中国広告紹介「クローブドクター」
社会問題を広告で解決する?
中国で問題となっている卵子売買。“高収入バイト”として手を染めてしまう若い女性も少なくありません。
今回は、卵子売買という社会問題を広告によって解決しようとした企業の広告をご紹介します。
まずは、その広告を見てみましょう。
#化粧品でもあり、武器でもある
をつけて投稿したら、
コメント欄から申し込めるようになります。
私たちが1000本の期限切れ間近の口紅を送るので、
卵子提供の広告を塗りつぶして女性を助けましょう。
この広告はどんな社会問題を表しているのでしょうか?
中国の現状を見ておきましょう。
2016年から一人っ子政策が緩和された中国では、妊娠を望む女性がすでに妊娠適齢期を過ぎていることも多く、卵子売買には一定のニーズがあるのです。
しかし、一説によると、卵子売買を行うには10日間以上排卵を促す注射を打つ必要があり、人体に無害だとは全く言えません。この過度なホルモン治療によって、卵巣が刺激を受け病気に罹ることもあります。場合によっては生命に関わる事態にも繋がりかねません。
(参考:https://www.excite.co.jp/news/article/Cyzo_201903_post_196777/)
さらに、昨今は新型コロナウイルスの拡大により、経済的に困窮した層がやむを得ず人体ビジネスに手を染めるケースが相次いでいます。
(参考:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/627804/)
卵子提供を呼びかけるメッセージは、一人きりでいられる閉鎖空間に、例えば公共施設などのトイレに連絡先とともに書かれていることが多いです。
この社会問題に対して、「DXY.cn」は3月8日の国際女性デーにweibo上にて上述の広告を打ち出しました。
「DXY.cn」とは、中国オンライン医療サービス「クローブドクター」を運営する会社です。
2000年に設立された医師、医療従事者や薬局向けのオンラインコミュニティーを運営している企業。登録している会員は550万人を超え、登録企業は3万社に到達しています。製薬会社に対して、ビッグデータ分析などのマーケテイング及びコンサルティングサービスも提供しています。
この広告には、上部に広告のキャッチコピーが書いてあり、その下には別の手書きの文章が書いてあります。
よく見ると、この広告はトイレのドアの画像になっており、下の言葉は、黒いペンでドアに書かれた文言とそれを掻き消すように書かれている赤い文字が確認できます。
この黒い手書きの文章こそが、本広告で扱っている社会問題の卵子提供の募集を訴えるものなのです。
「卵子を提供したい女性はこの電話番号にかけて」と呼びかけています。
それを赤い「自分を傷つけることはやめて」という言葉がかき消しています。
この広告では、まさに広告画像のように、期限切れ間近の口紅を配って卵子提供を促す言葉を塗り潰そうと訴えているのです。
Weibo上でこのハッシュタグを投稿したら、期限切れの口紅をもらうことができる抽選に応募できます。
抽選に当たった人たちは、お礼の手紙と共に口紅を受け取っています。
「卵子提供をしないで」と口で訴えるだけではなく、口紅を配布することで人々の力を結集させて女性を助けようしている呼びかけが印象的です。
配布する口紅も期限切れ間近のもののため、廃棄する予定のものを社会にポジティブな影響をもたらす活動に利用する環境への配慮を感じます。
ただの企業のプロモーションに収まらず、社会問題から女性を守ることでSDGsの「5.ジェンダー平等」や、廃棄予定の口紅を有効活用して「12.つくる責任 つかう責任」にも関わる社会的な広告となっています。
また、ビジュアルにおいても、訴えているアクションの実際の例を広告上で見せることで見た目のインパクトも強めていますね。
この広告は、中国で社会問題となっている卵子売買から女性を守ろうとしています。
より多くの女性の健康・安全を守り、ブランドの好感度も高めた広告となった例です。