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スポーツ小説を書くための備忘録

授業で「スポーツ」をテーマに小説を書く課題を出しました。

意外と苦戦する受講生が多かったので、普段スポーツ小説を書いている自分の今後のためにも、備忘録的にスポーツ小説を書くためのポイントをまとめようと思います。

描き出すポイントを探る

スポーツ小説の醍醐味といったら、臨場感たっぷりの競技シーンです。

当然、選手の行動描写や心理描写、対戦相手の描写、周囲の人・場の描写、時間経過、移動、その競技のルール解説、前後の登場人物達の動きや関係性……などなど、書かねばならないことが大量にあります。

これらを読者にとってわかりやすいように、かつ面白く臨場感をもって書く、というのがスポーツ小説のポイントだと思います。

また、その競技の醍醐味を損なわないように書く、面白さが伝わるポイント(ツボ)を見極める難しさもあります。

例えば、100m走を書いているのにそのシーンに原稿用紙20枚も30枚も使っていては、競技本来のスピード感がどうしても損なわれてしまいます。

同時に、100m走(競技時間およそ10秒)の中でドラマを持たせるには、前後で登場人物の関係性や、レースに至るまでのエピソードを丁寧に描写する必要があります。スタート→回想→競技に戻る、というあるある技もあります。とにもかくにも、扱う題材の面白さ=美味しいところを損なわないように調理せねばなりません。

スポーツを書くこと

「スポーツ」というお題を出したら、「運動音痴だから無理!」「スポーツ経験なんてないから難しい!」という声が受講生から上がりました。

スポーツを書くには、そのスポーツを好きだったり経験者であったりすることはマストではない、と私は考えています。私自身、運動音痴の運動嫌いなのにスポーツ小説を書いているので。

その競技を描く上で、何をどう描くのが最も面白くわかりやすいのかを見極められさえすれば、未経験のスポーツでも意外と書けてしまいます。もちろん、知識や経験があるに越したことはないですが、今度は「何を書いて何を書かないか」「物語のためにどこかで嘘をつけるかつけないか」という問題も出てきます。

むしろ大事なのは経験や好き嫌いより、そのスポーツを知らない可能性のある読者に、何をどの順番で伝えればこのスポーツを、このエピソードを面白がってもらえるかという取捨選択と順番の整理です。

例えば、試合が始まる前から競技のルールを延々と説明されるのは、余程上手く書かない限り読者にとっては退屈なものになります。実際の試合を描きながらその中で競技のルールを解説する、というのがよくある書き方です。

・読者にとって取っつきやすい情報
・まずここを知れば競技の基本の面白さがわかる

このような点を抽出し、そこを実際の競技シーンの中で描く=チュートリアルとして読者に競技を理解させる、という形を取ります。「基本1を知ってもらったら次は基本2」と、段階を踏んでルールや競技の面白さを描いていくのです。

「読者にとって未知の分野の情報を、読者にわかりやすく・楽しめる順番やボリュームで提供していく」というテクニックは、スポーツ以外の題材を描くときも大事になってくるので、いろんなところで役に立つはずです。(例えばファンタジーや、お仕事小説なんて特に)

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小説家。青春小説やスポーツ小説をよく書きます。2015年松本清張賞・小学館文庫小説賞受賞。『タスキメシ』『拝啓、本が売れません』『風に恋う』『競歩王』など。詳しくは公式サイトへ▶http://nukaga-mio.work/

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