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UX LIVE 2019 カンファレンス in ロンドンに行ってきました

NTTレゾナントテクノロジー アジャイルデザイン部UI/UXデザインチームの呉です。NTTレゾナントテクノロジーでは、メンバーそれぞれがスキルアップするために様々な取り組みを用意しています。今回、その内の「海外カンファレンス・ワークショップ派遣」制度を利用し、2019年11月11日から13日にロンドンで開催されたUX LIVE 2019(※以下、本イベント)に参加してきました。

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※企業スポンサーブースが設置され、講師、スポンサー企業、参加者が交流している様子。会場ではコーヒー、チョコレートなどが無償提供されておりフランクな雰囲気でした。

本イベントは日本国内ではあまり聞き慣れませんが、欧米ではそれなりの認知度があるイベントで、Google, British Telecom, Skyscanner, Netflix, Brighton大学といった世界的な企業や研究機関に在籍する現役デザイナー、リサーチャーが集まって最先端のUXデザイン・リサーチに関するワークショップやカンファレンスが実施されます。

ワークショップと講演

本イベントはワークショップDay、リサーチDay、デザインDayと1日ずつ、トータル3日間、毎日形式を変えて行われます。この3日間は形式は違えど、連日同時進行でワークショップやカンファレンスが開催されており、自分の興味関心に合わせて自由にホールを入退室することができます(※ただし、ワークショップは事前に登録が必要です)。
テーマは「オフボーディング」、「ダブル・ダイアモンド」、「インタラクティブAR」、「デザインシンキング」、「デザインオプス」、「アジャイルリサーチ」、「5Gデジタルトランスフォーメーション」、「UXリサーチマネジメント」、「ニーズ分析技術」など多彩な内容になっています。本エントリーでは、私が参加したワークショップについて紹介します。

Day 1: ワークショップ編「The end-to-end UX process for rapidly improving existing products(プロダクトの迅速な改善のためのUXプロセス)」

本ワークショップのスピーカーはロンドンに本社を置くリサーチ会社に在籍し、UXリサーチに関して15年以上のキャリアを持つUXシニアデザイナー(Chris Gibbins氏)。Gibbins氏はEurostarなどのグローバル企業において、様々なプロダクトを担当し、継続的なUX改善を指揮していました。本ワークショップではGibbins氏が長年蓄積してきたプロダクトの継続的なUX改善に関する知見を5つのUXプロセスに分けて体験する構成になっています。図にすると以下のようになります。

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今回のワークショップはおおむね5〜6人でチームを組み、ワークを進めます(※もちろん英語で!)。ただし、ワークショップに割り当てられた時間は4時間ということもあり、上の図のうち、プロセス⑤(リリースと検証)については今回のワークからは省略されていました。以下ではプロセス①から④の内容について簡単に紹介したいと思います。

プロセス①(チャンス創出):デプスインタビューで課題発見

「チャンス創出」はデプスインタビューを通して、プロダクトの課題を発見するプロセスです。まず、Gibbins氏から以下のステップを踏んで実施するように指示がありました。

ステップ1:
まず、チームで㋐調査対象とするモバイルサイトと、㋑メンバーそれぞれの役割(ユーザー、モデレーター、観察者)を決めます。今回はメンバーの一人が在籍しているアメリカの某航空会社のオンラインチケット販売サイト(以下、調査対象サイト)を調査対象としました。

ステップ2:
調査する前のイントロダクションを実施します。このステップでは、対象となるユーザーに調査の概要を説明するほか、調査に対する緊張を緩和したり、実際に航空券を買う前に考えていたこと(例えば行き先、値段、座席、時刻など)を思い出してもらいます。

ステップ3:
ユーザーに「感じたことを声に出しながら」調査対象サイトを操作してもらいます。モデレータ役と観察者役のメンバーはその様子を観察し、気になった点、いいと思った点、うまく行かなかった点を付箋にメモしていきます。また、ユーザに直接ヒアリングを行い、それもメモします。

ステップ4:
各メンバーがメモした付箋を並べてグルーピングし、クリティカルな課題を抽出します。

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※メンバーとディスカッションしながら、付箋をグルーピングしている様子。メンバーはそれぞれドイツ、イギリス、アメリカ、ベルギーなど多様な顔ぶれ。

プロセス①のポイント:デプスインタビューを実施することで、事前に想像もできないような「操作上のつまづきポイント」を発見することができます。また、「操作上のつまづきポイント」の背景にある気持ち(例:イライラ、怒りなど)や状況(例:急いで手配したい、など)を対話の中で把握することができます。また、複数人で気づいたことを記録し、それらを分析・整理した後に次プロセス以降で使用する課題を複数選定します。

プロセス②(アイディア展開):課題をHMWに転換して、クレイジーエイトでアイディアを発散させる

「アイディア展開」はある考えをベースにして、その考えを広げ、課題(※前プロセスで選定した課題)の解決につながるアイデアを出していくプロセスで、以下の3ステップで構成されています。

ステップ1:
「HMW (How might we)」(※2)という手法を用い、課題解決に向けて「どんなプロダクトを目指すべきか」「何をすべきなのか」について付箋に書いていきます。

ステップ2:
1人につき1つのHMW付箋を選んで、A4用紙を8つ折りにして一つ一つのコマに思いついたアイディアを絵にして埋めていきます。

ステップ3:
順番に自分で出したアイディアを(絵を見せながら)発表して、チーム内でディスカッションします。

プロセス②のポイント:「HMW」と「クレイジーエイト(※3)」をセットでプロダクト改善(課題解決)に使うのは初めての体験でしたが、「課題の定義 → 目指すべき姿の定義 → アイディア創出」という道筋を辿ることで論理的な飛躍のないアイディア出しをすることができました。

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※3つのHMWを選んでクレイジーエイトを行っている様子。作成には15分という時間制限があるので、迷わず描いていく必要があります。難しかった…。

プロセス③:優先順位決定 & プランニング

本プロセスは前のプロセスで出したアイディアを収束させ、意思決定する大事なプロセスです。「ポテンシャル・インパクト(プロダクトに与える影響度)」「成長性(プロダクトに対する成長寄与度)」「実行可能性(実行にかかる難易度・コスト)」の3つの観点でアイディアにスコアリングを行い、優先順位を決めて、実施するロードマップを作ります。

プロセス③のポイント:アイディアの優先順位付けは誰かの主観的な判断基準(好き・嫌いなど)ではなく、客観性のあるものにしなければなりません。時と場合によってその基準は変わりますが、本ワークでは前述の3つを基準にすることになりました。この基準に基づいて沢山あるアイディアの優先順位と実施スケジュールを決定します。このプロセスは優先順位の決定スピード向上と選定の公平性の観点で重要です。

プロセス④:仮説を作って検証する

リリースする予定のモックを作成し、チーム内で簡単にテストして、リリースの準備をします。また、アイディアがプロダクトにどんなポジティブな変化を与えるのか(例:チケット購入コンバージョン率向上など)についてチームで決定します。

今回のワークショップはここで終了となりました。最後にGibbins氏から「今回の改善プロセス(UXプロセス)は一度の実施で終わるわけではなく、何回も繰り返していかなければならないものである」とコメントがありました。

まとめ

グローバル企業で行われているプロダクト改善(UX)プロセスを実際に手を動かして体験できたことは大変貴重な経験でした。特に「HMW」と「3つの観点によるアイディア評価」手法はプロダクト改善や新規サービス開発など、色々なシーンで活用できるかと思います。また、ワークショップを一緒に行ったチームメンバーはデザインシンキングに関する基本知識とマインドセットを持っており、その論理的思考、決断スピードの速さに驚かされました。

さいごに

次回は2日目のリサーチDayで参考になった講演について記事にしたいと思います。NTTレゾナントテクノロジーでは、チームメンバーのキャリア成長に力を入れています。それぞれカンファレンスやワークショップで習得した知識やスキルを業務上で活用しています。今回の記事に興味やコメントがあれば、公式Twitterからぜひ気軽にコンタクトください。

参考サイト

(※1)UX LIVE 2019
https://uxliveconference.com/ux-live-conference-schedule/

(※2)Google : The “How Might We” Note Taking Method
https://designsprintkit.withgoogle.com/methodology/phase1-understand/how-might-we

(※3)Google : Crazy 8's
https://designsprintkit.withgoogle.com/methodology/phase3-sketch/crazy-eights

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