶯睍睆(うぐいすなく)」です。鶯が山里で鳴き始める時期。鳥たちも春が近いことを教えてくれます。鶯は春告鳥(はるつげどり)と呼ばれ、黄鶯(こうおう)はコウライウグイス、睍睆(けんかん)は美しい声を表す擬態語です。鶯は梅ととも、今の時期を表し、文人画にも梅と鶯のモチーフは多く取り上げられています。文人華も梅と竹、蘭、菊を取り合わせた「四君子」のように梅を用いた雅題が多くあります。

          黄鶯睍睆(七十二候)と四君子

          立春(二十四節気)・東風解凍(七十二候)と雙清

          例年2月4日は二十四節気の立春。旧暦では一年の始まり、つまり正月です。ちなみに令和3年の立春は123年ぶりの2月3日でした。年賀状に新春と書くのもその名残といわれています。暦便覧には『春の気立つを以って也』、七十二候では「東風解凍(こちこおりをとく、はるかぜこおりをとく)」です。暖かい東の風が吹き始め、凍っていた池や川の氷が溶け始める時期です。寒さのピークが過ぎたことを教えてくれます。つまり、立春直前が最も寒い時期といえます。「東風解凍」は五経の一つ、礼記の月ごとの季節の変化

          立春(二十四節気)・東風解凍(七十二候)と雙清

          鶏始乳(七十二候)と不老瑞祥

          1月30日頃は七十二候の「鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)」、大寒の末候、春が近づき鶏が卵を産むために巣に入る頃とされます。鶏は古来から身近な鳥で、天の岩屋に隠れた天照大御神を呼び出すのに「常世の長鳴鳥を集めて鳴かしめて」と古事記にも登場します。ちなみにこの伝説が神社の鳥居の起源という説もあります。万葉集でも鶏はよく登場します。   庭つ鳥鶏(かけ)の垂り尾の乱れ尾の   長き心も 思ほえぬかも            (万葉集巻7 1413) さて、「鶏始乳」が七十二候

          鶏始乳(七十二候)と不老瑞祥

          水沢腹堅(七十二候)と芝山祝寿

          1月25日頃は七十二候の「水沢腹堅(さわみずこおりつめる)」、大寒の次候です。沢に氷が厚く張りつめるほどの寒さの頃と言う意味です。また、1月25日は初天神祭として「鷽替(うそかえ)祭」が行われます。これは菅原道真を襲った蜂の群れに鷽(ウソ)の大群が飛来して蜂を食い尽くして助けたという言い伝えに由来から、身替災難除けとして凶事をウソにしてくれるという祭です。この時期の蝋梅や水仙、南天に霊芝を取り合わせた盛物に「芝山祝寿」があります。

          水沢腹堅(七十二候)と芝山祝寿

          大寒(二十四節気)・款冬華(七十二候)と歳寒三友

          1月20日頃は、二十四節気の「大寒」です。一年で最も寒く、降雪が多い頃です。「こよみ便覧」では、『冷ゆることの至りて甚だしきときなれば也』と書かれています。七十二候では「款冬華(ふきのはなさく)」。寒さの中、蕗の薹(ふきのとう)が蕾を出すという意味です。款冬は蕗の異名ですが、ヤマブキやツワブキの異名としても用いられます。蕗は万葉の時代から日本で親しまれてきた山菜です。  明日よりは 春菜採まむと標めし野に  昨日も今日も 雪は降りつつ         (万葉集 山部赤人)

          大寒(二十四節気)・款冬華(七十二候)と歳寒三友