見出し画像

NewsPicks GINZAオープンの仕掛人が見据える「売場」ビジョン

東急不動産・東急ハンズ 眞明大介

画像1

2020年7月1日、日本中のメディアが注目する新スポットが銀座にオープンした。NewsPicks GINZA、それはNewSchool・NewStore・NewCafeから構成される、学び・モノ・食の3要素を兼ね備えた「リアルな集いの場」だ。フロントマンは佐々木紀彦氏、編集者でありジャーナリストであり経営者という誰もがご存知のオピニオンリーダーである。

そしてその立ち上げには、欠かせなかったもう1人の存在がいる。それが眞明大介である。二足の草鞋を履く前例が無い中で東急不動産・東急ハンズの2社での兼務を自ら希望した特別、否、独特な存在だ。

佐々木氏とNewsPicks GINZAの構想を温めてきた相方とも言うべき眞明。その立ち上げの背景、そこに至るプロセスはどのようなものであったのか。話を聞く中で垣間見えた彼の仕事観や人生観と共にその道筋を追ってみた。

画像3

■入社3日でオフィスビル3棟の経営者

眞明の歴史を紐解くと就職活動時から一貫して「安定」を追求している。しかしその切り口はユニークだ。

「人に与えられる安定は本物では無いと感じていました。だから苦労してでも自ら安定を創れる人材になれる会社を探しました。入社後は流石にここまでとは…と思いましたが。2〜3日だけ研修しすぐに担当ビル3棟の挨拶回り、今日から君はこれらのビルの経営者だ、と。電話が鳴ればとにかく出る。どうすれば良いか聞くと右も左も分からないのに自分の意見を求められる。そんな環境でした」

今でこそ笑い話にする眞明だが、社会人のスタート地点は凄まじかったようだ。彼のキャリアの起点(株)ザイマックスはリクルートから分社独立した企業。その主体性を伸ばす風土が眞明に「自ら考え行動する力」「意見を受け入れる柔軟性」を身に付けさせた。

「シビアですが常に愛情は感じていました。全員が一挙一動を見守ってくれる。考えさせてくれる。自分で徹底的に考えた後だともう絞り切った後なのでアドバイスも聞き入れますよね。納得しかないです」

■自分らしさに一歩ずつ近付く

安定志向の強さ故に主体的な働き方を追求した眞明。厳しくも温かい環境の中で新規営業から既存顧客への深耕営業、新卒採用や社外コンサルまで幅広く活躍した。まさに人も羨むようなエリートコース。だがそんな彼にも悩んだ日々があったと言う。

「それまで自分を成長させてきた自責の考えに囚われ過ぎて自らを追い詰めました。その結果、会社を3ヶ月ほど休むことになったんです」

自責思考が生んだ弊害。身に付ければこそ成長に繋がるビジネスの本質が彼を苦しめた。だがこれを転機に変えた結果が今の眞明を生み出す。この時に感じたのは家族や周囲のありがたさだと言う。筆者の意見で恐縮だが「足るを知る」に至ったことが今の眞明の「主体的であり自然体」という生き方を構築したのであろう。

そんな苦しい時期を越え新たな自分らしさと共に仕事に邁進し始めた眞明。そんな彼に思わぬ転職の話が舞い込む。何の気なしに受けてみると本人の意図とは裏腹にトントン拍子で話が進む。エージェントからも「本気で考えてくれ」と矢の催促。そして驚異的な倍率の中、東急不動産との最終面接に至る。

「前の会社を辞めるつもりはありませんでした。評価されている実感もありましたし。しかも、自分は商業をしたいのに、総合職での採用なので様々な部署に送ると言われ、それなら辞退させて下さいと伝えました」

いかにも眞明らしいエピソードである。自然体と聞くと流れに身を任せるような印象だが主体性という軸があるのだ。そんな彼だからこそ面接官が商業施設運営部担当部長だったという偶然にも似た必然に遭遇する。商業担当で良いという承認と眞明ならではの安定欲求が相まって、あれよあれよという間に転職は決定。周囲には惜しまれたが応援してくれた。今でもこの頃の仲間との関わりは絶やさない。

■NewsPicks GINZAへの道

新天地で相対した最初の大仕事が東急プラザ銀座だった。当時はまだ開業して1年、近隣に乱立する競合との激戦で課題を抱えていた。歴史と伝統があり生え抜きが活躍する環境下で眞明はこれまでには無い新たな角度から難局にメスを入れていく。

「最初に取り組んだのは東急プラザ銀座の運営会社の方々との関係性構築です。課題があるから来ました、ではあちらから見たら面白く無いですよね。だからシフトを聞かれた時に、シフトは要らない毎日働く、と伝え実作業から全て一緒にやり信頼関係を築きました」

何より人を重視する眞明の真骨頂だ。まずは働く仲間との人間関係を最優先した。チームがまとまり体制が整った後には高級ブランドへの看板貸しなど改善への具体策を矢継ぎ早に実行。その中の1つが東急ハンズ区画のバリューアップだ。

「東急プラザのことを考えるとハンズを1つ高い次元に導く必要がありました。しかし出所が同じだけに社内の反対意見も強い。調整に根気強く取り組みプラザ・ハンズ双方にメリットある着地を探しました」

そこで白羽の矢が立った相手が佐々木氏である。最初は素っ気ないとも思ったが、次々と企画を考える姿勢に眞明は佐々木氏の本気を感じた。まだ東急ハンズがあった頃から別フロアでトライアルを重ね開店1年前にはNewsPicks GINZAのゴールを描き切ったと言う。NewStoreに何故「東急ハンズ」と書かれているかこれでお分かり頂けるであろう。東急ハンズを残したいという想い、モノの新しい販売空間を創りたいという想い、両者を汲み取った結果が今のNewsPicks GINZAを生み出したのだ。

画像3

■「リアル店舗」というメディア

見事に立ち上がったNewsPicks GINZAだが、まだ道半ばですら無いと言う。

「コロナにより望まぬ部分が多々ある中でオープンしたこともあり達成したという認識はありません。今からは初期イメージに捉われず挑戦します。スクールができないのであればスペースを教室以外の用途に使っても良い。今からやることの方が多いです」

そんな彼にはデベロッパーの在り方を変革したいという強い想いがある。目指すのはオン・オフラインを問わない「場」で産み出す最高のライフスタイル&体験の顧客提供だ。彼にとってNewsPicks GINZAはフィールドの1つ、かつ初手ということであろう。

「リアルな店舗をメディア化しオン・オフラインの境目の無い商業施設の新モデルを創ります。例えばコロナで止まったハンズ新宿店の靴磨きなどのワークショップをzoomでやるなど。そうなると現場の協力が必要です。だから理論だけで動かそうとするのではなく全員が自然な形で取り組めるよう促します」

自他共に認める社内調整の達人、眞明らしい言葉である。自らの目標達成=WINに主体的であるが故に相手のWINを考え地道な利他の行動で信用残高を積み上げる。その絶妙な匙加減が強みであり、調整上手は結果論なのだ。彼が取材中に最も口にした言葉は「安定」であったが、本当はWIN-WINを追っている証拠の一言を最後に引き出せた。

「安定と楽しいことなら楽しいこと」

合点がいった。楽しさこそが彼のWINでそこに本気だから相手のWINを大切にできる。そんなWIN-WINの体現者である眞明が今から挑むのは格式高い大企業の文化だ。しかし彼が誰かと争う姿は見たくない。願わくば調和を重じつつイノベーターとして大活躍する姿を期待したい。ちなみにインタビュー中、本人はWIN-WINという言葉は一切発していない。無意識でやっているからこそ自然体。それが眞明の最大の魅力と言えよう。

画像4

文=菊谷 邦紘(NewsPicks NewSchool コンテンツプロデュース)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?