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支援付き住宅の全国展開 NPO法人岡山きずなの状況

「コロナ緊急|家や仕事を失う人をひとりにしない支援を」から始まり、その後もコロナ緊急事業から生活困窮者全般への支援と発展していった「支援付き住宅の全国展開」。各地で担っていくパートナー団体の一つであり、岡山県を中心に活動するNPO法人岡山きずなの新名さんにお話しをお伺いしました。

ーそれではまず岡山きずながどのような支援事業をしていらっしゃるか教えていただけますか?


新名:岡山きずなは2002年にホームレス支援の任意団体として立ち上がり、2011年にNPO法人化しました。今は生活困窮者の方を中心に幅広くホームレス状態の方、また住む家があっても家に居場所がない方などいろんな方々に支援を届ける活動をしています。
支援付き住宅につきましては一昨年クラウドファンディングのご支援をいただいて、13あるパートナー団体のひとつとして活動を始めて1年半近くになります。きずなでは20部屋運営をしておりまして、現在16部屋が稼働しています。


ーこれまでに何人の方が支援付き住宅を活用されましたか?


新名:今までで対象者の方23名が利用されていて、そのうち7名の方が退所され残り16名の方は現在もそのまま利用していただいています。


ーどのような状況の方が支援付き住宅を利用されてきたのでしょうか?


新名:平均年齢でいうと60歳を超えるのでどちらかというと高齢期の方が多いです。しかしその一方で30代後半の方であったり、一時期は20代の方もいらっしゃいました。若年層と高年齢層に分かれていて中年層の利用者さんはあまりいらっしゃいません。高年齢層では後期高齢者の方で介護が必要あるような方もいらっしゃいますし、一方でちょうど60歳前後ぐらいで家を失った方も多くみられます。
皆さん家を失う状況としては、家賃の不払いで強制執行を受けてしまった方もいらっしゃいますし、契約がうまくいかずそのまま家賃不払いになってしまって家を失いホームレス状態になる方など様々です。1人として同じ状況の方はいらっしゃらないのですが、住まいの維持を安定・継続させることが難しい方というのが共通項として挙げられると思います。


ー若年層の方に限ってですとどういった状況の方が利用されるのでしょうか?


新名:若年層の方に関しては、例えば親御さんとの関係が悪化して家を出なければならなくなり、生活保護を受けるという前提で急遽こちらに相談に来られた方などいらっしゃいましたし、他には精神障害のある方で住まいの確保・維持が難しくなり、入院はしたけれども今度は退院後に帰る家がない、といった事情の方がいらっしゃいました。


ー実際に活動を続けていく中で何か気がついたことや、何か改めてこういうものが必要だなと思った点などありますか?


新名:日本の場合住まいそのものの権利というものが保障されていないために住民票を置く場所がないだとか、電話を借りるにも住所がないというような状況が発生してしまうので、やはり住まいを一番最低限の権利として確保していくということが何よりも必要だと思います。

夜回りの様子


ーパートナー団体としてクラウドファンディングを受け支援付き住宅事業をしていて何か印象に残ったことはありますか?


新名:利用者の方の中の一人に家賃不払いから強制執行まで持ち込まれて、完全に家を追い出されてしまい相談に来られた方がいらっしゃったんです。福祉事務所の方も過去にあまり持ったことがないケースだったらしいのですが、そういった方々が家を借りるにはどうしたらいいのかとなったときに例えば今私達がやっているような日住(日常生活支援住居施設)のスタイルの方が、福祉事務所にとってもご本人にとってもとりあえず住む場所が確保できて安心できるということで相談に来られたのが印象深かったです。このような形でお家を追い出される方が現実複数人どころか潜在的にもっともっと沢山いるのだろうと痛感しました。


ー様々な状況の方が相談に来られ支援付き住宅を利用されていますが、コロナ禍の影響で家を失ったり困窮する方が多かったのでしょうか?


新名:コロナに関しては正直どうでしょう。今後もコロナの感染者の数が上がったり下がったりすることは目に見えてるので直接的なコロナの影響というよりは、いざ自立するときに就労先が確保しづらい、再起を図る方々に対する支援が少ないなど、むしろコロナ前からずっと水面下にあった問題がコロナが引き金になって表面化しているだけのような印象を受けます。そういった意味でいうとニュースで流れてくるような景気のよさみたいなものは住まいに困る人たちと向き合っている私達としてはコロナ以前からあまり感じてなかったですね。

ーではコロナ以前と以後を比べて何か変わったことはありますか?


新名:人と人との接する距離感というものが物理的に変わったと感じます。マスクをしている生活に自分含め皆さんが馴染んだ適応能力は驚異的なんですが、それでも私自身ソーシャルワーカーとして支援をやっていく中でマスクを着けてソーシャルディスタンスを厳守した上でないと相手と関わることができないということは、やはり以前と違って距離感を感じます。
岡山きずなでは困ってる人たちに対して食堂という形で炊き出しの支援をやっているのですが、現状皆さんが一同に会して一緒にご飯を食べるということは難しく、そういう場ひとつとっても接点をより濃く持つために、繋がり合うためにやっている支援が十分にできないのがコロナ禍の影響としてもっとも大きいことだと思います。こういう状況が早く打破できたらいいなとよく感じているところです。


ー最近も円安や物価高など叫ばれていますが、日本全体で見て生活が苦しくなっているような実感もありますか?


新名:そうですね。コロナより円安や物価高の方が利用者の方の生活に直接影響していると思います。それこそきずなの運営費も上がっていて大変ですし、利用者の方にとっても同じで電気代・ガス代の高騰によって生活費が上がってしまっても生活保護費を増やす手段がないのでかなりの痛手だと思います。
この円安やコロナ不況による世界的な経済の悪化の影響は末端にまで大きく出てきてるんじゃないかなと思っています。

吉井中での授業風景


ー最後に寄付者に向けて何かメッセージなどありましたらお願いします。


新名:先ほどもお話したことですけど、住まいが権利となってない我が国において住まいの位置づけの大切さというものを皆さんにもう一度改めて感じてもらう良い機会だと感じています。今回なぜクラウドファンディングで住まいの提供をやらなきゃいけないのかと思われた方も最初はいらっしゃったと思うんですね。
でもそれは民間が用意しないと公が準備をしてくれるものではないからなんです。いろんな方々の熱意でクラウドファンディングが成り立ったことで、少なくとも全国に何百という住まいが確保されるようになったっていうことは非常に意義あることだと思います。これをきっかけに今度は公にもっと伝えていくような仕組み作りをこれからクラウドファンディングに関わっていただいた方々と一緒にできたらいいなと思っています。引き続き抱樸をはじめ本プロジェクトへのお力添えをお願い申し上げます。


ー本日はお忙しい中、貴重なお話どうもありがとうございました。


いただきましたサポートはNPO法人抱樸の活動資金にさせていただきます。