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本をそろえて売買する

第4章 小売業としての本屋(1)

 すべての「本を専門としている」人が、広義の「本屋」だと書いた。その中でも「本をそろえて売買する」ことを通じて生計を立てること、すなわち、小売店としての新刊書店や古書店を経営することは、簡単ではない。

 もちろん出版社も、取次も厳しい。出版社の中には、自社の本を出版して流通させることだけではなく、持っているコンテンツや編集力を生かして、別のビジネスを展開しているところも多い。各取次は、本屋以外で本を売ることや、本以外のものを本屋で売ること、全く別のものを本の流通に乗せて運ぶことなどに取り組みはじめている。出版業界での役割を転用して生き残る道をみな試行錯誤しながら、それでも本を出版し続け、流通し続けられるようにと努力している。

 新刊書店や古書店もまた、本以外のものも扱うことで、小売店として生き延びようとしているところは多い。しかしどんな本屋になるとしても、まず中心にあるのは「本をそろえて売買する」ことだ。出版社も取次も、読者との接点としての書店が本来の「本をそろえて売買する」力を失ってしまうと、本にかかわり続けることは、より難しくなっていく。

 本章では、「本をそろえて売買する」本屋の、小売業としての基本的な部分について書く。変化の時期にある項目については、未来に向けて考えるべきポイントについても触れる。なるべく、小売の経験がまったくない人でもわかるように書いたつもりだ。考えるべきすべての項目を網羅できたわけではなく、また本来であればそれ単体で一冊の本になり得るような項目もあり、ここに記すことはあくまで入口にすぎない。より深く知りたい場合は、本屋以外の業種も含めればたくさんの本が出版されているので、ぜひそういったものにも触れてほしい。

※『これからの本屋読本』(NHK出版)P162-P163より転載


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