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読書感想②


※村上春樹著書「走ることについて語るときに僕の語ること」を読んでの感想



・シドニー五輪で金メダルを取った高橋尚子さんの通常時の脈拍は1分間に(おそらく)35で、僕の場合は50くらいしかない。全力で走ったあとは100近くになり、ようやく普通の人と同じ程度の脈拍数になる。これは明らかに長距離向きの体質である。日々走るようになって目に見えて遅くなっていった。長い距離を走るという機能に合わせて体が脈拍数を調整して行ったわけだ
私の筋肉の始動はのろい。そのかわりいったん暖まってきたらかなり長い時間、無理なく調子よく動かし続けることができる。典型的な長距離向きの筋肉といっていいだろう。ただこんな調子だと、短距離競技をした時、筋肉のエンジンがかかり始めた頃には、レースは終わってしまっているということになりかねない。
僕の筋肉の特性はそのまま僕の精神的な特性に結びついているような気がする。つまり、人の精神は、肉体の特性に左右されるということなのだろうか?逆に精神の特性が、肉体の成り立ちに作用するということなのだろうか?精神と肉体はお互いに密接に影響し、作用し合っているものなのだろうか?いずれにしても人には総合的な傾向なようなものがあって、それはある程度までは調整できるが、根本から変更することはできない。
しばらく水を見ないでいると、自分が何かを少しずつ失い続けているような気持ちになる。音楽の大好きな人が、何かの事情で長期間音楽から遠ざけられている時に感じる気持ちと、多少似ているかもしれない。僕が海岸の近くで生まれて育ったということも、いくらか関係しているかもしれない
・実感を伴った流れの中で、僕は自分という存在が、自然の巨大なモザイクの中の微小なピースの一つに過ぎないのだと認識する。皮の水と同じように、橋の下を海に向けて通り過ぎていく交換可能な自然現象の一部に過ぎないのだ
・ハーヴァードの新入生らしき女の子たちにどんどん後ろから抜かれていく。彼女たちは抜くことに慣れていて抜かれることには慣れてないだろう。周りの風景を眺めながらのんびり走るということは、彼女たちのメンタリティーには馴染まないのだろう。…僕は負けるのには慣れている。世の中には僕の手に余るものが山ほどあり、どうやっても勝てない相手が山ほどいる。…おそらく彼女たちはそういう痛みをまだ知らないのだろう。…このようにして世界は確実に受け継がれていくのだなと、素朴に実感する。彼女たちには彼女たちにふさわしいペースがあり、時間性がある。それは全く異なった成り立ちのものだし、異なっていて当たり前である。
(早朝のチャールズ川沿いを走っている時のこと)


今日はここまで

◎本日の呟き
実は私も村上さんや、高橋選手まではいきませんが平常時の脈拍数が少なく60〜65程度です。今のように毎朝走る前からそうでした。脈拍数が少ないのは長距離向きなんですね。初めて知りました。
今回、感銘を受けたのは「僕の筋肉の特性はそのまま僕の精神的な特性に結びついているような気がする」の部分ですね。
私の場合おそらく、以前の生活であれば、瞬発性の筋肉が多く、体重も74キロあったので、体の筋肉の特性がモロに精神に現れていたように思います。
短気で、一般的に短気=損気と言われるようにカッとなることで、すぐに反省し、自身でもそんなところが欠点だと感じていたので、迷惑をかける分、自ら率先して損な役回りをすることが多かったように思います。
それから今のように、以前の生活とは一変した生活(以前は1日2食ガッツリ。毎日肉中心の食事。野菜はほとんど食べない。甘いものもたくさん食べる→今は野菜ばかり。肉は食べない。1日1食)になってから、体重も10キロ落ちて、カッなることも一切なくなって、頭も冴えて…見る人が見たら別人にも思える人間になりました。
筋肉の特性が精神的な特性に結びついているとすれば、毎日ジョギングをすることで発達させた私の遅筋、反対に衰えた瞬発系の速筋。
村上さんの場合、ご自身の性格から成り立っていた筋肉をそのまま生かした形ですが、私の場合は性格、精神面を矯正する為に走るための遅筋を発達させたところ、性格まで変わったように思います。(あくまで村上さんの説をそのまま間に受けたらの話ですが)僕は肉体の筋肉のバランスと精神の関連性はあると思いますね。

他は皆共感できた部分を抜粋しました。僕も生まれが海岸沿いで、初めて社会に出て仕事についた時、誰にも相談できない人間関係の悩みを抱えていた時、無性に水(その時は近くにあった川でした)のそばにいきたくて、川のほとりで心を充電してたことを思い出しました。私はやっぱり自然の近くに居ることが人間の原始の頃から遺伝子に組み込まれてる習性のような気がします。村上さんの気持ちがすごく理解できました。


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