自己紹介と作曲家としての3つのキーワード 【さっきょく塾: 11月】

自己紹介

みなさまこんにちは。すっかり出遅れてしまいました。
私は東京→アムステルダム→デン・ハーグ→ソロ→東京とふらふらしているうちに、今年36歳を迎えました。

参加のきっかけは2つ。1つめは、他の作曲家の皆さんがどんなことを考えているのか知りたかったから。2つめは、学生の時にちゃらんぽらんにやり過ごしたコンテンポラリーミュージックについて、もう一度学び直したかったからです。勉強したいと思った時が学びどき。

わたなべさんが女性作曲家フォーラムの記事で書いてくださった私の紹介文に、「直感」で作っているという文がありましたが、まさにその通りの作曲人生を歩んできました。理知的の対局、動物的にクンクン嗅ぎまわって、より心地よいものを、より気持ちがよいものを選ぶことによって作曲しています。レクチャーやレッスンで、これを言うと叱られる悪魔のワード「intuition」。もう最近はintuition上等と開き直ると同時に、自分のintuitionがどこからやってきたのか、そのバックグラウンドを解明してみようとし始めたところです。

3つのキーワード

1 いとをかし
作曲というと、私の場合は音楽以外の「何か」を音楽に変換することが多いです。その「何か」はその時々に好きなものやグッとくるものを選んでいるので、清少納言の言う「いとをかし」と大差ない気がします。しみじみと花鳥風月を愛でる感じ。今まで曲にしたテーマをいくつか挙げると、ジャワの雨季と丁子タバコ、ガラパゴス諸島、七福神シリーズ(恵比寿、布袋、大黒まで完成)、時間、繭、天気雨などなど様々です。最近はご当地ネタの委嘱が続き、香川の讃岐うどん+たぬき、広島の牡蠣を取り上げています。
作曲しているときは精神的にも肉体的にも泣くほど苦しいので、少しでも愛着の感じられるテーマか、今こそ形にしたいと強く思うテーマを選びます。

2 漠然とアジア
①ガムラン
中部ジャワ・スラカルタ様式のガムランを2002年から続けています。最初は興味本位で大学の授業を取り、オランダでは作曲の孤独を合奏アクティビティが癒してくれ、インドネシアでは1年間作曲せずガムランだけをやっていました。ガムランの音楽理論は意識的にも無意識的にも自作品の中に浸潤しているのを感じます。
打楽器奏者の有賀誠門先生が提唱されているUp感覚〜西洋音楽の根源的なノリ〜の真反対の感覚が、ガムランにはあります。Down感覚とでもいいましょうか。全ての音は空から様々なタイミングで降ってきて、着地するときはほぼ同時に同じ音に降りる。着地点にはしっかりとした重みがあるという感覚です。話すと長くなるので割愛しますが、この感覚が私にとってとてもしっくりくるので、作曲する時もDown感覚で書いていると思います。
*Up感覚について、有賀先生のすごいサイトができていました。もっと知りたい方はこちらをどうぞ。http://upward-projects.com/

②能
能は青木涼子さんと仕事をさせてもらったことがきっかけで勉強し、毎回新しい発見があります。能にもDown感覚を感じます。リズムが伸び縮みするところや、謡のテキストに言葉遊びがたくさん盛り込まれていること、8拍を基本とするリズム構造もガムランと似ています。
ガムランも能も、どちらも自己が滅される感がたまらなく良いです。無になる感じが。

3 2LDK
こういうことを書いてお金をちゃんともらえる仕事がこなくなったら嫌なのでこの場所以外では内緒にしてほしいのですが、オペラとかシンフォニーとかに興味がわかないです。仰々しいものや、聞き手を説得してくる感じのある音楽が少々苦手です。単なる個人の好き嫌いを書いてしまいすみません。しかもネガティブなことばっかり。背伸びせず身の丈に合った感覚を大事にしていきたいという意味を込めて、自宅の間取り2LDKを3つめのキーワードにしました。


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