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小説 ふじはらの物語り Ⅰ 《侍従と女官》 42 原本

平侍従によれば、いまお上と尚侍がよく興じておられるお遊びは、洲浜台(すはまだい)とのことである。

それも、この度は内匠寮(たくみりょう)に特に作製をお命じになったところの、普通のものよりも数段“広々”としたものが用いられるようである。



お上の御(おん)前を平侍従が先導し、家春はお上の御後ろにつき従う。

これには勿論、諸々(もろもろ)の小役人があまりその姿形を周囲に印象づけることなく、お供をしている。

お上と侍従達は、梅壺御殿に入った。

そこでは、何人かの家春にとって見知りおきである命婦などの女官の姿が見えるほかに、初めて目にする花のような女どもが、お上のお越しを恭しくお迎えする様が彼の眦(まなじり)に映った。

彼女達はまさしく、“尚侍とその女房達にほかならない”と彼は思った。


お部屋には、お上お一人がお入りになり、清涼殿で侍従が取りしきるお上のお身回りのことは、主に命婦達が引き継いだ。



平侍従と家春は、広廂(ひろびさし)に控えた。



家春は、本人は知るまいが、この時目を輝かせていた。


そして、彼の目に特に三人の女性(じょせい)が留(と)められた。

彼女達の前には、大きな洲浜台が置かれていた。

そして、もう一つのものとそれらが円陣を組むように配置されていある。

“それにお上もお着き遊ばすのであろう”と、家春は思った。

案の定である。

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