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秋刀魚の塩焼き

秋刀魚。過小評価の代名詞。

やれ今年は高いだの、やれ小ぶりだの、脂が乗ってないだの。そんなことを言う前に、我々はもう少し秋刀魚を敬った方がいい。

秋とともに日本近海へ訪れる彼らは、手頃な値段で食卓に運ばれ、目黒で無料サンプル配布される。
価格とは需要と供給のバランスで成り立つので、仕方のないことではある。
とはいえ、いくらなんでも。

あんなに旨みが強いのに。はらわたも食べられるのに。骨の身離れが良くてするりと骨が取れた時の愉悦も味わえるのに。嗚呼、好きだ。

秋刀魚を食べるたび、昔の職場にいたパートのおばさま方が脳裏を過ぎる。

彼女らは非常に優秀な働き手で、当時新入社員だった私をバシバシ鍛えてくれた。

それでも、私より給与が低かった。

不思議なものである。あんなに経験豊富なのに。突然のトラブルに強いのに。コミニュケーション能力の怪物なのに。過小評価される彼女らを思い出す。

新入社員の私はパートさん未満のパフォーマンスだった。過大評価されていた当時の私が身の丈以上の給与をもらうことで、パートさんを少し犠牲にしていた構図もまた、思い出す。

大根おろしとポン酢のかかった秋刀魚の塩焼きは美味すぎて、そんな思考を一瞬忘却させる。

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