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売上と経費

第4章 小売業としての本屋(3)

 小売業においては、毎日少しずつ売上が立つのが一般的だ。現金をやり取りしたあとで、その売上の計算をしやすくするために、レジスターがある。

 売上も大事だが、最終的に残るのは利益だ。会計上は様々な種類があるが、ふだん意識すべき利益には大きく分けて、粗利と純利がある。

 売上から原価を引いたものが粗利だ。八掛で仕入れたものが売れれば、二割が粗利になる。そこからさらに、その他諸々の経費を引いたものが純利だ。粗利から人件費や家賃、光熱費、その他備品などの経費を引いて、残った額が純利となる。売上は毎日数える。粗利も、概算でもよいので毎日把握しておくほうがよく、本だけであれば平均値で計算すればよいので簡単だ。経費は毎月払うものが多いので、純利は月次で計算する。

 できるだけ安く仕入れて、高く売る。さらに、なるべく余分な経費をかけない。これが商売の基本だ。

 そういう意味では、古本を扱うほうが小売業らしいといえる。仕入れる値段も売る値段も、自由に決めることができるからだ。だから古本には、安く買い取る商売と、高く売る商売の、二種類の商売があるといえる。もし販売が苦手でも、仕入さえ得意なら利益が出せる。インターネットで売ってもいいし、市に出してもいい。直接自分で販売は行わず、買取やセドリ(一五三頁を参照)など、仕入を専門とする本屋になるという選択肢もある。一方、仕入が苦手でも、販売さえ得意ならそれはそれで利益を出せる。だから、直接自分で買取は行わず、販売を専門とする人もいる。もちろん多くの人がイメージする古本屋は両方やっているので、二種類の商売の組み合わせで成り立っている。自ずと、得意不得意があって、それは外からは見えないことも多い。そのため、古本屋の粗利率は店によってまちまちだ。

 一方、新品の本はそうはいかない。もちろん交渉の余地がないわけではないが、特に日本においては、基本的に仕入値がそれほど大幅に変わることはない。売価も全国どこでも一律だ。掛率の平均は自然と七〇~八〇%台となり、粗利率は二〇~三〇%台に決まってくる。

 経費は、固定費と変動費に分けて考えたほうがよい。毎月ほぼ同じ額がかかるのが固定費、売上に比例して変動するのが変動費だ。固定費を払えるかどうかが、店を継続するために重要なポイントになる。

 本屋は固定費の割合が多く、一番大きいのが人件費と家賃だ。そのため、他人を雇わずに自分あるいは家族だけで補える場合、かつ物件も所有しているような場合は、リスクはぐっと低くなる。その他は固定費として光熱費と、変動費としてレジ袋やブックカバーなどの備品をみておけばよい。

 なお、内装や設備にかかった費用は、減価償却といって、数年に分けて毎月経費としてカウントしていく。これも固定費として重たくのしかかってくるが、借金などをしていなくて、とくに期限のない物件ではじめるのであれば、いつか回収できればよいと考えて後回しにしてもよい。

 ともあれ、漠然と売上だけを眺めていてはいけない。わずかな粗利の中でこれらの経費を賄い、ほんの少しでも純利を残せるだけの充分な売上を上げられているかどうかを、常に意識していくことが、小売店としての本屋を続けていくための鍵となる。

※『これからの本屋読本』(NHK出版)P166-P168より転載


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ブック・コーディネーター、クリエイティブ・ディレクター。新刊書店「本屋B&B」(東京・下北沢)と出版社「NUMABOOKS」を経営しつつ、「八戸ブックセンター」「神保町ブックセンター」「BIBLIOPHILIC」などの仕事をしています。散歩社取締役、バリューブックス社外取締役も。
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