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『自分ひとりの部屋』は手に入ったが。

40度の高熱が治まり、病み上がりでまだ日常に戻りたくなくて、身体の病が心の病にうつりゆくのを感じながら片手間でツイッターを見ていたら、気になるツイートが目に入った。

前半部分の「就職から半年経って、精神的にかなり安定し、淡々と夢(敢えてこの言葉を使う)に向かって頑張ることが楽しい段階にやっと来つつある。」を羨ましいと思った。

私はその時、小さい頃お金がなくて買ってもらえなかったポケモンのゲーム、BW2を2年ぶりに前回の続きからやっていた。
小さい頃はあんなに欲しくて、発売から10年経ってようやく中古品を買ったのに、ジムバッチすら全部集めず、2年も放置していた。

とりあえずストーリーの続きをやって、忘れてしまったタイプ相性をたまにネットで調べて、野生ポケモンは逃げるを連打していた。小学2年生の頃にお金があって買ってもらえた、過去作のBWのように没頭はできない。

後半部分の「学生の頃はたまに寂しいのはライフパートナーの不在のせいだと思っていたが、実際に必要だったのは一人暮らしと定額収入だった」は同感だった。

大学生になって一人暮らしをして、やっと親や兄弟に邪魔されることのない物理的な静寂を手に入れた。高校生の頃にいた恋人は、無駄に心をかき乱すだけで私には有害だった。

ある程度自分の人生を自分で制御できて、自分の取り扱い方がわかっても、過去のトラウマが騒げば生活は今に崩れる。経済的自立が為された時に、私の名前のつかない精神病は今よりマシになると、常日頃考えている。

最後に、知らないカタカナが目に入った。

ヴァージニアウルフ?

3DSをカチャリと閉じて、スマホの検索バーにそのまま知らないカタカナを入力すると、イギリス人の女性であることがわかった。物書きらしい。

先ほどの「実際に必要だったのは一人暮らしと定額収入だった」の真意が知りたくて、そのまま代表作をみていくと『自分ひとりの部屋』というそれらしきタイトルを見つけた。

すぐに読みたくなって、Kindleで購入して読み始めた。
「女性と小説」がテーマで主軸に読み取るべきだったのに、社会に優遇される男性と社会から隔絶される女性という、よくみるフェミニズム理論が100年前から存在する事実に、心の病がさらに進行した。

今日はもう本当にダメだ。
ただでさえ疲れているのに、こんな文章は、しんどくなるだけだ。

そう思いながらも、今持っているKindle端末が防水であることを調べてから、浴槽を軽く洗い、いつもより半分のお湯をためた。

お湯がたまったら、冷たい麦茶を更衣室に置いて、濡れない位置に防水ではないスピーカーを置いて、Kindle端末を持ったまま長風呂が始まった。たまに水分補給をしに出たけど、たぶん、1時間以上はこもっていた気がする。

「なぜ男たちの飲み物はワインで、女たちは水なのか?なぜ男性はあれほど裕福なのに、女性はあれほど貧乏なのか?貧困は文学にどう作用するのか?芸術作品の創造に必要な条件とは何か?」ヴァージニアウルフは多くを自分自身に問いかける。その問いは私にもひどく突き刺さる。

ワインが飲みたい。もう21時だから近くのスーパーは閉まっている。でも、近くのコンビニはいつでも空いている。銘柄はよくわからないけど、飲み切れるサイズで目についたものを買おう。

ほどよく火照ってお風呂を出る決心のついた私は、表面の水滴をフェイスタオル1枚で拭き取り、その湿ったタオルで髪を乾かした。最後の麦茶を飲み干して、Suicaが千円とちょっと入った頼りないスマホと、一万円札が数枚とクレカもある財布の両方をポケットに詰め込んで、手ぶらでコンビニに向かった。

サントリーのキャップ付き缶に入ったロゼワインと、なぜかついてきたリンゴジュースの入ったレジ袋を手に、るんるんで帰宅した。いつもの定位置に座ると、ワインをひとくち舌の上でまわした。

うわ〜〜〜アルコールだあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
読書をアテにワインを飲むなんて、なんて幸せになったんだ!!!!!

私はアルコール臭が鼻腔を通るだけで気分が先行して酔うので、一瞬で陽気になった。

本当に、馬鹿げている。こう感じる背景を伝えるには人生が複雑だから、説明はなるべく端的に。ただ、こう感じる理由は、本当に、酒クズの遺伝子が私に存在していて、どうしようもなく幸福を感じてしまうからだ。

そのまま酒に酔って深くベッドに沈み、浅い眠りについた。

私が割高なコンビニで、一種の反発心からワインを購入したお金は、私のものではない。アルバイトはしているものの、私は生活費のほとんどを仕送りで与えられて生活している。この状況は裕福で幸運なものと知っておきながら、冷静に将来を考えるとひどく不安になる。

真の経済的自立のために、何度も貧困からの脱却を調べた。今の私が大学生であることは本当に幸運なのだが、ただ大学を卒業した女は、その後の人生で経済的自立は約束されない。

ならばと思い、簿記の勉強をすることにした。これがもし上手くいきそうなら、来年度には公認会計士に挑戦するつもりだ。やはり貧困のループから抜け出すには、勉強にお金をかけるのが一番マシな気がしてくる。幸い頭は悪くない。

今は本のうち9割を読み終えたところで、ヴァージニアウルフに「みなさんにはあらゆる本を書いてほしい」とお願いされたので、この記事を書いている。

さらに「〈現実〉を見据えて生きてください」とお願いされた。嫌なお願いだ。私は前の大学を辞めた時、現実を見据えることを辞めたんだ。それがやっぱり、貧困の脱却という人生の難所を前に、ゲームよりも勉強をするべきと身体が反応する。

一番は、ダンスがしたいはずなんだけどな。

来週にダンスサークルの合宿があるので、それまでに熱が下がって本当によかった。チーム戦でダンスバトルをするのがとても楽しみだ。パリオリンピックのブレイキンと似たシステムで勝敗をつけるらしい。

ここまでの文章を読み直した。私の文章は「白熱した、何者にも制御されない精神」「シェイクスピアそのひとの精神」に程遠い。

たくさんの怒りの感情が何も隠せていない。焼き尽くされ、使い尽くされていない。場面は急に動き、突拍子もない感情が現れる。

経済的に自立し、自分の力で定額収入を得たとき、私は心の病から解放され、現実を見据えて虚構を愛す創造の道を歩めるのか。
私は創作活動に励むみんなが羨ましい。

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